人口減少社会で生き残るための産業振興策は? 平井伸治鳥取県知事

日本に暗い影を落としている人口減少危機。日本の総人口は2100年には約6300万人と、2020年時点の半分に減少するとの推計もある。こうした事態を受け、地方自治体も様々な取り組みをしている。産業振興策もその一つ。平井伸治鳥取県知事は事業承継と企業誘致の「両輪」が重要と提言する。日本記者クラブ(東京都千代田区)での記者会見でM&A Onlineの質問に答えた。

7割の「後継者不在」に行政もフォロー

平井知事は事業承継について「地域振興のキーになる取り組みだ」と重視している。「県内中小企業の約7割で後継者がいない。もし、これらの企業の廃業が続出すれば、住民の生活に必要な店舗は消え、地域の雇用や生産基盤を失うことになる」(平井知事)と、危機感を示した。

その上で「鳥取県商工会連合会と日本政策金融公庫、県が連携して全国から事業承継のパートナーを見つける取り組みや、オープンネームで後継者を募集する事業承継イベント、インターネット公募型マッチングなどを進めている」(同)という。

このほか地域課題解決型スタートアップを促進する伴走型の起業支援なども実施し、新しい産業おこしにも力を入れている。

人口減少食い止めで成果 

企業誘致についても「地域の実情や社会的条件に合致した事業を誘致していく」と意欲を見せた。鳥取県ではヨーグルトなどの乳製品や水産物加工など、大都市では立地できない企業の誘致で成果をあげている。そのほか半導体関連や自動車部品、GX(グリーントランスフォーメーション=クリーンエネルギーへの転換)関連などでも企業の鳥取県内への投資意欲は旺盛で、「県としても誘致に向けたチャレンジをするタイミングだ」(平井知事)としている。

平井知事は人口減少について「日本だけでなく、韓国や中国などの東アジア各国で急激に進んでいる。共通点は大都市への人口集中だ。生活コストが割高な大都市に人口集中することで、晩婚化や若年層の経済基盤の弱体化が進んでいるのが原因と考えられる」と一極集中の問題を指摘した。

「鳥取県では保育料無償化、小児医療費助成といった子育て支援策の充実や不妊治療費助成で、第3子以上を持つ家庭が増え、40代女性の出産が増加するなどの成果があがり、2022年の出産数は全国で唯一、上昇に転じた」(平井知事)という。

文・写真:糸永正行編集委員

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