メジャー2位・山下美夢有の“スーパーショット前”の行動に注目! なぜティーアップし直したの?

多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回は、「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で2位タイに入った山下美夢有(やました・みゆう)です。

全米女子プロ最終日17番パー3のティーショット

「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」は、韓国出身のエイミー・ヤン選手のツアー6勝目、メジャー初勝利で幕を閉じました。日本勢は山下美夢有選手が2位タイ、西郷真央選手と渋野日向子選手が7位タイと、トップ10に3人が入る活躍を見せてくれました。

 今回は日本勢最上位の山下選手が見せた最終日17番パー3のスーパーショットについてお話ししたいと思います。17番はグリーン手前から右サイドにかけて大きな池があり、最終日のピンポジションは右手前。また、コース右サイドの木がせり出しているため、ドローボールが持ち球の山下選手にとっては構えづらいシチュエーションでした。

 山下選手はまず左右のティーマーカーを結んだライン近くの左端に立ち、足場を確認します。しかし、そこでティーアップはせず、1歩2歩と右側に歩いて真ん中のやや左サイドにティーアップ。ここで足場をチェックすると、ティーとボールを取り上げて再び場所を変えます。最終的に選んだのは、ティーマーカーを結んだラインよりも1歩下がった左サイドでした。

「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で2位タイに入った山下美夢有 写真:Getty Images

「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で2位タイに入った山下美夢有 写真:Getty Images

 この時点で通算3アンダーの3位タイ。単独首位のヤン選手は通算9アンダー、単独2位のコ・ジンヨン選手は通算4アンダーでした。残り2ホールで6打差あるヤン選手に追いつくのは難しい状況ですが、1打差のコ選手をとらえられる可能性は十分にあります。

 右ピンをデッドに狙うなら左端に立って対角線上に狙うのがセオリー。一方、安全にセンター狙いをするならティーイングエリアの真ん中付近に立つのがベターです。

 最終的に左サイドに立ってティーショットを打った山下選手のボールは、グリーン右横にキャリーしてピンに向かって転がり、あと一筋でホールインワンというスーパーショットになりました。結果、バーディーパットを決められずにこのホールはパー。しかし、最終ホールでバーディーを奪ってメジャーの自己最高2位タイでフィニッシュしています。

 山下選手は17番のティーショットについて、「ちゃんとセンター狙いすべきだった。割り切ってマネジメントするべきだった」と、実はミスだったと明かしています。ティーイングエリアの左端から真ん中に移動し、再び左端に戻ってティーアップするという動きは、山下選手の心情の変化を表していたのかもしれません。

見え方が気持ち悪い場所を避けてティーアップする

「山下選手ほどのプレーヤーなら、どこにティーアップしても狙った所に打てるのでは?」と思うかもしれませんが、ティーイングエリアからの景色やライの状況は、トッププロでもショットに大きな影響を与えるのです。

「景色を気にせず、いつもティーイングエリアの真ん中にティーアップしている」という人は、左端と右端に立ってみてください。たった数歩違うだけで、コースの景色が全く変わることに気付くはずです。見え方が気持ち悪い場所を避けてティーアップすると、ミスの確率を減らすことができます。

 また、いつでもティーマークを結んだラインのギリギリにティーアップするのもミスの元。足場がしっくりこない時は、今回の山下選手のように1歩下がってティーアップするとスムーズにスイングしやすくなるはずです。

山下 美夢有(やました・みゆう)

2001年生まれ、大阪府出身。22年は公式戦2勝を含む5勝を挙げて年間女王を獲得。23年も最終戦で大会連覇を達成するなどの活躍で2年連続の年間女王に輝いた。24年は「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で自身のメジャー最高位となる2位タイでフィニッシュした。ツアー通算11勝(公式戦3勝)。加賀電子所属。

石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

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