宮内庁のSNS利用解禁、美智子さまはいまだ登場せず 依存や誹謗中傷の問題に対する懸念をお抱きか

外出しづらいご状況にあったという(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)

 宮内庁は皇室の情報発信を強化すべく、長年見合わせてきたSNSの利用をついに解禁した。国民に寄り添う皇室が、時代の移ろいとともに変化を遂げていくのは自然なことだ。そのような中でも、上皇后美智子さまは変化の中に潜む危機に警鐘を鳴らされている。

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 例年より遅れて桜が満開を迎えた頃、美智子さまは今年になって初めて人前に立たれた。4月9日、「昭憲皇太后百十年祭」にあたり、天皇皇后両陛下、上皇ご夫妻、秋篠宮ご夫妻が明治神宮を参拝された。

 あいにくの花散らしの嵐の中、美智子さまが明治神宮に到着されたのは11時を過ぎた頃だった。白色のロングドレスに、小皿のような帽子を合わせられた美智子さまは、黒い傘を差されながらうつむきがちに歩を進められ、参拝を終えられた。

「足の具合が万全でないのか、時折職員の手を借りながら、いつも以上にゆっくりと歩かれていたように見受けられました。段差で足を取られ、よろめかれる場面もありました」(宮内庁関係者)

 ご表情は終始硬く、その瞳は憂いをたたえられているようだった。

 宮内庁は4月1日、公式インスタグラムの運用を始めた。アカウント開設からたった1週間で、フォロワー数は首相官邸の約29万人をゆうに超える80万人に達し、皇室への関心の高さを内外に示すことになった。

 宮内庁は、SNSのターゲットとして、主に若者を想定しているようだ。「X」や「Facebook」などほかのSNSと併用せず、インスタグラムのみを利用する理由を、宮内庁広報室はこう説明する。

「各SNSの特性を総合的に勘案し、インスタグラムでの発信を開始しました。インスタグラムについては、若年層を中心に高い利用率があると承知しています」

 すでに効果は出始めている。4日、皇居で行われた新任外国大使の信任状捧呈式の馬車列を一目見ようと、東京駅から皇居に至る行幸通りの並木道には多くの人が集まった。

「インスタグラムの告知を見て知り、集まった人が多かったそうです。宮内庁の狙いは若い人たちに皇室のご活動を知ってもらう、親しみを持ってもらうことでしょうから、馬車列の例は成功でしょう」(皇室記者)

 一方で、宮内庁がインスタグラムを始めたことによる懸念を指摘する声もある。

「SNSにより皇室が身近な存在になることは喜ばしいことですが、一方で、存在が軽くなり、敬愛の念が薄れてしまうのではないかという危機感もある。そうした事態は、やがて象徴天皇制の揺らぎに結びつく恐れも指摘されています」(前出・宮内庁関係者)

 SNSはその便利さで利用者を急拡大させている一方で、社会問題も引き起こしている。なかでも深刻なのが誹謗中傷だ。そもそも宮内庁がSNSを検討し始めた背景には、眞子さんの結婚をめぐる騒動が大きく関与しているとされる。

「眞子さんの結婚に対し、SNSを含むインターネット上には、批判および誹謗中傷が殺到しました。眞子さんが複雑性PTSDを発症した原因の一端を担ったとされています。宮内庁は情報発信力の弱さを問題視。時代のあり方に伴い正しい情報をタイムリーに発信すべく、SNS開設に向けて準備を進めてきたそうです」(前出・皇室記者)

 眞子さんに対する誹謗中傷に誰よりも心を痛められてきたのが美智子さまである。美智子さまは、眞子さんの苦しみを「家族全体の苦しみ」と表現された。

「美智子さまが日常的に目を通されるのは主に紙媒体であり、電子媒体に明るいわけではありません。それでも、SNSのはらむ依存や誹謗中傷などのリスクは社会問題として認識され、強いご懸念を抱かれているといいます」(前出・宮内庁関係者)

 4月9日現在、宮内庁のアカウントの投稿数は25。両陛下をはじめ、愛子さま、秋篠宮ご夫妻は登場されているが、美智子さまが映られている写真や動画は一枚もない。

美智子さまに関する書き込み

 美智子さまのご体調は、芳しいとはいえない状況が続いているという。

「午後になると出る微熱や、指のしびれに悩まされているようです。加えて聴覚にも不調があり、聞き取りが難しい場合もあるようで、同じ内容を繰り返される上皇さまに返事をするのにも苦労されているようです」(前出・宮内庁関係者)

 今年初のお出ましが遅まきになったのは、美智子さまが外出を自粛されていたからだという。

「新年一般参賀は、能登半島地震の影響で中止になりました。美智子さまはいたく心を痛められ、両陛下が被災地訪問を終えられるまでは、お出ましを控えられたそうです」(前出・宮内庁関係者)

 外出をためらわれた要因は、能登半島地震だけではないだろう。昨年、一部インターネット上で美智子さまに関する根も葉もない情報が飛び交っているという指摘があり、美智子さまは衝撃を受けられたという。

「紙媒体になじみのある美智子さまにとって、SNSは未知の媒体です。眞子さんだけでなく、知らない間にご自身についてもSNSに書き込まれているという事実に大きなショックを受けられたそうです。

 美智子さまには昭和から平成への御代がわり後、バッシングの影響で『失声症』を患われた過去がありますから、おつらい記憶のフラッシュバックもあったのではないでしょうか」(前出・宮内庁関係者)

 そうしたご事情で、お出ましをためらわれた側面もあったかもしれない。

「ご自身が巻き込まれたことも相まって、美智子さまはSNSへの危機感をより強く持たれたのではないでしょうか。世界の王室では、日本よりも先にSNSを導入して広報に役立てていますが、SNSのさまざまな問題が顕在化しているいま、美智子さまは状況を注視されているはずです」(前出・宮内庁関係者)

誹謗中傷は「正当な批判」

 英王室のSNS導入は10年以上前に遡る。2007年にYouTube、2009年にX、翌年にFacebook、2013年にはインスタグラムを開設するなど、現在に至るまでSNSをフル活用。インスタグラムのフォロワー数は1311万人を誇るなど、一大コンテンツと化している。また、デンマーク王室は2009年、スペイン王室は2015年と、いずれも2010年代の開設だ。

「その歴史の長さも国民との関係もヨーロッパの王室とは比較にならないので、日本の皇室のSNS開設のタイミングも一概には比べられません。慎重だったのはやはり、炎上や誹謗中傷などのリスクとその対策を検討するのに時間がかかったからでしょう」(前出・皇室記者)

 実際に、SNSの投稿が原因で、王室が謝罪に追い込まれたこともある。3月に英王室が公開したキャサリン妃と子供たちの写真に対する不自然な加工が指摘され、キャサリン妃自身が「混乱を招いたことをおわびしたい」と謝罪に追い込まれる事態に発展した。

「日本でも同じようなことが起きる可能性は充分にあります。公式として発信する以上、情報は正確であることを心がけるべきです。宮内庁は現状、記者に向けた両陛下の側近の記者会見などの一部情報を依然として非公開としています。SNSを開設した以上、公にすべき情報は選別せずにすべて公開すべきではないでしょうか。いずれ、情報を隠蔽していると疑惑の目を向けられることになりかねません」(皇室関係者)

 また、SNSの依存性、特に若者に与える悪影響は世界中で問題視されている。いち早く対策を始めたのはアメリカの自治体だ。ニューヨーク市は2月、インスタグラム、Facebook、YouTubeほか、5つのSNSを運営するIT各社に対して損害賠償を求め、提訴した。

「アメリカでは、SNSを発端として若者がうつ病を患ったり、いじめや自傷行為、自殺などに至ったりする現状が社会問題として深刻に捉えられています。ニューヨーク市は、SNSの『いいね』や広告の仕組みが若者の依存度を高めて精神的に悪影響を及ぼしていると主張。SNSが関連するカウンセリングなどの対策に莫大な金額がかかっているとして、運営会社を提訴したそうです」(全国紙社会部記者)

 日本も対岸の火事ではない。厚労省が2018年に発表した調査によれば、「ネット依存」が疑われる中高生は国内で93万人に上るという。7人に1人の割合だ。しかもその調査はすでに5年以上前のものであり、事態は加速度的に悪化しているとみていい。

「特にXとインスタグラムで散見されますが、バイト先、飲食店、大学のサークルの宿泊先などでの問題行動をおもしろおかしく投稿して大問題になる事例は後を絶ちません。残念ながら日本は、ネットリテラシーが成熟しているとはお世辞にも言えない状況です」(前出・全国紙社会部記者)

 ネットリテラシーが低いのは若者だけの問題ではない。「弁護士ドットコム」が2022年に発表した調査によれば、誹謗中傷をした動機としていちばん多かったのは「正当な批判・論評だと思った」という理由だったという。

「今後、『いいね』欲しさに、宮内庁のインスタグラムで発信された画像を不適切に加工して公開する人や、インスタグラムの情報に対して“正当な批判”だとして誹謗中傷する人が出てこないとも限りません。現に、Xではこれまでに宮内庁によって公開された皇室の方々のご近影などを利用し、揚げ足を取ったり揶揄したりする投稿が散見されます。インスタグラムの投稿が悪用されないことを祈るばかりです」(前出・宮内庁関係者)

 そうしたSNSの功罪は、美智子さまも充分に認識されているはずだ。当然ながら、宮内庁のSNS開設は、両陛下をはじめ、皇族方にご説明をしているという。

「美智子さまは令和皇室において、両陛下の意思を尊重されています。SNSの開設自体には異を唱えられることもなかったはずです。インスタグラムは当面、両陛下のご活動を中心に発信して様子を見るようで、美智子さまはまだご登場されていません。懸念が払拭されない以上、SNSは拒絶されるのではないでしょうか。さまざまな情報を勘案して慎重に判断されるのが、美智子さまの心眼なのです」(前出・宮内庁関係者)

 運用は始まったばかり。令和皇室は難しい舵取りを迫られている。

※女性セブン2024年4月25日号

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