マイク・ソーシア〜祝・大谷獲得、エンゼルスを率いる完璧主義者〜MLB「この人を見よ」(4)

12/17 15:54 au Webポータル

 その日、私はいつものように遅く起きた。前の日に何をしていたかは忘れた。とにかく目が覚めてスマートフォンを見ると、大谷翔平がエンゼルスへの移籍を決めたというニュースを知った。なんでエンゼルスなんだ。そう思った。そしてまた眠りについた。
 もう一度目が覚めたとき、私は不安になった。果たして大谷翔平はエンゼルスのユニホームが似合うだろうか。松井秀喜がヤンキースからエンゼルスに移ったとき、そのユニホーム姿があまりにもひどかったのを思い出したのだ。大谷をよく知る稲葉篤紀さんも言っていた。「(大谷の)赤いユニホーム姿はあんまり似合わない」
 確かにそうかもしれない。でも、侍ジャパンのなかで唯一ブルックスブラザーズを着こなしていた大谷だ。アナハイムのユニホームだって似合ってくるだろう、そのうち。

エンゼルスを率いる完璧主義者

記者会見するエンゼルスのマイク・ソーシア監督=アナハイムのエンゼルスタジアム(共同) 写真:共同通信

 完璧主義者。18年間もエンゼルスの監督を務めているマイク・ソーシアをよく知る人物は、彼をそう表現した。そしてこう続ける。「ソーシアは、家に帰ると次の日にやることを全てノートに書いているんじゃないだろうか。ときどきそんな風に感じるよ」
 ソーシアの野球は、まさしくスモール・ベースボールだ。先の人物が表現したように、とても緻密な野球をする。ランナーが出ると、すかさず盗塁やエンドランを仕掛けるし、4点差からスクイズだってする。エンゼルスの試合を見ていると、頻繁にソーシアがキャッチャーにサインを出していることがわかる(そのおかげだろうか、エンゼルスのキャッチャーであるマーティン・マルドナードは、今シーズン初めてゴールドグラブを獲得した)。
 ソーシアは選手の起用法にも定評がある。エンゼルスのGMに言わせれば、ソーシアは「選手が成功できるようにマネジメントする素晴らしい」能力を持っている。あるいは、今シーズンまでヤンキースを率いていたジラルディーはソーシアについてこう語った。「彼はチームの能力を最大限に生かしている」

ソーシアの指令「ダチョウ祭りに行け」

 ソーシアは選手の能力を生かすためにユニークな方法を用いる。例えば、数学が苦手な選手に大学2年生レベルの代数のテストを課したり、恥ずかしがり屋の選手にNBAのチアリーダーのインタビューをさせたりするそうだ。
 ソーシアがエンゼルスを率いた最初の年である2000年には、チームの緊張をほぐすために2人の選手をダチョウ祭りに行かせた。ソーシアから何か面白いことをしろと言われたその選手は、ダチョウをチームのクラブハウスに持ち帰えることにした。もちろんチームは大騒ぎ。ダチョウを見慣れていなかったドミニカの選手は、叫びながらロッカーによじ登ったそうだ(ちなみにこの選手は投手だが、2000年の成績は8勝6敗、防御率は5.09だった。このダチョウ祭りの指令がその選手の能力を最大限に引き出したかは、よくわからない)。

エンゼルスの入団記者会見で、記念写真に納まる大谷翔平。左はソーシア監督、右はエプラーGM 写真:共同通信

 とにかく、大谷翔平はそんなマイク・ソーシアが長年率いるエンゼルスへ行くことを選んだ。アナハイムで大谷がファンに入団の挨拶をしたその日、ソーシアはこう誓った。「どのようにしたら翔平のような“二刀流”の才能が、私たちを優勝へと導いてくれるか。我々の仕事はその能力を十分に引き出すことです」

 ユニホームが似合うようになるか。それはさておき、大谷がエンゼルスに染まっていくのを楽しみにしよう。(棗 和貴)

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