本郷和人『光る君へ』まひろの父・為時が「県知事クラス」越後守に。まひろのような身分の<侍女>はどんな仕事をし、お給金はどうなっていたかというと…

(写真:stock.adobe.com)

大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマが人気を博す中、平安時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まっています。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「階級別<娘の立場>」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

『光る君へ』次回予告。病に侵されながら東宮に敦康を望む一条天皇。対して彰子は涙声で道長に「どこまで私を軽んじておいでなのですか!」と訴える。そしてまひろは「罪」に想いを馳せ…

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父・為時が越後守になったけれども…

『光る君へ』中、屈指の癒しキャラでもあった、高杉真宙さん演じるまひろの弟・藤原惟規 (ふじわらののぶのり)。

越後守に任じられた父・為時にお供した先で激しい腹痛をうったえ、残念ながらそのまま亡くなってしまいました。

娘の賢子に肩を抱かれながら泣きじゃくるまひろの姿。史実であるから仕方ないとはいえ、一視聴者として、見ていて辛いものがありました。

辛いことがありながらも、父・為時は晴れて越後守になった、ということで、今回はあらためてまひろのように、官職のある家の娘の立場について考えてみたいと思います。

基本は階級

貴族社会の基本は身分、というか<階級>ですね。

ざっくり上級、中級、下級の3つくらいかな。

本郷和人先生が監修を務める大人気の平安クライム・サスペンス!『応天の門』(作:灰原薬/新潮社)

時代によっても違うから何とも言えないところがあるのだけれど、皇族とか藤原摂関家とか、官職でいうと大臣になれる家の人は上級。

現在の県知事に当たるトップ地方官になる人くらいが中級。まひろの父・為時がここに該当します。

そして位階の五位に昇れない家は下級。

で、中級の貴族が上級に、下級の貴族が上級と中級に仕える。このあたりの構造は女性も男性も同じです。

だから紫式部や清少納言といった中級の家出身の女性が天皇のお后に侍女として仕えた。そして彼女たちは実家に帰れば、下級の家の女性の奉仕を受けます。

ドラマでいえば、いとがそこに該当するでしょうか。

侍女の仕事は頭脳労働と肉体労働

侍女の仕事はおおよそ頭脳労働と肉体労働に分けられます。

もちろん身分の高い家の女性は頭脳労働がメイン。ご主人様の話し相手とか家庭教師とかですね。

下級の家の女性はお使いを務めたり、ご主人様の外出のお供に徒歩で従ったり。

なお下級とはいっても、彼女たちも曲がりなりにも貴族の出ですので、ガチの肉体労働、たとえば薪を割ったり、桶に入れた水を運んだり、火を起こしたりなど、はしません。

それは庶民の家の出の女性がやります。ドラマで言えばきぬ、ですかね?

彼女たちのお給金は?

このあたりまでは想像がつきそうです。

しかし一歩踏み込んで、「彼女たちのお給金は?」といったことになると…。

実はあまりよく分かっていません。

紫式部なんかはもともと自分で財産をもっていたうえで、折々主人の藤原彰子や、左大臣の道長から質の高い物をいただいたりして賄っていたのでしょう。ドラマ中でもなんだかんだと、褒美や贈り物をもらうシーンが頻繁に描かれていますよね。

もっと下の女性は絹とかで支給されていたのかな?

お金のない時代ですから、現物支給だったのでしょうが、そのあたりの事情を現代に伝えてくれるような「<かゆいところに手の届く>平安侍女の生活解説」みたいな資料は残念ながら、ほとんど存在しないのです。

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