第1回日本GP優勝の“伝説のレーサー”式場荘吉氏が愛したスーパーカー ブガッティ「EB110SS」とは? 気になる落札金額は
RMサザビーズのオークションに、超レアな1993年式ブガッティ「EB110SS プロトタイプ」が出品されました。どんなクルマなのでしょうか。
「世界最速の量産車」となった超レアなスーパースポーツ
RMサザビーズのオークションに、超レアな1993年式ブガッティ「EB110SS プロトタイプ」が出品されました。
エットーレ・ブガッティ氏が1909年に創立したブガッティは、第2次大戦でモルスハイム(当時はドイツ領、現在フランス領)にあった工場が破壊され、1947年にエットーレ氏が亡くなってからはブランドは消滅状態でした。
その後1987年にイタリアの実業家、ロマーノ・アルティオリ氏がブランドを取得し、「ブガッティ・アウトモビリ」を設立。そして1991年に発表したのが、スーパースポーツカーの「EB110」でした。
車名のEBはエットーレ・ブガッティのイニシアル、110はブガッティの生誕110周年を意味します。
フランスの航空宇宙産業であるアエロスパシアル社によるカーボンファイバー製のシャシに560psを発生する3.5リッターのクワッドターボV12エンジンと6速MTを組み合わせていました。
EB110の発売から6カ月後の1992年のジュネーブ モーターショーで、「EB110SS(スーパースポーツ)」が発表されました。
EB110より約150kgも軽量化し、最高出力は603psにアップしました。0→96km/h加速は3.2秒、最高速度は350km/h以上とアナウンスされていました。
これは32年を経た2024年の今でも驚異的な数値です。
このEB110SSはプロトタイプで、シャシナンバーは39004。スーパースポーツとして特別に作られた最初のEB110でした。
このクルマは「S4」として知られており、1993年には東京でのプレゼンテーションで3台のEB110などとともに展示されました。
その後、イタリアのナルド サーキットに持ち込まれ、1993年5月29日に351km/hの最高速度を達成し、当時の地球上で最速のクルマであると主張しました。
テスト後、このS4は日本の伝説的なレーシングドライバー、式場荘吉氏に売却されました。1964年の日本GPで優勝した式場氏は、ブガッティには理想的なアンバサダーだったのです。
式場氏は2016年に亡くなるまでこのS4を保有し、ブガッティクラブの集まりには定期的に参加し、また細心の注意を払って維持していました。
式場氏の死後、S4はオーストラリアに売却され、2019年にビクトリア州ジーロングのシティオートグループが、すべてのボディパネルを取り外し徹底的なレストアを実施しました。
2022年にはクラッチとブレーキシステム、2024年2月には新しい燃料タンクを設置するなど、2万ドル以上の費用をかけています。
ブガッティ アウトモビリは1995年に倒産したため、EB110SSは結局7台しか製造されませんでした。
そのうちの1台であるこのS4は、今回のオークションで215万ドル(日本円で約3億915万円)で落札されました。
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オークション前のオドメーターは、わずか1万2557kmを表示していました。
伝説的な出自で、もっとも純粋でパワフルなコレクターズアイテム。まさに、本格的なスーパーカー コレクションにふさわしい1台といえるでしょう。
09/25 21:10
VAGUE