候補乱立の自民党総裁選、14日から地方遊説へ 聴衆への訴えと警護の両立難しく

自民党総裁選(27日投開票)の地方遊説が14日、愛知県を皮切りにスタートする。過去最多となる候補者9人の論戦を通じて総裁選への関心を高める狙いだ。一方、国内外で政治家を標的としたテロが相次いでおり、警備面では厳戒態勢が敷かれる。各陣営は聴衆への訴えと安全確保の両立に頭を悩ませている。

「金属探知機の使用にご協力をお願いします」

13日朝、総裁選に出馬した小林鷹之前経済安全保障担当相の街頭演説が行われた千葉県習志野市のJR津田沼駅では聴衆に対し、手荷物検査が実施された。

12日の告示後は各候補にSP(セキュリティーポリス)が付いており、この日も小林氏の横に立った屈強な男性SPが周囲に目を光らせる姿があった。

警備上の理由から街頭演説の中止に追い込まれた陣営もある。高市早苗経済安保担当相は告示直前に街頭演説を計画していたが、手厚い警備が必要になることから取りやめた。陣営関係者は「令和4年7月に安倍晋三元首相が銃撃事件で亡くなってから、警備がかなり厳しくなった」と漏らす。

今回の総裁選では、14~20日に愛知、福島、沖縄、愛媛、大阪、東京、島根の7都府県で演説会を行う。16日には石川県で公開討論会を開催。党関係者によると、安全確保のため愛知と東京以外は屋内で実施するという。

「候補と聴衆を守るためには安全策をとるしかない。何かあったら『自民は何をやっているんだ』とイメージダウンにもつながりかねない」

党総裁選挙管理委員会で演説会などの運営について議論したメンバーは危機感をあらわにする。

安倍氏の事件以降、昨年4月にも衆院補欠選挙の応援演説のため和歌山市を訪れた岸田文雄首相に爆発物が投げ込まれた。米国でも今年7月、トランプ前大統領が選挙演説中に銃撃される事件が発生した。

とはいえ、警備を強化するほど候補と聴衆との距離は遠のく。また、屋内でのイベント開催は参加人数が限られ、注目度が下がる恐れがある。「知名度で出遅れている候補者にとっては厳しい環境だ」(中堅議員)との声も上がる。

党幹部は「早期の実施が予想される次期衆院選を見据え、街頭演説をどんどん打ちたいところだが、制約がかかるのは痛い」とこぼした。(竹之内秀介)

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