飲み物は「この場で一口飲んで」 自民総裁選で初の街頭演説会、名古屋厳戒ルポ

自民党は14日、名古屋市内で総裁選(27日投開票)告示後、初の地方遊説を行った。多くの聴衆に直接政策を訴えることができる地方遊説は、党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件からの立て直しを目指す自民にとって絶好のアピールの機会だ。だが、安倍晋三元首相の銃撃事件などの影響で会場には厳重な警備態勢が敷かれ、過去の総裁選にはない物々しい雰囲気が漂っていた。

写真撮影の女性が制止される場面も

「かばんの中の荷物を見せていただけますか」「飲み物はこの場で一口飲んでいただきます」

午後3時50分。名古屋市のシンボル、名古屋城から車で約15分程度の久屋大通公園。総裁選に立候補した9候補の訴えを直接聞こうと駆けつけた聴衆に、制服姿の男性警備員がこう呼びかけた。決められた場所以外で写真を撮影しようとした女性が制止される場面もあった。

会場入りを許されたのは、警備員から手荷物をチェックされた聴衆のうち、黄色のシールを手渡された人だけだ。9候補が立つ位置は安全性を高めるため、背後に巨大なオブジェがある場所が選ばれ、聴衆との間には一定の距離が保たれた。

安倍氏、岸田氏…狙われた演説会場

厳戒態勢の背景には一連の事件がある。令和4年に安倍氏が奈良市での街頭演説中に銃撃を受けて死亡し、翌5年には岸田文雄首相が応援に入った和歌山市の演説会場で爆発物を投げ込まれた。海外でも今年7月にトランプ前大統領が東部ペンシルベニア州での演説中に銃撃を受けた。

高市早苗経済安全保障担当相の演説を聞きに来たという名古屋市の男性(61)は「いろんな事件があった。こういう警備態勢になるのはしかたない」とつぶやいた。

午後6時過ぎ、会場に候補者が到着し、次々とマイクを握った。聴衆はスマートフォンを取り出して撮影を始めたが、周辺を見回す制服やスーツ姿の警察官の表情は候補者の笑顔とは対照的に険しかった。(永原慎吾)

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