夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」は寝台列車より寝心地よい? 各設備で「寝比べ」 目撃した意外なお客さん

JR西日本の特急「WEST EXPRESS 銀河」は、眠れる設備を多く持ち、夜行列車として運行されることも多いために寝台列車のように扱われることもあります。「銀河」で本当に眠れるのか、騒音と振動を計測してみました。

座席を寝台へ「プレミアルーム」

 寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」と並び、今や数少ない寝台を備えた列車である夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」。JR西日本が方面別に、期間限定で運行しています。
 
 寝台が備わる以上、気になるのは「どれだけ眠れるのか」という点でしょう。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2024年3月の月曜日、京都駅発 出雲市駅行きの下り列車に乗車し、震度や騒音を測ってみました。

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夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」は国鉄型117系電車の改造だ(安藤昌季撮影)。

 計測はスマートフォンのアプリを用いました。なお計測者は1人なので、同じ区間を各設備で測り比較することはできません。あくまで目安とお考えいただければと思います。

 平日でしたが、それでもグリーン車である1号車と6号車は発売と同時に満席となる人気ぶり。筆者と同行者は6号車の2人用グリーン個室「プレミアルーム」を予約しておきました。まずは「プレミアルーム」の各部を測ってみます。

「プレミアルーム」は、窓向き座席を寝台に転換できる構造です。寝台にすると台形になります。寝台の広い箇所の横幅は134cm、狭い箇所は92cm。2人用だけあって、狭い部分でもなかなかの広さです。枕は、縦46cm×横47cmとほぼ真四角。高さは12cmでした。

 寝台の奥は壁面ですが、その前にミニテーブルがあります。横幅は126cm、広い部分の奥行が27cmです。側窓は2つあり、ひとつの横幅は147cm、縦幅は77.5cm、窓の縁は7.7cmでした。

 寝台の高さは61cmあり、かなり高く感じます。ただ、壁面間全てが寝台となるので、落下の心配はありません。寝台の下には荷物置き場があり、横幅45cm、縦幅30cm、奥行62cmあります。リュックは余裕で収納できる広さです。

開放型B寝台のような「クシェット」

 個室出入口となる扉は、幅が67.5cm、高さが178cm。個室扉の前はテーブルとなっており、横136cm、縦37.7cmでした。ちなみに台形の部屋だけあって、個室の最も狭い部分の座席幅は広い部分で65cm、狭い部分で40cmとかなりの差がありました。

「プレミアルーム」はフルフラットで寝転がれるので快適です。インテリアは抜群に良く、USBポートなど現代的な装備もあります。ただ個室寝台として捉えると、座席時の背もたれが不自然な形で、あまり座り心地が良くありません。転換機構があるため硬い部分があるのも、寝心地の点では残念です。

 一通り設備を確認した後で、「プレミアルーム」の振動と騒音を計測。最大震度は4.5、平均震度は2.1、平均騒音は51.2dBでした。震度はポイントでの揺れも拾っているので、体感ではもう少し揺れない印象です。

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6号車はグリーン個室「プレミアルーム」。写真は2人用(安藤昌季撮影)。

 次に5号車に移動しました。かつての開放型B寝台のように、向かい合わせで上下寝台が並ぶ、4人用区画の普通車指定席「クシェット」が備わります。「クシェット」はB寝台と同じ寝台幅70cmで、クッションはグリーン車「ファーストシート」「プレミアルーム」よりも柔らかいため、寝心地では最高とも言える設備です。これを座席の指定席と同一料金で利用できます。当日は寝台区画が埋まっていたので、騒音と振動の計測は断念しました。2号車の「クシェット」を参考にしてください。

 4号車はフリースペース「遊星」です。小上がりスペースがあり、自由に語らえる場所です。向かい合わせ座席間のテーブルには将棋やチェスなどの盤面も印刷されています。インテリアは良いのですが、飲料の自動販売機は設置してほしいと感じました。

 乗車時はVR眼鏡を装着しての星空体験を実施していました。車両の中央部で計測したところ、最大震度は4.8、平均震度は2.3、平均騒音は58.6dB。客室ではないためか、やや騒音が大きい印象でした。

頻繁に徐行運転する「WEST EXPRESS 銀河」

 3号車は3~4人用の半個室区画「ファミリーキャビン」と、普通車指定席です。「ファミリーキャビン」は2室あるのですが、夜行運転時は1組で2室が使え、もう片方の個室が荷物置場という不思議な販売方法です。こちらも普通車指定席扱いで人気がある半個室設備ですから、夜行でも個別売りしてもらいたいものです。

「ファミリーキャビン」の最大震度は2.4、平均震度は1.6、平均騒音は57.9dBでした。振動の数値が低いですが、これは計測時に徐行運転していたためです。実際はほかの設備と大差ない振動があります。

 3号車の普通車指定席は、最大震度2.5、平均震度1.3、平均騒音56.6dBでした。こちらも徐行していた時なので、数値は目安です。

 次に2号車に移動しました。「クシェット」と普通車指定席から構成されます。「クシェット」が最大震度4.7、平均震度2.1、平均騒音54.2dB、普通車指定席が最大震度4.8、平均震度2.2、平均騒音59.8dBでした。乗り心地は「クシェット」の方がやや良いようです。

 指定席は、リクライニング角度が深いのは良いのですが、リクライニングで体が前に滑ったときに止まりません。フットレストやレッグレストが必要と感じます。なお、2号車指定席はかつて女性専用でしたが、現在では一部が女性専用席となっています。

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2号車は4人用区画の普通車指定席「クシェット」と普通車指定席から成る。写真は「クシェット」(安藤昌季撮影)。

 最後に1号車「ファーストシート」へ。向かい合わせ座席が並びますが、寝台に転換できる構造のため、実質寝台車です。寝心地はかなり固めで、寝台高さが高いのがやや怖いです。寝台をカーテンで仕切ることもできます。

 列車が速度を上げたので、最大震度4.7、平均震度3.4、平均騒音56.9dBを計測しました。以前乗車した際には「プレミアルーム」と大差ない騒音・振動でしたので、高速走行時の目安とお考えいただければと思います。

平日の乗車率は? 意外なお客さんにも遭遇

 計測を終えたので、西明石駅出発時に、車内を巡回して乗車人数も数えてみました。

1号車「ファーストシート」/8名(満席)
2号車「クシェット&普通車指定席」/指定席6名、クシェット7名(定員26名)
3号車「ファミリーキャビン&普通車指定席」/指定席10名、ファミリーキャビン2名(定員22名)
4号車「フリースペース」/利用客6名
5号車「クシェット」/11名(定員18名)
6号車「グリーン個室プレミアルーム」/9名(満席)
合計:59名(定員:83名)

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4号車のフリースペース「遊星」(安藤昌季撮影)。

 乗車率は71%と、平日としてはまずまず。特に座席の普通車指定席が思った以上に利用されていました。意外だったのは、行商人のおばあさんが利用していたことです。京都発21時15分、米子着7時52分、松江着8時46分、出雲市着9時39分は、実用列車の範囲なのでしょう。

 月曜日の下り「銀河」は、金曜日では見られる「駅ソバの特別営業」がないのは残念です。また、松江駅で19分停車しますが、駅弁屋の開店が午前9時で列車はその5分後に出発なので、駅弁購入が難しい点は改善してほしいところです。

 気になる部分もありましたが、「WEST EXPRESS 銀河」の12時間は、あっという間に過ぎました。楽しい夜行特急の旅が、今後も長く続けられることを願ってやみません。

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