【サンマルクHD】牛カツ「京都勝牛」を買収、「第3のブランド」獲得へM&A加速か?

外食大手のサンマルクホールディングス(HD)が反転攻勢を強めつつある。コロナ禍による業績の急降下を受け、不採算店舗を中心に約180店舗を整理するなど、戦線縮小を余儀なくされたが、一連の構造改革が一段落し、成長軌道への復帰をうかがっている。その起爆剤となるのか、同社として過去最大のM&Aに踏み切った。

牛カツ「京都勝牛」を子会社化

サンマルクHDは10月初め、牛カツ定食店「京都勝牛」などを展開するジーホールディングス(東京都中央区)を買収すると発表した。112億円を投じ、11月1日に子会社化を完了した。「サンマルクカフェ」、「鎌倉パスタ」(スパゲッティ店)に続く第3の飲食ブランドの確立につなげる狙いだ。

ジーホールディングスは傘下のゴリップ(京都市)、OHANA(愛知県刈谷市)を通じて、主軸の「京都勝牛」のほか、カフェ「NICK STOCK」などの飲食店を手がける。グループの店舗数は現在、直営74(すべて国内)、フランチャイズ43(うち海外21)。2024年9月期業績は売上高92億2000万円、営業利益12億2000万円。

サンマルクHDは2029年3月期を最終年度とする中期経営計画で、既存業態の強化に加え、M&Aを通じた業態の多角化を推進中。この中で今後も高水準が見込まれるインバウンド(訪日観光客)の取り込みや、海外進出の本格化につながる和食業態の獲得を目指している。

傘下に収めた「京都勝牛」(東京・四谷の店舗)

コロナ前を下回るも業績回復途上

サンマルクHDの足元の業績はどうか。コロナ前の2019年3月期は売上高が700億円と過去最高となり、グループ店舗数は920を超えていた。これに対し、2024年3月期の売上高は645億円(前期比11.6%増)と回復途上にある。利益面は低水準ながら2期連続で黒字圏を確保した。

3月末のグループ店舗数は約740。不採算店の整理を進めた結果、2割近く減少した。しかし、「サンマルクカフェ」(294店舗)、「鎌倉パスタ」(200店舗)の基軸2ブランドが経営の屋台骨を担う姿は変わらない。

部門別の売上高構成は「鎌倉パスタ」を中心とするレストラン事業が380億円(前期比14%増)、「サンマルクカフェ」を中心とするカフェ事業が265億円(同8.5%増)。カフェ事業が店舗数で勝るが、顧客単価が高いレストラン事業が売上高を牽引する形だ。

足元の2025年3月期は売上高0.9%減の640億円、営業利益14.5%増の30億円、最終利益2.1倍の21億円を見込む。不採算店舗の整理が前期までにほぼ完了したのに伴い、減損損失の計上が減り、最終利益を押し上げる。

さらに2026年3月期は今回傘下に収めたジーホールディングスの業績が通期でフルに寄与することから、売上高は700億円突破が確実視される。

今年5月、中期計画を組み替え

サンマルクHDは今年5月に中期経営計画を組み替えた。2022年3月期~2026年3月期を対象とする中期経営計画に取り組んでいたが、アフターコロナの到来など外部環境の変化を受けて内容を見直したのだ。

新中期経営計画では最終年度の2029年3月期目標として売上高800億円、営業利益65億円を掲げたうえで、26年3月期までの2年間はその体制づくりを行うとし、以下の3つを重点施策に打ち出した。

①「鎌倉パスタ」業態の継続出店・派生業態の出店によるパスタ業態のポテンシャルの最大化
②「サンマルクカフェ」業態を中心とした運営効率の改善
③既存の有望業態の強化、M&Aによる新ブランドの獲得など、2027年3月期以降の成長の軸となる第3のブラント確立に向けた投資

「鎌倉パスタ」については出店を着実に進めるとともに、その派生業態である「おだしもん」(出汁をベースとしたパスタと和スイーツ)、「神戸元町ドリア」、「てっぱんのスパゲッティ」などの出店強化を目指す。

レストラン事業の大黒柱である「鎌倉パスタ」

次なる大型M&Aは?

M&Aによる新ブランドの獲得では「京都勝牛」のジーホールディングスを110億円超で買収し、早速実行に移した。現行の中期経営計画は期間中、M&Aまたは機動的な株主還元として100億円程度の資金配分を盛り込んでいるが、枠を目いっぱい使った格好だ。

実はこれまで、サンマルクHDはM&Aに必ずしも積極的ではなかった。過去10年をみても、2022年末に「喫茶マドラグ」4店舗を展開するLa Madrague(京都市)を子会社化したことがある程度。「喫茶マドラグ」は京都を代表する喫茶店ブランドとして知られる。

サンマルクHDは岡山発の全国企業として躍進を遂げた。コロナ禍で右肩上がりの成長に待ったがかかったが、再び、上昇気流に乗ろうとしている。その推進力として、海外展開も見据えつつ、第二、第三の大型M&Aが出番を待っていそうだ。

◎サンマルクホールディングスの主な沿革

出来事
1989 大元サンマルクを岡山市に設立。「ベーカリレストラン・サンマルク」を開店
1990 サンマルクに社名を変更
1995 株式を店頭登録
1999 コーヒーショップ「サンマルクカフェ」を東京都内に開店
高級回転ずし「すし処函館市場」を福岡県久留米市に開店
2002 東証2部に上場
「ベーカリーレストラン・バケット」を兵庫県伊丹市に開店
2003 東証1部に上場(2022年4月、東証プライム市場に移行)
2004 スパゲッティ店「生麺専門鎌倉パスタ」を岡山市に開店
2005 持ち株会社制移行でサンマルクホールディングスに社名変更
2006 炒飯専門店「広東炒飯店」を兵庫県伊丹市に開店
2007 ドリア専門店「神戸元町ドリア」を岡山市に開店
2008 フルサービス喫茶店「倉式珈琲店」を東京都港区に開店
2022 喫茶店経営のLa Madrague(京都市)を子会社化
2024 11月、飲食店経営のジーホールディングス(東京都中央区)を子会社化

文:M&A Online

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