「ナイスショットでホールインワン!」は海外では通じない!? よく使うゴルフ用語に“和製英語”が多いって本当?

ゴルフは海外で生まれたスポーツなので、競技中に使われる用語は英語が基本と考えている人も多いかもしれません。しかし、実はその多くが和製英語というのは、本当なのでしょうか。

「ショートホール」や「ミドルホール」も通じない

 現在のゴルフはイギリス・スコットランドで基本的な形態が確立したとされ、その後アメリカなどを経て日本に伝えられました。

あれもこれも“和製英語”って知ってましたか? 写真:PIXTA

あれもこれも“和製英語”って知ってましたか? 写真:PIXTA

 海外で生まれたスポーツであるため、競技中に使う用語は英語が基本のイメージがあるかもしれませんが、実は和製英語が多く使われています。

 では、海外で通じないゴルフ用語にはどのようなものがあるのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話します。

「ゴルフでは海外でも通じる英語に交じって、日本でしか通用しない和製英語が、意外にも多く使われています」

「たとえば、同伴者が素晴らしいショットをした際に発する『ナイスショット!』という掛け声がありますが、実はこれは和製英語であり、本場では“good shot”と呼んでいます」

「また、スイングやショットの理論に関する用語にも和製英語が多く存在し、スライスは“break to the right”、フックは“break to the left”といいます。そして、ダフるは『打ち損ねる』を意味する“duff”から来ているため英語が語源と思われそうですが、実際は“fat shot”というのが正しい英語です」

「ほかにも、日本ではヤーデージが短い順に『ショートホール』『ミドルホール』『ロングホール』と呼ぶことが多いですが、海外では単純に各ホールの規定打数に応じて『パー3』『パー4』『パー5』と分けています」

「一般的に、パー3は100ヤード台、パー4は300〜400ヤード台、パー5は500ヤード以上といった認識を持たれがちです。とはいえ、パー3でも200ヤードを超えていたり、パー4でも500ヤードほどあったりする場合も珍しくなく、国際的に見ればかなり独特な表現といえるでしょう」

 最近では、国内でも世界基準に合わせた表現に変わりつつあり、たとえばプロトーナメントの中継において、解説者が「ショートホール」「ミドルホール」「ロングホール」という名称を使う機会はほとんどなくなっているそうです。

 さらに、向かい風を意味する「アゲインスト」が“head wind”、反対に追い風を指す「フォロー」が“tail wind”、パー3を1打で入れる「ホールインワン」も“ace”と呼ぶのが、海外では一般的です。

 なお、パー5のホールを2打で上がることを「アルバトロス」といいますが、こちらは海外でも使われているため和製英語ではないものの、アメリカでは国章などさまざまな場面で鷲が多用されていることから、“double eagle”の方がポピュラーとされています。

本来のゴルフ用語は長ったらしい?

 では、どうして日本のゴルフには和製英語の用語が数多くあるのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「たとえば、各ホールの規定打数から2打引いたストロークでグリーンに乗せることを『パーオン』と言いますが、英語の場合は“green in regulation”といいます。また、コースの外側の区域を指す『OB』は、海外では略さずに”out of bounds”と呼ばれています」

「これらからも分かるように、和製英語のゴルフ用語は本来の用語よりも短く、端的に表現しているものが多いです。日本人は、“L”と“R”の発音を区別するのが苦手だったり、“know(知る)”の“k”や“write(書く)”の“w”など、はっきり発音しない文字に対してなじみが薄いためです」

「日本にゴルフが上陸して120年以上たちますが、当初は政財界のトップや各地の名士といったごく限られた上流階級の人々にしか浸透しませんでした。一般の人がゴルフをするようになった頃には、すでに独自の慣習が生まれていたと思われます。その一つが、和製英語のゴルフ用語なのでしょう」

 周りに迷惑が掛からないよう、キビキビとしたプレーを心がけるという意味の「プレーファスト」も、吉田茂元首相の右腕として活躍した白洲次郎氏が考案した造語で、本来の“please keep pace of play”を、もっと日本人でも分かりやすくするために作られたとされます。

 和製英語の用語以外にも、4人1組でのラウンドやハーフターンなど、海外では見られない独特の慣例や文化が日本のゴルフには根付いています。これらも「ガラケー」や「洋食」をはじめとした、日本人の肌感覚になじむようにアレンジされていったものの一つといえるかもしれません。

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