東奔西走キャッシュレス 第64回 NFCの聖地……そのわりに不便なニースとモナコ
本連載ではたびたび世界の決済事情を探っていますが、今回はフランス・ニースとモナコ公国の決済事情をお届けします。決済事情は国だけでなく州などの行政区が変わるだけで大きく異なるのが常なので、連載第35回で紹介したフランス・パリとはまた一味違う状況になっています。
あと一歩のタッチ決済
ニースとモナコは地中海に面したエリアにあり、今回は雨続きの旅程でしたが、基本的には過ごしやすい土地のようです。このニースとモナコが“NFCの聖地”だというのは、NFCの業界団体であるNFC Forum発祥の地で、最初期の交通機関におけるタッチ決済のテストが行われるなど、今のクレジットカードのタッチ決済の普及の端緒になったエリアだからです。
そんなニースに降り立って最初の洗礼が、コート・ダジュール空港前のトラムです。この路線自体はまだできて間もないらしいのですが、乗車方法は「券売機で購入したチケット」のみです。空港に降りて颯爽とスマホをタッチして乗り込む、ということはできませんでした。
しかたないので券売機でチケットを購入しますが、10ユーロという高いチケット以外は1日券などになってしまいます。なぜだろうと考えたのですが、どうやら「空港乗り入れ」に追加料金が発生するようです。
いずれにせよ仕方がないのでこれを購入。とりあえず目的地による料金差はない固定料金制のようです。券売機ではさすがにタッチ決済によって購入が可能でした。購入した紙チケットを使った乗車方法は、その使い捨てのカードを車内のリーダーにタッチする形。
つまりカード内にNFCが組み込まれているわけで、あと一歩がなぜ……という気はします。連載第23回で紹介したオランダ・アムステルダムでも同様の紙カードのNFCも利用されていましたが、そこではタッチ決済にも対応していました。
ニース市内はトラムが多く走っていて、移動に困ることはなさそうです。シェアサイクルも街中にあります。そんなに広いわけではないので、徒歩でも十分回れそう。とはいえ、トラムが楽なので1日券などを利用するのがよさそうです。ただ、今回は「2回券」を購入したのですが、カード発行料が追加されてしまいました。つまりこの場合は使い捨てではない、チャージ可能なカードを購入することになるようです。
券売機やスマートフォンアプリを使うことで、今後トラムやバスのチケットを購入して、そのチケットをカードにダウンロードし、リーダーにタッチして乗車できる、ということのようですが……。
さて、難関は一般の鉄道です。ニースにはモナコを含めて周辺へ移動する長距離列車を運行するSNCF(フランス国鉄)が走っています。これを使うにはやはり券売機に行く必要があります。
ニース駅はそれほど大きくも小さくもない駅ですが、券売機は2つ。長蛇の列でしたが並ぶしかありません。並んでいる間にSNCFアプリをダウンロードしてみましたが、アカウント作成時に先に進めず、順番が来たので断念。
券売機は、ドイツなどであるような一般的なタイプです。画面をタッチして目的地を検索し、何時の列車に乗るかを選び……と長々と続けて支払いを行います。ここはタッチ決済対応。
出てきたチケットは懐かしい大型のチケットでしたが、いずれにしてもバーコードを自動改札機にかざして入場します。30分以上遅れて満員電車となった列車でモナコに向かいました。
モナコの問題はフランス国鉄
モナコは崖を切り拓いた街です。モンテカルロカジノで有名な土地ですが、アップダウンが激しいため、小さいながらも徒歩だけの移動はちょっと厳しそう。メインの移動手段となるのはバスです。
このバス自体はタッチ決済対応だったため、楽々乗車。乗車時のみのタッチでしたので、固定料金1.5ユーロ。終点まで乗っても変わらないようです。バスのラッピング広告で「家族6人まで1枚のカードで」とあったので、家族登録などをしてカードの利用が可能のようです。乗車の様子を見ていると、同じカードを複数回タッチしている家族連れがいたので、人数分をタッチして乗車するという使い方もできるようです。
バスは安く、比較的頻繁に来るようです。ただ、Googleマップが微妙に適切なルートを表示してくれないという謎の問題があって、やや経路探索で悩みました。街中が開発中で、その辺りも影響しているのかもしれません。少し東南アジアの印象があるのは、こうした街中の開発が影響しているのかもしれません。
いずれにしても、移動に関してモナコは問題なし……と思っていたところ、最後にやってきたのがSNCFでした。
SNCFにはニースに戻るために乗るのですが、まずはプラットフォームにある1台だけの券売機が故障中。仕方がないのでプラットフォームの上にある2台の券売機に移動して並びます。列が進むのに時間がかかる……と思ったのですが、単純に操作性が悪いようです。
タッチパネル非対応なので大きなダイヤルを回してカーソルを移動し、中央のボタンを押し込むと選択。2連続で押し込むと選択して次の項目にいく……というインタフェースで、目的地を選ぶのにも一苦労です。
しかも、タッチ決済対応と思いきや、リーダーが動作していないのか反応せず。カードを挿入する必要がありました。挿入したカードも反応が悪く数秒待つという始末。急いだおかげで、プラットフォームに戻ってすぐにやってきた電車に乗り込めましたが、平気で遅れる欧州鉄道では、1本を逃すと致命的なことになりかねません。
ニースに戻ると、往路と同様に自動改札機から出ます。ただし、ここで特に切符を読み込ませる必要などはありません。モナコ側は改札のない信用乗車なので、タッチ決済のように入場時と退場時にタッチが必要な仕組みを導入するには、乗り入れる他国の事情も考慮する必要があります。
日本の場合はこれが多数の民間鉄道事業者との相互直通ですが、欧州の場合は国をまたいだ場合の相互直通が問題になるわけです。
いずれにしても、以前ご紹介したパリに続いて、ニースでも公共交通機関を利用したうえでいうと、フランスの公共交通機関におけるタッチ決済は遅れ気味です。アプリや券売機の使い方も難解なため、素直にタッチ決済に対応してくれるのが海外からの旅行者にとっては便利です。ただし、日本のように国外からの旅行者のためにタッチ決済対応を推進するという考え方は、恐らくフランスにはないでしょう。フランス国民がいかにタッチ決済での乗車にメリットを感じるか、それが普及の鍵となりそうです。
なお、ニースもモナコも街中の買い物などではタッチ決済が使えないところはありませんでした。
あと一歩のタッチ決済
ニースとモナコは地中海に面したエリアにあり、今回は雨続きの旅程でしたが、基本的には過ごしやすい土地のようです。このニースとモナコが“NFCの聖地”だというのは、NFCの業界団体であるNFC Forum発祥の地で、最初期の交通機関におけるタッチ決済のテストが行われるなど、今のクレジットカードのタッチ決済の普及の端緒になったエリアだからです。
そんなニースに降り立って最初の洗礼が、コート・ダジュール空港前のトラムです。この路線自体はまだできて間もないらしいのですが、乗車方法は「券売機で購入したチケット」のみです。空港に降りて颯爽とスマホをタッチして乗り込む、ということはできませんでした。
しかたないので券売機でチケットを購入しますが、10ユーロという高いチケット以外は1日券などになってしまいます。なぜだろうと考えたのですが、どうやら「空港乗り入れ」に追加料金が発生するようです。
いずれにせよ仕方がないのでこれを購入。とりあえず目的地による料金差はない固定料金制のようです。券売機ではさすがにタッチ決済によって購入が可能でした。購入した紙チケットを使った乗車方法は、その使い捨てのカードを車内のリーダーにタッチする形。
つまりカード内にNFCが組み込まれているわけで、あと一歩がなぜ……という気はします。連載第23回で紹介したオランダ・アムステルダムでも同様の紙カードのNFCも利用されていましたが、そこではタッチ決済にも対応していました。
ニース市内はトラムが多く走っていて、移動に困ることはなさそうです。シェアサイクルも街中にあります。そんなに広いわけではないので、徒歩でも十分回れそう。とはいえ、トラムが楽なので1日券などを利用するのがよさそうです。ただ、今回は「2回券」を購入したのですが、カード発行料が追加されてしまいました。つまりこの場合は使い捨てではない、チャージ可能なカードを購入することになるようです。
券売機やスマートフォンアプリを使うことで、今後トラムやバスのチケットを購入して、そのチケットをカードにダウンロードし、リーダーにタッチして乗車できる、ということのようですが……。
さて、難関は一般の鉄道です。ニースにはモナコを含めて周辺へ移動する長距離列車を運行するSNCF(フランス国鉄)が走っています。これを使うにはやはり券売機に行く必要があります。
ニース駅はそれほど大きくも小さくもない駅ですが、券売機は2つ。長蛇の列でしたが並ぶしかありません。並んでいる間にSNCFアプリをダウンロードしてみましたが、アカウント作成時に先に進めず、順番が来たので断念。
券売機は、ドイツなどであるような一般的なタイプです。画面をタッチして目的地を検索し、何時の列車に乗るかを選び……と長々と続けて支払いを行います。ここはタッチ決済対応。
出てきたチケットは懐かしい大型のチケットでしたが、いずれにしてもバーコードを自動改札機にかざして入場します。30分以上遅れて満員電車となった列車でモナコに向かいました。
モナコの問題はフランス国鉄
モナコは崖を切り拓いた街です。モンテカルロカジノで有名な土地ですが、アップダウンが激しいため、小さいながらも徒歩だけの移動はちょっと厳しそう。メインの移動手段となるのはバスです。
このバス自体はタッチ決済対応だったため、楽々乗車。乗車時のみのタッチでしたので、固定料金1.5ユーロ。終点まで乗っても変わらないようです。バスのラッピング広告で「家族6人まで1枚のカードで」とあったので、家族登録などをしてカードの利用が可能のようです。乗車の様子を見ていると、同じカードを複数回タッチしている家族連れがいたので、人数分をタッチして乗車するという使い方もできるようです。
バスは安く、比較的頻繁に来るようです。ただ、Googleマップが微妙に適切なルートを表示してくれないという謎の問題があって、やや経路探索で悩みました。街中が開発中で、その辺りも影響しているのかもしれません。少し東南アジアの印象があるのは、こうした街中の開発が影響しているのかもしれません。
いずれにしても、移動に関してモナコは問題なし……と思っていたところ、最後にやってきたのがSNCFでした。
SNCFにはニースに戻るために乗るのですが、まずはプラットフォームにある1台だけの券売機が故障中。仕方がないのでプラットフォームの上にある2台の券売機に移動して並びます。列が進むのに時間がかかる……と思ったのですが、単純に操作性が悪いようです。
タッチパネル非対応なので大きなダイヤルを回してカーソルを移動し、中央のボタンを押し込むと選択。2連続で押し込むと選択して次の項目にいく……というインタフェースで、目的地を選ぶのにも一苦労です。
しかも、タッチ決済対応と思いきや、リーダーが動作していないのか反応せず。カードを挿入する必要がありました。挿入したカードも反応が悪く数秒待つという始末。急いだおかげで、プラットフォームに戻ってすぐにやってきた電車に乗り込めましたが、平気で遅れる欧州鉄道では、1本を逃すと致命的なことになりかねません。
ニースに戻ると、往路と同様に自動改札機から出ます。ただし、ここで特に切符を読み込ませる必要などはありません。モナコ側は改札のない信用乗車なので、タッチ決済のように入場時と退場時にタッチが必要な仕組みを導入するには、乗り入れる他国の事情も考慮する必要があります。
日本の場合はこれが多数の民間鉄道事業者との相互直通ですが、欧州の場合は国をまたいだ場合の相互直通が問題になるわけです。
いずれにしても、以前ご紹介したパリに続いて、ニースでも公共交通機関を利用したうえでいうと、フランスの公共交通機関におけるタッチ決済は遅れ気味です。アプリや券売機の使い方も難解なため、素直にタッチ決済に対応してくれるのが海外からの旅行者にとっては便利です。ただし、日本のように国外からの旅行者のためにタッチ決済対応を推進するという考え方は、恐らくフランスにはないでしょう。フランス国民がいかにタッチ決済での乗車にメリットを感じるか、それが普及の鍵となりそうです。
なお、ニースもモナコも街中の買い物などではタッチ決済が使えないところはありませんでした。
10/13 19:03
マイナビニュース