ABEMAツアー“最後の賞金王”が見せた超低弾道ショット 実はアマチュアも覚えたい使い勝手の良いワザ

多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回は、ABEMAツアー最終戦「ディライトワークスJGTOファイナル」で優勝した山田大晟(やまだ・たいせい)です。

来季レギュラーツアー出場権を手にした山田大晟

 茨城県の取手国際ゴルフ倶楽部・東コースを舞台にABEMAツアー最終戦「ディライトワークス JGTO ファイナル」が行われました。ABEMAが男子下部ツアーの冠スポンサーとなって2018年からスタートしたABEMAツアーは今季がラストイヤー。最終戦の今大会が「ABEMAツアー」としての最後の試合になりました。

ABEMAツアー“最後の賞金王”かつ“最後の勝者”となった山田大晟 写真:JGTOimages

ABEMAツアー“最後の賞金王”かつ“最後の勝者”となった山田大晟 写真:JGTOimages

“ABEMAから世界へ”をキャッチコピーにしたこのツアーは、7年の間に久常涼選手や大西魁斗選手、桂川有人選手ら、世界を舞台に活躍する多くのプレーヤーを輩出。男子ツアー全体のレベルアップに貢献したのはもちろん、インターネット中継で選手たちの意識改革をするなど、男子ゴルフを大いに盛り上げました。

 そんなツアー最終戦を制したのは下部ツアー2年ぶりとなる2勝目を挙げた山田大晟選手です。大会前は賞金ランキング28位でしたが、360万円を加算して獲得賞金は525万9789円に。逆転で賞金ランクトップとなりました。この成績により山田選手は来季のレギュラーツアーへのフル出場権を手にしています。

 初日から首位を守り続けた山田選手は、最終日に4バーディー、ノーボギーの「66」をマーク。3日間でボギーは1つだけという安定したゴルフで通算18アンダーとし、2位に5打差をつけて優勝しました。

 2打差の首位からスタートした最終日は、8番、9番で連続バーディー。バックナインに入る頃には後続を大きく引き離しており、見ている側からすれば「優勝は確実だろう」という状況です。しかし、選手本人はプレッシャーを感じながら戦っていたでしょう。そんな山田選手のプレーで注目したのが「スイング始動」と「最終ホールのティーショット」です。

 山田選手のルーティンは終盤に入っても一定でした。アドレスに入った後、ターゲットを見ながらワッグルを入れ、視線をボールに戻すと同時にスイングを始動。アドレスして固まる瞬間がないため、プレッシャーを感じている状況下でもいつも通りのスイングがしやすくなります。このリズムを最後の最後まで崩さずに貫き通していたのが印象的です。

 もうひとつが最終ホールのティーショット。確実にフェアウェイをキープしたい山田選手は、クラブを半インチほど短く持ち、超低弾道のボールを打ちました。その高さは通常の半分以下でした。

確実にフェアウェイをキープする低い弾道の打ち方

 低い球は、左右に曲げたくないシチュエーションやプレッシャーがかかる場面で有効だし、風が強い場面や打ち下ろしの状況にも役立ちます。

 打ち方の注意点は上からクラブを入れすぎないこと。もともとスライスする傾向がある人が球を潰すイメージでスイングすると、カット軌道がキツくなって大きく右に曲がる恐れがあります。

 山田選手のように少しだけクラブを短く握ったら、ボールの位置をいつもより一個分、右にセットしましょう。そして、手元が体の正面から外れないように胸板をしっかり回してコンパクトにスイング。これでいつもより弾道が低くなります。まずは練習場などで試してみてください。低弾道ショットは大きな武器になりますよ。

山田 大晟(やまだ・たいせい)

1995年生まれ、東京都出身。高校時代の2011、12年に「関東高校選手権神奈川大会」で優勝。2017年にプロ転向し、22年のABEMAツアー「太平洋クラブチャレンジ」でプロ初勝利を挙げる。今季はレギュラーツアーに出場しながらABEMAツアーにも参戦。最終戦「ディライトワークスJGTOファイナル」で2位に5打差をつける通算18アンダーで優勝し、逆転でABEMAツアーの賞金ランキングトップに輝いた。相模原ゴルフクラブ所属。

【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

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