サンライズの最安値寝台「ソロ」 上段と下段どっち派? 同額で何が違うのか
東京~高松・出雲市間を結ぶ唯一の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」には、狭いながら安価なB個室寝台「ソロ」が設置されています。この「ソロ」、上段室と下段室がありますが、全く異なる構造です。それぞれのメリットは何でしょうか。
料金は6600円
東京~高松・出雲市間を結ぶ寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」で最も安価な個室が、1人用B個室寝台「ソロ」です。ポピュラーな1人用B個室寝台「シングル」の寝台料金は7700円ですが、「ソロ」は6600円です。
寝台設備を利用する場合、指定席特急料金は530円引きとなりますから、普通車指定席である「ノビノビ座席」と比較するとプラス6070円で鍵のかかった個室に泊まれるため、リーズナブルな設備といえます。
この「ソロ」ですが、実は2種類の設備があります。平屋の下段室と、階段を上がって2階に上がる上段室です。同じ料金ではあるのですが、個室内広さや高さにはかなりの違いがあります。
そうした特性を検証すべく、個室内の寸法を実際に測ってみました。
まずは上段室です。個室の扉は開口幅が51cm。裏には姿鏡が、扉の近くにゴミ袋があります。入口部分は非常に高く、天井高さで235cmあります。寝台へは3段の階段を経由して登り、階段を上がったところにドリンクホルダーと使い捨てコップが備わります。
寝台から天井までの高さは104cmですので、座高が高くなければ、足を伸ばしながら着替えができます。寝台幅は広いところで70cmですが、これは入口付近のごく一部で縦に10cmほどの長さしかなく、幅は段階的に62cm→56cmと狭くなっていきます。つまり、寝台長さの半分くらいは62cmです。寝台横には荷物置き場があり、長さ50cm、奥行25cm、高さ30cmほどです。寝台の狭い部分の窓縁がテーブルとなっており、ここは12cmほど。寝台の狭い部分の壁にハンガーもあります。
寝ぼけると怖い上段
個室長さは196cm、個室幅は98cmです。側扉と寝台とのあいだは27cmほど空いています。
コンセントは個室に入ったところ、寝台の横についています。寝台幅が広い部分なので、寝ながらスマートフォンを使ったりするには便利ですが、トイレなどに行く際に、コードをひっかける可能性もあるので注意が必要です。騒音と振動は以下の通りです(ソロ2階室〈16番〉)。
・平均騒音:51.3dB(静かな事務室程度)
・最大振動:震度3.0
・平均振動:震度1.2
なお居住性がよいのは、寝台の広い部分を背に、狭い部分に向けて座れる個室です。高松・出雲市行きであれば、2・4・6・8・10番個室が該当し、景色も見やすいです。
東京行きであれば12・14・16・18・20番個室が該当します。筆者(安藤昌季:乗りものライター)なら、空いていれば高松・出雲市行は6か8番、東京行きなら14か16番を選びます。車両中央部で乗り心地がよいからです。
上段室の総評ですが、個室入口部分に直立でき、荷物置き場も3か所あるので着替えが楽です。台車から遠いために走行音が小さく、寝心地も良好。ただし、寝台から個室入口までの高さは135cmもあるので、トイレやシャワーに行く時に足を踏み外したら大変なことになります。そそっかしい自覚がある人には、あまり勧められません。
下段室のスペックは
次に下段室です。扉の開口幅は53cmで、上段よりわずかに広いです。裏には姿鏡が、扉の近くにゴミ袋とスリッパがあります。ちなみに「シングル」扉の開口幅は63.5cmです。
入口の天井高さは184cmで、直立可能です。上段と同じく、入り口部分で着替えることになりますが、寝台と側扉のあいだが25cmほどしかないので、圧迫感があります。
床から寝台までの高さは38cm。上段寝台への階段部分が室内に張り出しているため、転落の心配はありません。寝台幅は広い部分が70cmです。広い部分が10cmの上段と違い、下段は縦に104cmも寝台の広い部分がありますので、寝ている時のスペースの広さは上段より上です。狭い部分は寝台幅56cmですが、通常は足元の部分なので、それほど問題は感じません。
側窓には幅12cmのミニテーブルが備わります。ここは寝台の狭い部分に当たるので、飲み物を置いて壁を背中にし、寝台の広い部分に足を向けたいのですが、実行すると幅56cmの空間に挟まれるので、非常に圧迫感があります。
寝台から天井までの高さは101cmで上段と同じです。コンセントは入口部分にあり、使いやすいです。騒音と振動は以下の通り(下段室〈17番〉)。
・ソロ平均騒音:53.6dB(静かな事務室程度)
・最大振動:震度3.6
・平均振動:震度1.5
数値は上段よりやや大きめです。金属音のような音がすることもあるので、音に敏感な人にはあまりお勧めしません。走行音が好きな鉄道ファンに人気があります。
入口部分の床は荷物置き場を兼ねており、幅25cm、奥行105cmほどの空間です。スリッパも置かれています。
列車のほかの設備をよく使うなら…
下段室の総評ですが、出入りが楽なのは素晴らしいことです。ただ、側窓が上段より小さいこともあり、個室扉を閉めた時には相当な圧迫感があります。特に、寝台の狭い方を背中にした場合は顕著です。狭い場所が苦手な人にはあまりお勧めしません。また、荷物置き場が入口の床置きだけなので、大きな荷物を持ち込むと狭くなります。
居住性に優れているのは、個室の広い部分を背中にでき、狭い方に足を向けられる個室です。高松・出雲市行なら11・13・15・17・19番、東京行きなら1・3・5・7・9番個室です。筆者なら空いていれば、高松・出雲市行は13か15番を、東京行きなら5か7番を選びます。車両中央部で乗り心地がよいからです。
最後に、上段と下段のどちらがよいかですが、個室内で過ごしている時の快適さは上段だと思います。室内の解放感が下段とは違い、1グレード上の「シングル」下段と同等の居住性を感じます。
ただし、出入りは不便と言わざるを得ず、特に足腰が弱っている人や、疲労がたまっている人には勧められません。下段を選ぶメリットは、出入りが楽である点です。近くにあるミニラウンジや自動販売機、シャワーに行くのも楽ですから、個室内が狭くてもラウンジで気分転換できます。
筆者の好みは上段ですが、大阪→東京間のような乗車時間が短い場合は、下段も選択肢に入ると感じています。乗車時の参考になれば幸いです。
06/23 07:12
乗りものニュース