元祖マイクロカー「イセッタ」のリムジン版!? 65年前に登場した“大衆車”BMW「600」ってどんなクルマ?

米国カリフォルニア州モントレーで開催されたオークション「RMサザビーズ」において、65年前の“バブルカー”が出品され、高値で落札されました。どんなクルマなのでしょうか。

7万3920米ドル(日本円で1060万円)で落札

 2024年8月に米国カリフォルニア州モントレーで開催されたオークション「RMサザビーズ・モントレー2024」において、1959年製のBMW「600」が出品され、7万3920ドル(日本円で約1060万円)で落札されました。

 あの有名な「イセッタ」にも似たフォルムのBMW600ですが、どんなクルマなのでしょうか。

オークションで落札された1959年製BMW「600」Josh Bryan ©2024 Courtesy of RM Sotheby's

オークションで落札された1959年製BMW「600」Josh Bryan ©2024 Courtesy of RM Sotheby's

 BMWは1916年に航空機用エンジンメーカーとして創業したドイツの企業です。第2次世界対戦前はこの航空機・戦闘機用のエンジンのほか、2輪、4輪を製造していましたが、終戦後は連合国に3年間の操業停止を命じられてしまいます。

 1950年代にBMWは4輪の生産を再開しましたが、超高級車や高性能スポーツカーを専門的に生産していました。戦前の風習を受け継いでの高級車生産でしたが、戦後になると市場は一変し、安価な大衆車が求められるようになりました。

 大衆車をラインアップしていないBMWは、そこでイセッタに目をつけます。そしてイタリアの企業、イソ社からライセンス生産の許可を得て生産したのが「イセッタ250」です。

 当時、欧州各国では第2次世界大戦後の困窮が続く中、最低限の装備の簡易車両、いわゆる「バブルカー」と呼ばれるマイクロカーが多く登場していました。1955年に登場したイセッタもそのうちの1台です。

 イセッタは庶民の足としてヒット、当時立ち行かなくなりつつあったBMWの経営を支えました。その後、西ドイツは第2次世界大戦の混乱から立ち直りはじめ、小型車のニーズが高まっていきます。

 そのような背景から1957年に登場したのが、今回のオークションにも登場したBMW600です。

 フロントデザインはイセッタをベースにしたもので、前席の乗降を正面から行うスタイルも一緒です。ただしイセッタが前2輪、後1輪なのに対し後2輪に変更、ホイールベースを185mmを延長し1700mmに、全長を500mm延長し2900mmとし、4名乗車を実現しました。後席へは右側にあるファッショナブルなフレームレスガラスのドアからアクセスしました。

 エンジンはBMWのオートバイ用の582cc2気筒水平対向を搭載、最高速度は100km/hを超えたといいます。

 鳴り物入りで登場したBMW600ですが、1950年代後半からの欧州全体での景気回復のためか人気は低調で、1959年には生産を終了しました。その間の生産台数は3万5000台あまりだったといいます。

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 今回オークションに登場した1台は、クリーム色の上にグリーンを基調としたツートンカラーで、オリジナルをベースに数年をかけて完全修復されました。走行距離は5万7090kmで、これは正確であると考えられています。

 購入後すぐに走行することができるコンディションのため、高値で取引されたということです。

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