女子プロのアイアン事情に変化あり!? やさしい中空よりも曲げられる軟鉄鍛造アイアンの人気が上昇中
最近はシャープな軟鉄鍛造アイアンを使用する女子プロが増えてきているといいます。その理由についてゴルフフィールズユニオン・小倉勇人店長に話を聞きました。
最近の女子プロは「やさしさ」よりも「打感」重視!?
いま女子ツアーでは、「飛んでやさしいアイアン」よりも「シャープなフォージドアイアン」が人気。
ダンロップでは「ゼクシオ」系よりも「スリクソン」が主流。キャロウェイでは「APEX」よりも「Xフォージドスター」が、テーラーメイドでは「P770」よりも「P7CB」が、ブリヂストンでも「242CB+」よりも「241CB」のほうが使用者は多いそうです。
選手たちの多くは「打感のよさ」を大きな理由に上げていますが、もちろんこれはフィーリングだけでなく機能のバランスをとった結果のチョイスです。打感だけならマッスルバックのほうがいいはずですが、さすがにミスの寛容性を考えればそこまでは思い切れないでしょう。
そんななかでも、中空やポケットキャビティーのやさしさより軟鉄鍛造の打感を優先できる背景には、女子プロたちの間でも筋力トレーニングが一般化し、パワーのある選手が増えていることが要因の一つと考えられます。
しかし軟鉄鍛造アイアンが人気なのには、それだけではない理由もありそうです。千葉県八千代市のゴルフフィールズユニオン・小倉勇人店長に話を聞いたところ、ネックを曲げられることがとても大きいだろうといいます。
「私も直接女子プロから聞いたわけではないので推測ではありますが、ネックを曲げられないアイアンは競技には向きませんので、そこは大きな要因の一つだと思います。精度のあるアイアンショットを打つには、ライ角が自分に合っていることは絶対条件ですし、自分が求める距離を打つためにロフトの調整なども行うのが普通です」
「ステンレスのヘッドは、まったく曲げられないわけではないのですが軟鉄と比べると調整幅が狭く、そこを考慮すれば軟鉄鍛造であることは重要な要因だと思います」(小倉店長)
アマチュアにおいても、競技に出場するようなトップアマは、ほとんどが軟鉄鍛造のアイアンを使っています。それは打感や機能以上に、この「ライ・ロフトの調節が可能」というのが不可欠だからなのです。
試合会場で女子プロのアイアンをリサーチしたところ、それを裏付けるような話もありました。
キャロウェイでは「Xフォージドスター」のロフトを2度前後立てて使う選手が多く、ピンでは「ブループリントS」をやはり2度前後ロフトを寝かせて使う選手がいるというのです。
プロなのでライ角の調整は当然ですし、ピンはステンレスヘッドでもライ角調整を行うのが基本ですが、それを踏まえてもこういったロフトの調整までできるのは、軟鉄鍛造アイアンの大きなメリットの一つでしょう。
アイアンのロフトは「7番・31度」がちょうどいい?
ロフト調整はもちろん飛距離の微調整が最大の目的ですが、「Xフォージドスター」は立てる選手が多く、「ブループリントS」は寝かせる選手が多いというのは面白い点かもしれません。
「『Xフォージドスター』は7番アイアンのロフトが29度、『ブループリントS』は7番アイアンのロフトが33度です。前者を2度寝かせ、後者を2度立てるということは、どちらも7番アイアンで31度にしているということ。この『7番31度』というのは、女子プロたちにとって“ちょうどいい”ロフトといえるのでしょう」
「いま、『飛び系』と呼ばれるアイアンのロフトが7番で29度以下という感じ。それよりも少し多いぐらいが、女子プロにとって、適度に飛んでグリーンに球が止められる“ちょうどいい”ロフトなんだと思います。もちろん全員がそうではないでしょうが、これは一般男性にも当てはまる一つの目安と考えていいと思います」(小倉店長)
なおロフト調整にはもう一つの効果があります。それは構えたときの見た目とバンス角の変化です。
一般的に、アイアンのロフトを立てるとフェースプログレッション(FP)が小さくなってグースネックっぽくなり、バンス角は減ります。反対にロフトを寝かせるとFPが大きくなってストレートネック的になり、バンス角は増えます。
プロたちは、飛距離に加えてこういった点も考慮してロフト調整することで、自分好みのアイアンにアレンジしているのです。
「軟鉄鍛造は難しそう」と感じる人も多いようですが、ロフトやライ角の調整まで行って自分にピッタリマッチさせることで、単純なヘッド性能だけでは得られない本当の意味での「やさしさ」が得られるのが軟鉄鍛造アイアンなのです。
10/31 10:10
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