5番アイアンを使う女子プロが増加傾向ってホント!? 「5番復権」の理由とアマチュアでも「使える」条件とは?

「5番アイアン」といえば難しい番手の代名詞で、多くのアマチュアはバッグの中から外していると思います。しかし、最近は女子プロを中心に「5番復権」の兆しが見られるそうです。その理由についてゴルフフィールズユニオン店長・小倉勇人さんに聞きました。

ボールの進化が「5番復権」に寄与している

 販売されるアイアンセットの組み合わせが「6~P」が主流の時代、5番アイアンは「難しいクラブ」の代名詞的存在になり、バッグに入れている人も減ってきました。

 しかし近年の女子プロのクラブセッティングを見ると、5番アイアンを使っている選手が意外に多いことに驚かされます。これはどういうことなのでしょうか?

 かつてアイアンは「ドライビングアイアン」と呼ばれる1番アイアンから、2番、3番……そして9番アイアンまでそろっているクラブでした。

アマチュアでは使っている人が少なくなった「5番アイアン」だが、最近は復権の兆しがあるという

アマチュアでは使っている人が少なくなった「5番アイアン」だが、最近は復権の兆しがあるという

 当時からロングアイアンは球が上がりにくく、一般的なアマチュアにはなかなか使いこなせないクラブだったこともあり、ユーティリティーやショートウッドの普及によって「上」のアイアンは廃れていきました。

 それと同時にアイアンのストロングロフト化が進んでいったため、かつてはミドルアイアンに属した5番アイアンがロングアイアン的存在となり、3番や4番のロフトに近づいて「難しいクラブ」となっていきました。現在5番アイアンをバッグに入れる人が減っているのは、こういった背景があります。

 では最近の女子プロはなぜ5番アイアンを使う選手が増えているのでしょうか。

 竹田麗央選手や岩井明愛・千怜姉妹、小祝さくら選手、桑木志帆選手、櫻井心那選手のような飛ばし屋だけでなく、吉田優利選手や菅沼菜々選手、上田桃子選手、佐藤心結選手など、とくにパワーがあるタイプでない選手にも5番アイアンユーザーが多いのが印象的です。

 千葉県八千代市にあるゴルフフィールズユニオンの店長でクラブフィッターの小倉勇人さんにその理由を聞いてみました。

「最近の選手はトレーニングをしっかりやっていて見た目よりも筋力があるというのも一つの要因だろうとは思いますが、やはり道具の進化がカギだと思います。もちろんアイアン自体も中空モデルの進化などによって球が上がりやすくなっていますが、それ以上にボールが進化して高さを出しやすくなっているという点があると私は思っています」(小倉店長)

 これは、ボールが進化して全体的に高弾道が得やすくなっているという点に加え、ダンロップ「スリクソンZスター◆ダイヤモンド」やタイトリスト「プロV1xレフトダッシュ」など、プロモデルのなかに打ち出し角が高くなりやすいボールが登場しているという側面もあるといいます。

 ブリヂストンの新しい「ツアーB XS」も前モデルよりも球が上がりやすくなっており、桑木志帆選手もそこを考慮して「ツアーB X」から「ツアーB XS」にチェンジしたといいます。

 プロがアイアンよりもユーティリティーなどを選ぶのは、アイアンではグリーンに球を止める十分な高さが出せない場合です。クラブやボールの進化によってそこを補えるようになったことが、5番アイアン復権の要因ということになりそうです。

「ロフト多めでやさしいアイアン」が狙い目

 しかしユーティリティーで簡単に高さを出せるなら、わざわざ5番アイアンに戻さなくてもいいのではと思うかもしれません。ではアイアンのメリットは何かといえば、コントロール性にあります。

「ユーティリティーはよくも悪くも“やさしい”ので、ミスヒットに強く、シンプルに高く真っすぐ打つのには向いていますが、『ちょっとカットに入れてスピンを増やす』とか『数ヤードの距離の微調整』などといった細かなコントロールはしにくいクラブ。ヘッドが大きいので、ラフからの抜けもアイアンには及びません。そういったテクニックを駆使したい選手にとっては、高ささえ確保できるならアイアンに利点があるのです」(小倉店長)

 多くのアマチュアにとって、そういった繊細なコントロールは必要ないかもしれません。しかし「バッグに5番アイアンが入っている」「5番アイアンを使いこなしている」というのは魅力ですし、やっぱりカッコいい。

 ではアマチュアが5番アイアンをバッグに入れようとする際は、何に気をつければいいのでしょうか。小倉店長は「“やさしいアイアン”の5番が必ずしもやさしいとは限らない」といいます。

 やさしさをうたうアイアンの多くはストロングロフトなため、5番アイアンではロフトが立ちすぎていて球を上げにくいからです。

「基本的にはロフトが一番大事です。ドライバーのヘッドスピードが40メートル/秒前後の人なら、5番アイアンで25~26度くらいはほしいですね。これは7番アイアンが30~33度くらいのモデル。これはプロモデルのアイアンなどに多い設定なので、モデル名だけ見ると『難しくて使えなさそう』と感じるかもしれません」

「もちろんミスヒットへの寛容性は“やさしいモデル”には及びませんが、打ってみるとロフトがあるため意外に球が上がりやすいので、イメージほどではないんですよ」(小倉店長)

 その意味では、ロフトの条件を満たしたうえで、ヘッドが大きめでやさしいモデルを選べば、普通のアマチュアでも5番アイアンを使いこなせるということになります。

 具体的にはピンの「i230」やキャロウェイ「APERX PRO」、ミズノ「JPX925ホットメタルHL」などが当てはまるでしょう。

 また、しっかりバックスピンの入るウレタンカバーのプロボールを使うこと。前述の「スリクソンZスター◆ダイヤモンド」や「プロV1xレフトダッシュ」などの最新ボールを使うのもポイントかもしれません。

「やっぱりアイアンは5番から」と考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

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