「セブン&アイ」に買収提案、コンビニ「サークルK」を傘下に持つアリマンタシォン・クシュタールとは

2021年に約3900店舗を持つ米国コンビニ業界3位の「スピードウェイ」(オハイオ州)を210億ドル(当時の為替レートで約2兆3232億円)で買収するなど、買い手としての存在感を示してきたセブン&アイ・ホールディングス<3382>が、買収の提案を受けた。

相手はカナダのコンビニ大手のアリマンタシォン・クシュタール。セブン&アイは「アリマンタシォン・クシュタールから内密に、法的拘束力のない初期的な買収提案を受けていることは事実」とし、同提案を検討するために独立社外取締役のみで構成する特別委員会を立ち上げたことを2024年8月19日に公表した。

特別委員会は、慎重、網羅的に、速やかに検討し、アリマンタシォン・クシュタールに返答する予定としており、現時点では、提案を受け入れるのか、拒否するのか、同社と議論を開始するのか、代替的取引を進めるのかに関して「決定していない」としている。

アリマンタシォン・クシュタールとは、一体どのような会社なのだろうか。

コンビニを次々に買収

アリマンタシォン・クシュタールは2024年8月19日に、「最近、セブン&アイ・ホールディングスに友好的な提案を送付した」と発表した。

リリースによると「両社の顧客、従業員、フランチャイジー、株主に利益をもたらす、相互に同意できる取引の締結に注力している」としたうえで、「合意が締結されない限り、または締結されるまで、セブン&アイとの協議に関するさらなる公式声明を発表する予定はない」としている。

アリマンタシォン・クシュタールのホームページによると、アリマンタシオン・クシュタールの前身となる企業を創業したのはアラン・ブシャール氏で、1980年にカナダのケベック州に最初のコンビニをオープンしたのが始まり。その後M&Aを繰り返し、事業を拡大していった。

最初のM&Aは創業から5年後の1985年。ケベック市地域で営業していたCouche-Tard(クシュタール)11店舗を買収。その2年後の1987年にはメトロリシュリュー社のコンビニSept-Joursを、1993年にはMac's/La Maisonnée de Silcorpのコンビニ60店舗を、さらに1994年にはPerretteの86店舗を買収した。

1997年には、ケベック州で245店舗を運営するProvi-Soirと、カナダのオンタリオ州とアルバータ州で約50店舗を運営するWink'sを買収し、ケベック州以外でも基盤を築き、1999年のSilcorpの買収によって、2000年にはカナダのコンビニ業界のリーダー的存在となり、北米では第9位にランクされるまでに成長した。

M&Aで「サークルK」を傘下に

2003年には米国のコンビニのサークルK(Circle K)を買収した。サークルKは、1951年に米国テキサス州で3店舗のストアを買収したのが始まりで、その後、近隣のニューメキシコ州とアリゾナ州に事業を拡大したあと、さらに買収を続け、1975 年には全米で1000店舗にまで拡大した。

カナダのサークルK店舗(REUTERS/Chris Helgren)

日本には1979年に進出(ユニーがライセンス契約し運営)しており、アリマンタシォン・クシュタールの傘下に入ってからはグローバル展開を加速し、世界20カ国以上で展開する世界的なブランドとなった。

さらに、アリマンタシォン・クシュタールは、フランスの小売大手カルフールに買収提案を行ったことがある。こちらは2021年にフランス政府の反対によって買収を断念する結末となった。

現在は、カナダや米国をはじめ世界31の国と地域で、クシュタールとサークルKを中心に約1万6700 店舗を展開しており、米国最大の独立系コンビニ運営会社の一つとなった。2024年4月期の売上高は692億ドル(約10兆3800億円)で、従業員数は14万9000人に達する。

同社はセブン&アイ・ホールディングスに友好的な提案を送付したと発表した同じ日に、米国のGetGoを買収する最終契約を締結したと発表した。

GetGoは米国のペンシルベニア州、オハイオ州、ウェストバージニア州、メリーランド州、インディアナ州で約270のコンビニと給油所で、約3500人の従業員を雇用しており、買収が実現すれば、アリマンタシォン・クシュタールの事業規模はさらに拡大することになる。

アリマンタシォン・クシュタールを上回る売上高

セブン&アイは、コンビニのセブン-イレブンを核とした成長戦略を描いており、2030年に世界トップクラスのグローバル流通グループになるとの目標を掲げている。

2021年のスピードウェイの買収のあとも、2024年4月にオーストラリアで751 店のコンビニ(2023年6月末時点)を展開するコンビニエンス・グループ・ホールディングスを子会社化したのをはじめ、同月には米国のスノコからコンビニやガソリンスタンド204店舗を取得している。

2024年2月期の売上高は11兆4717億5300万円(前年度比2.9%減)、営業利益は5342億4800万円(同5.5%増)で、店舗数は国内が約2万2800店舗(2024年2月末時点)、海外が6万3000店舗(2023年12月末時点)だった。

特別委員会はどのような結論を導き出すだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一

関連記事はこちら
カナダのコンビニ大手が「セブン&アイ」に買収提案、対日M&Aのこれまでを振り返る

【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック


ジャンルで探す