川田利明が14年のラーメン屋経営で痛感した高い<壁>。最大の要因はラーメンの単価が…「売上げアップの策はないね」
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開店以来、もっともお客さんが少ない状態に
2023年5月に新型コロナが5類感染症に移行し、少し客足が戻ってきたかなと思っていたけれど、2024年1~3月の客数は新型コロナの時期よりもさらに減った。
新型コロナの影響で夜にお店でお酒を飲む習慣がなくなったことも原因のひとつかもしれない。数人のグループで来るお客さんが減ったからね。
お客さんが来たとしても、新規の場合はランチ営業中に来ることがほとんどだし、夜は常連さんだけ。
開店から14年目が終わろうとする今、もっともお客さんが少ない状態かもしれない。
夜になってもお客さんが来てくれる店があるとしたら、それは駅近の店だけだと思う。
やっぱりうちは立地の悪さが響いた。
テナント選び
「麺ジャラスK」は成城学園前駅から徒歩12分の距離にある。
この店を始める前、この場所にはラーメン居酒屋が入っていた。
そこもパッとしなかったから空テナントになっていたわけだ。
お客さんが来ないことは店を始める前からある意味、確定していたのだけれど……。
このテナント選びが間違いの始まりだったわけだが。
ライバル出現
14年間経営する中で、この近所ではいろいろな店が次々と消えていった。
なくなりそうにない大手牛丼チェーン店がまず消えた。そこは何店舗も店が変わり、あとから入った宅配寿司もバイクがいつも待機している状態だった。
いつ潰れるかと思っていたら、新型コロナの影響で流れが変わり、逆に繁盛するようになって今も生き残っている。
しかし、近所の大手チェーンのコンビニは消えた。
跡地には大手の中古バイクチェーン店ができたけれど、今は中古車店になっている。
もう、「運」だと思うね。新型コロナで他の飲食店が閉店を余儀なくされている中で、いつ潰れるかという状態だった宅配寿司が繁盛する。わからないもんだよ。
最近では二郎系といわれるラーメン店ができた。近くに日本大学商学部があるから学生たちがよく並んでいる様子を見かける。
ライバル出現でうちの店の売り上げが減ったかといえば、まったく関係ない。うちには、もともとお客さんがそんなに来ないから減りようがない。
売り上げアップの策は……ない。うん、ないね。
最大の要因
最大の要因は、ラーメンは単価が低いことにある。
たとえばプロレス関係の店では、ステーキ店「リベラ」ならステーキ一品で数千円は取る。
田上明のステーキ居酒屋「チャンプ」だって、ひとりあたりの単価はラーメン屋の比ではないだろう。
ラーメン一杯の価格は「1000円の壁」とよくいわれるように単価を高くできない分、数を売らなければならない。
一杯の価格を高く設定できるとしたら、やはり立地のいい店に限られる。
数年前にオープンした環八沿いの店は普通のラーメンを700円くらいで始めたのだけれど、最近はそれが1200円、チャーシューを入れたら1600円ぐらい取っている。それでも、行列ができているんだよ。
うちは立地が悪い上に、今はお客さんが来ないのだから救いようがない。
じゃあ、単価が高いメニューに変更すればいいのかというと、高ければもっとお客さんは来なくなる。
※本稿は、『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島社文庫)の一部を再編集したものです。
07/24 12:30
婦人公論.jp