なぜ部下は、すぐにあなたを頼ってしまうのか? 指示待ち型の部下を自ら動かすための「11の戦略」

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 DXの導入により、各企業で仕事の内容や進め方が大きく変化している。従業員のリスキリングやITエンジニアの採用、IT企業との協力に多大な資金とエネルギーが費やされている。だが一方で、肝心のチームマネジメントが従来の“日本的な管理方法”のままであるため、企業や組織、そして働く人がDXの恩恵を享受するに至っていない――。本連載では『DX時代の部下マネジメント』(ロッシェル・カップ著/経団連出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。変革の時代のリーダーシップのあり方とは? そしてチームの究極の姿である「自ら動く自己管理型チーム」を創出するには? GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)など世界一流の企業で採用されているマネジメント法から、DX時代に合った具体的な手法を紹介する。

 第2回は、「チームマネジメント」と「日々の業務遂行」が円滑に行われる究極の姿「自己管理型チーム」の創出へ向けて、行うべき施策を説く。

<連載ラインアップ>
第1回 スティーブ・ジョブズの言葉に学ぶ 部下の士気を上げるには、なぜ“ムチ”より“アメ”がはるかに有効なのか?
■第2回 なぜ部下は、すぐにあなたを頼ってしまうのか? 指示待ち型の部下を自ら動かすための「11の戦略」(本稿)
第3回 なぜアメリカ人は、大げさな言葉で相手をほめるのか? 部下の心に響く「ポジティブ・フィードバック」とは
■第4回 グーグルでも実証 「心理的安全性」を高め、チームのハイパフォーマンスを生み出すための舞台設定とは?(11月22日公開)
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部下の自信を高めることが重要

DX時代の部下マネジメント』(経団連出版)

 私がクライアントと仕事をしていて頻繁に観察する問題は、日本人の従業員の中には、仕事を任せられたり、自己管理型チームで働いたりする準備ができていない人がいるということです。その理由は、彼らはこれまでのキャリアにおいて、常に上司の指示のもとで働いてきたからです。そのため、自分の判断で行動するのではなく、指示や命令を待つ傾向があるのです。

 このような背景を持つ部下がいる場合、自信を持たせることに時間をかける必要があるかもしれません。

 あなたがマネージャーで、部下に仕事を任せたいとします。しかし、その部下は以前、マイクロマネージャー的な上司のもとで働いていました。その部下は自信がなく、仕事を任せてもあなたに質問ばかりして、あなたに決めてもらいたがります。

 ここでは、部下が任せられた仕事を自分でこなすことに慣れるための戦略をいくつか紹介します。

[1] 信頼関係の構築

 部下が安心し、サポートされていると感じられるような信頼関係を築きましょう。よい行動へのポジティブなフィードバックや部下の長所を認めることで、部下の判断力と能力を信頼していることを示します。

[2] 段階的な権限委譲

 リスクの少ない小さな仕事、あるいは大きな仕事の一部だけを任せることからはじめましょう。そうすることで、徐々に自信をつけさせることができます。彼らが能力を発揮するにつれて、任せる仕事の複雑さや責任を徐々に増やしていけます。

[3] 明確な期待

 望まれている結果、期限、具体的なガイドラインなど、タスクに関するあなたの期待を明確に伝えましょう。仕事を理解させるだけでなく、その達成方法を決める自己決定権があることも明確にします。

[4] リソースとサポートの提供

 タスクを完了するために必要なリソースや情報をすべて利用できるようにしましょう。指導を受けることができることを伝えますが、助けを求める前に、まず自分で解決策を考え出すよう促します。

[5] 安心感を与える

 あなたが部下をサポートしていることを伝えましょう。特に日本の組織では、うまくいかなかったときに自分が責められることを恐れて、全責任を負うことや決断を下すことをためらう部下が少なくありません。このような恐怖心は組織にとって非常に不都合なものであり、排除する必要があります。

 部下には、すべてを完璧にこなすことを期待しているわけではないこと、問題があっても責められたり罰せられたりすることはないこと、そしてあなたは何があってもサポートし、バックアップする存在であることを知らせ、安心させましょう。

[6] 意思決定の奨励

 部下が質問をしてきたら、直接的に答えるのではなく、部下が自主的に考えるように導きます。「最善の方法は何だと思いますか?」「あなたならこの状況にどう対処するでしょうか?」といった質問をしてみましょう。

[7] チ ェ ッ ク を 控 え る

 多くの日本人マネージャーはマイクロマネジメントの傾向があり、各段階で状況を確認したがり、頻繁に報告・連絡・相談を要求します。この習慣から抜け出し、部下が自分で責任を持って仕事をチェックできるようにするのがベストです。

 部下が「チェックしてほしい」と言ってきたら、「自分でチェックしてください。私がいなかったら、どうしますか? 自分で確認するでしょう? まずは自分でやってみて、その結果を私に教えてください」と答えましょう。こうすることで、なんでもすぐにあなたに頼るのではなく、自分で考える習慣を身につけさせることができます。

[8] フィードバックと振り返り

 良かった点と改善点の両方に焦点を当てながら、パフォーマンスについて建設的なフィードバックを与えます。意思決定のプロセスを振り返り、成功と失敗の両方から学ぶよう促します。

[9] 研修と能力開発

 必要であれば、意思決定、問題解決、その他の関連スキルに焦点を当てた研修やワークショップを実施します。これにより、自信と能力を高めることができます。

[10] 忍耐と理解

 自信を持つということはひとつのプロセスです。部下が適応するには時間がかかることを理解しましょう。部下が自立するまでの間は、忍耐強くサポートしましょう。

[11] 成功を祝う

 どんなに小さなことでも、部下の成果を認め、ポジティブ・フィードバックをしましょう。そうすることで、前向きな行動が強化され、自信が生まれます。部下が自分の役割に自信と能力を感じられるようにすることが狙いであり、それが長期的には部下と組織の両方に利益をもたらすことを忘れないでください。

日本にまん延する「プレイングマネージャー」

 マネージャーの役割は、チームメンバーの役割とは完全に区別されたものであることが理想的です。マネージャーの仕事をこなすには、多くの時間と労力が必要になります。

 繰り返し述べているように、リーダーがチームの働く環境を整え、最適なパフォーマンスを発揮できるようサポートするためには、ビジョンの作成と発信、KPIと目標の設定、チームメンバーの役割の定義、チームメンバーのパフォーマンス評価、フィードバック、コーチングなど、やるべきことがたくさんあるので、それらをきちんとこなすには相当な時間がかかります。通常のチームメンバーとして機能しながら、同時にリーダーの役割を果たすことは、まるで理にかなっていません。

 しかし、これこそが日本の多くの組織で行われていることであり、「プレイングマネージャー」と呼ばれている役割なのです(playingもmanagerも英語ですが、英語圏では「playing manager」は普通使われません。プレイングマネージャーは和製英語のようです)。

 日本でプレイングマネージャーが多いのは、日本企業の典型的な2つの認識を反映していると思います。ひとつは、私の観察では、意図的な人員不足の傾向があると思います。要するに、余裕をもって働ける人数より、少ない人数を配置する習慣があるようです(背景には中間管理職が多すぎるという問題があるかもしれません)。

 ハンズオンの仕事をする人員が不足しているために、日本企業の従業員はしばしば過重労働に陥り、残業なしでは不可能なほど多くの仕事をこなさなければなりません。マネージャーの仕事とチームメンバーの仕事の両方を同時にこなせば、やることが多すぎて長時間労働になることはほぼ確実です。

 その結果、両方の仕事をうまくこなせなかったり、こなすためにひどく無理をしてしまったりするのです。つまり、「プレイングマネージャー」を置くことで会社は経費を節約しているように見えますが、実はそれは経済的に誤った選択です。

 私が講師を務めたセミナーの出席者も、プレイングマネージャーを上司に持つとのことで、「私の上司は明らかにキャパオーバーです。上司はいつも忙しそうなので声をかけることをためらってしまいます」と話していました。あまりに忙しすぎて、部下が仕事の相談をためらうようでは、リーダーシップを発揮できるわけがありません。

 プレイングマネージャーが日本にまん延しているもうひとつの原因は、日本企業のマネージャーの役割に対する考え方によるところが大きいと思います。

 多くの日本企業では、マネージャーをリーダーとして考えるのではなく、物事を承認したり、レポートを書いたり、ミーティングに出席したり、問題があったときに責任をとったりするという管理的な役割としてとらえています。また、マネージャーという役割は、お役所的な仕事をするだけで時間もかからないので、チームメンバーの仕事と並行して簡単にできるとみなされているのかもしれません。マネージャーに関する日本独特の狭く古風な概念は、いまこそ変える必要があります。

 プレイングマネージャーの立場にある人が、チームメンバーの仕事をしなければならないときに、リーダーとして行動するにはどうすればいいのでしょうか? ひとつは、本章で紹介するアイデアを活用して、できるだけ多くのことを部下に任せることです。たとえあなたがチームメンバーの仕事をしなければならないとしても、より基本的な仕事の一部を部下に任せる方法があるかもしれません。

 より抜本的なアプローチをあげるなら、チームを自己管理型チームにして、マネジメント業務の一部を他のメンバーと分担するというのはどうでしょうか。これはある意味、管理業務の一部を委任していると考えることができます(ただし、分担しているので、完全に委任しているわけではありません)。

 どのようにチームをマネジメントするかは、自分なりに決めてもいいのです。部下にもっと責任を持たせ、チームとして仕事の進め方を整理し、決定していくことを試してみてはいかがでしょうか。チームを管理する仕事を分担するために、あなたとチームが仕事の進め方をどのように変えられるか、そのためにはチームの仕事の進め方を大幅に再構築する必要があると思いますが、潜在的なメリットも大きいはずです。

<連載ラインアップ>
第1回 スティーブ・ジョブズの言葉に学ぶ 部下の士気を上げるには、なぜ“ムチ”より“アメ”がはるかに有効なのか?
■第2回 なぜ部下は、すぐにあなたを頼ってしまうのか? 指示待ち型の部下を自ら動かすための「11の戦略」(本稿)
第3回 なぜアメリカ人は、大げさな言葉で相手をほめるのか? 部下の心に響く「ポジティブ・フィードバック」とは
■第4回 グーグルでも実証 「心理的安全性」を高め、チームのハイパフォーマンスを生み出すための舞台設定とは?(11月22日公開)
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