覆面ホラー作家「雨穴」の累計100万部作品『変な絵』が待望の漫画化!9枚の絵から始まる不穏なスケッチ・ミステリー
あなたは自分の目で見たものをどれほど信じているだろうか。人間の視覚情報は意外とアテにならない。日常の何気ない光景でさえ、その中にある真実を私たちは見落としがちだ。『変な絵』(雨穴:原作、相羽紀行:作画/双葉社)は、そんな視覚の盲点を巧みに突き、読者の心にじわじわと不安を呼び起こすミステリーだ。
主人公の佐々木は、オカルトサークルに所属する大学生。ある日、後輩の栗原からとあるブログの存在を教えられる。そこには、投稿者の妻“ユキ”が描いた絵と、「絵の秘密に気づいてしまった」「あなたが犯してしまった罪」など、不穏なメッセージが掲載されていた。絵に隠されていた驚愕の事実とは――!?
『変な絵』を試し読み
『変な家』でお馴染みの大人気ホラー作家・雨穴による、9枚の絵をめぐる“だまし絵”ミステリーが待望のコミカライズ化。原作小説は『変な家』に続く「変なシリーズ」第2弾として2022年に発売され、シリーズ累計100万部を突破。小説の第一章を映像化したYouTube動画も再生数600万回を超えている。
物語は、ある1枚の絵の紹介から始まる。「それではこれから1枚の絵をお見せします」と、読者に示されるその絵。子どもが描いた普通の絵のように見えるが、実は恐ろしい真実が隠されていた。
本作に出てくる絵は、“何かがおかしい”。サンタ帽のようなものを被った赤ちゃん、手提げ袋を掲げた少年、こちらをじっと見つめる女性……どれもこれも何の変哲もないイラストのはずだが、背筋が寒くなるような違和感が拭えない。
本作は、初見の読者はもちろん、原作や動画を履修済みの人も楽しめる構成となっている。動画では尺の都合上、削らざるを得なかったであろう情報を、漫画ならではの技法で補完。作品の要となるトリックも、小説を読んだ人なら「あの設定を漫画だとこう表現するのか!」と思わず唸る見せ方をしているため、新鮮な気持ちで楽しめるだろう。
相羽紀行氏の作画は、シンプルでありながら細部にこだわり、読者に心理的な違和感を巧妙に植え付ける。何気ないイラストが、物語が進むにつれて恐怖を増幅させる演出は秀逸で、思わずその場に引き込まれてしまう。もちろん、ただ恐怖を与えるだけでなく、主人公と一緒に謎解きを楽しめるようにもなっている。読者は己の推理力も試されるのだ。
雨穴作品ファンへの推しポイントは、大学時代の若い“栗原”が描写されていること。前作『変な家』で探偵役として存在感を放った栗原。今回も主人公のもとに謎を運んでくる役回りだ。
筆者は原作未読勢だったが、続きが気になりすぎて原作を手に取ってしまった。そしてこの記事を書いている今、結末のネタバレを言いたくてたまらない。あの描写が実はこうで……! と、思わずトリックを語りたくなってしまう。一方で、人の読書体験を奪いたくない! この謎の正体はぜひその目で味わってほしい! と思うほど、『変な絵』には読んだ人を興奮させる魅力がある。
コミカライズ版『変な絵』第1巻は、2024年10月23日(水)発売。本作に登場する絵を見た瞬間、あなたはきっと「何かがおかしい」と感じるはずだ。そこに秘められた謎に、果たして気付けるだろうか。
文=倉本菜生
10/24 11:00
ダ・ヴィンチWeb