【宮内庁の公式インスタグラム】「フォローする・しない」が外交上のトラブルを生む可能性 “誹謗中傷”"いいね至上主義”のリスクも

宮内庁のインスタにはさまざまな影響が指摘されている(写真/宮内庁提供)

何事にも慎重な皇室が始めた「SNS」という新たな取り組みは、概ね国民に受け入れられているようだ。投稿にはフォロワーから数多くの「いいね」が送られる。だが、そういった国民の「正直な声」が、皇室の次代を担われる愛子さまと悠仁さまに重くのしかかる──。【前後編の前編。後編を読む】

【写真】日本サッカー協会から宮内庁に出向。宮内庁のSNSを担うAさんは学習院大学出身

 開設から約2週間でフォロワーが90万人を超え、順調な滑り出しを見せている宮内庁の公式インスタグラム。4月4日には、新任外国大使による「信任状捧呈式」の送迎の馬車列を一目見ようと、東京駅に多くの人が集まった。「インスタで馬車列の告知を見た」という人がほとんどで、早速インスタ効果が表れている。

 若い世代に身近なメディアでの情報発信は、皇室と国民とをより一層強く結びつけることになるだろう。だがこの新たな試みが、次代の皇室を担われる愛子さまと悠仁さまの間に、暗い影を落としつつある──。

 社会人になられて生活は一変、すでに懐かしささえ感じられたかもしれない。初夏のような陽気に恵まれた4月14日の午後、愛子さまは学習院大学(東京・豊島区)のキャンパスに足を運ばれた。レースがあしらわれたネイビーのブラウスにピンクのスカートという、週末の涼しげでカジュアルな装いで、現役の学習院生や卒業生向けのイベント「オール学習院の集い」に参加されたのだ。

 会場では真っ先に盲導犬の育成訓練や、視覚障害者の歩行・日常生活指導などを行う「アイメイト協会」のブースに向かわれた。

「引退した盲導犬3~4匹を、代わる代わるなでられていました。盲導犬と一緒に生活している人たちにも、丁寧に話しかけられていました」(学習院関係者)

 いままでであれば、そうしたプライベートのお出ましが国民の目に触れる機会はほとんどなかった。だが、今後SNSの運用が広がれば、愛子さまに限らず、天皇陛下や皇族方の普段の過ごされ方や自然な表情を見ることも増えるだろう。

「海外のロイヤルは、国民との距離を近づけるため、SNS発信に熱心です。中には、プライベートの自撮り写真などをアップしている王族もいます。宮内庁のインスタの内容は、天皇皇后両陛下のご活動の紹介から始めるとされていましたが、いまでは皇居のイベントなどの広報にも広がっているので、今後はよりバラエティーに富んだ写真が投稿されることでしょう」(皇室記者)

 運用するのは、昨年4月に宮内庁に設置された広報室。SNSなどPR戦略を担う広報推進専門官には、宮内庁外で広報業務を経験した人が登用されたという。

「民間のノウハウを用いることで、堅苦しくなりがちな皇室の情報発信に、より親しみを持たせたかったのでしょう。もともと全日空と日本サッカー協会で広報をやっていた人が2人、新たに加わったそうです」(前出・皇室記者)

 普通のホームページで情報発信するのとは違い、SNSには「フォロー」機能でネットワークを作ったり、「いいね」や「コメント」で交流したりという双方向性があるので、より情報が拡散しやすく、受け入れられやすいというメリットがある。ただ、その特徴があるからこそ、慎重に運用しないとトラブルに結びつく。4月16日現在、宮内庁のインスタアカウントは「オランダ王室」のみをフォローしている。

「宮内庁は、各国王室の公式アカウントからフォローされれば、そのアカウントをフォローし返す方針だそうです。ただ、王室アカウントと言ってもどこまでを範囲にするのかは判断が難しい。海外では王族が個人で運用しているアカウントもありますから。そうしたスタンスでフォローの相手を選んでいると、“王室のない国とのかかわりを軽視しているのか”とも思われてしまいかねません」(皇室ジャーナリスト)

 フォローひとつとってもSNSは簡単ではないのだ。

「最近では、メジャーリーガーの大谷翔平選手が、賭博解雇騒動後に、元通訳の水原一平氏のフォローを外したことが話題になりました。誰とつながっているのか、反対に誰とのつながりを解消したのかで、そのアカウントの持ち主の人間関係やスタンスが短絡的に伝わってしまうのは厄介なことです。実際の運用は宮内庁がしていても、“皇室の姿勢”として見なされるリスクがあります」(前出・皇室ジャーナリスト)

 SNSにはほかのユーザーからのコメントやダイレクトメッセージもつきものだ。

「誹謗中傷はすでに深刻な社会問題です。ですから、著名人などはコメントやダイレクトメッセージの機能をオフにしているケースが見受けられます。宮内庁のインスタも現状、受け付けない設定になっています。ただし、宮内庁のインスタには、一般ユーザーが『いいね』することができ、しかも、どの投稿がどれだけ『いいね』を集めたかの数字も表示される設定になっています」(前出・皇室記者)

 ここで考えなければならないのは、昨今の「いいね至上主義」のリスクだ。

「極端に言えば、SNSユーザーにとってはいいねの数が多い投稿ほど価値があり、いいねの少ないものは“価値がない”と捉えられがちです。そうして他人の目が気になるあまり、少しでも気を引いていいねを集めようと、無理をして投稿数を増やしたり、見栄を張ったり、果てはフェイクニュースを流したりと、SNSの泥沼にはまるのです」(ITジャーナリスト)

(後編へ続く)

※女性セブン2024年5月2日号

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