防災士が伝授する、感染予防・衛生管理&食料の備蓄リスト。重曹は洗剤代わりの万能品、歯ブラシも必要。カセットコンロとガスボンベも命綱に
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災害に見舞われた時、各自治体は、倒壊や浸水などの危険がなく、安全が確保できる場合は、自宅で過ごす「在宅避難」を推奨しています。防災士が伝授する、1週間に必要な備蓄品を確認し、準備しておきましょう(構成=村瀬素子 イラスト=草野かおる)
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感染予防・衛生管理
□ ウェットティッシュ
□ 消毒用アルコール
□ 塩素系漂白剤、重曹
□ 使い捨て手袋
〈あると便利なアイテム〉
□ 除菌消臭スプレー
□ ドライシャンプー
□ 介護用清拭シート
□ 歯磨きシート
水が使えない状況下では、ウイルスなどに感染しないよう、平常時以上に清潔を心がける必要があります。そのため、手指用の消毒用アルコールとウェットティッシュは必須アイテムです。
新型コロナウイルス感染症予防でも推奨された、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)も常備を。水で薄め、ドアノブや机などを拭けば除菌できます。
重曹は、石鹸や洗剤代わりに使える万能品です。自然由来の成分で、すすぎに多量の水を必要としないため、断水時の洗濯に役立ちます。また、入浴ができず髪が脂っぽい時には、重曹を溶かしたお湯を軍手にしみ込ませて頭皮をマッサージするとさっぱりしますよ。
体の汚れは、介護用の清拭シートがあれば利用しましょう。なければ、お湯で石鹸を溶かしたらタオルに染み込ませて体を拭き、別のタオルにすすぎ用のお湯を染み込ませて拭き取ります。こうすれば、少量の水で清潔に保つことが可能です。
また、水が貴重だからと口腔ケアを怠ると口の中に雑菌が繁殖し、誤嚥性肺炎を引き起こす危険も。
コップに少量の水を入れ、歯ブラシを濡らして歯磨きをし、口をすすぎます。歯ブラシについた汚れはまずウェットティッシュで拭き取り、最後に残りの水で軽くゆすげば節水に。
そのほか、できるだけ清潔なハンカチやガーゼを指に巻き付けて、歯の表面を磨き、少量の水でゆすぐ方法もあります。
断水時の在宅避難では、汚れを拭き取るなどの用途で、平常時以上に紙類が必要に。仮に南海トラフ地震が起き、製紙工場が集中する静岡県が被災した場合、紙の生産がストップする可能性もあります。
政府も1ヵ月分のトイレットペーパーの備蓄を推奨しているので、必要な紙類は買い置きし、使ったら補充するサイクルを作っておくといいですね。
置き場所が限られる場合は、5倍巻きタイプがおすすめです。買いに行く頻度も減りますし、コスパもいいですよ。
食料の備蓄
□ ガスボンベ…7本(1日1本)
□ キッチン用ポリ袋…1人100枚
□ 早茹でパスタ、そうめん
□ 米、小麦粉
□ 乾物(乾燥わかめ、切り干し大根、乾燥ひじきなど)
□ 缶詰、レトルト食品、インスタント食品、冷凍食品
□ 野菜ジュース
皆さんの家に、食材の買い置きはどのくらいあるでしょうか?米5kgは茶碗73杯分で、3人家族が毎食食べても1週間はもちます。また、パスタ1kgは10食分です。
食料に関して、乾パンなどの非常食を備蓄する必要は基本的にはないと考えます。それよりも、常に1週間分の食材が家にあるように、使ったら買い足す、ローリングストック方式を取り入れましょう。
その際、レトルト食品、冷凍食品、カップ麺、缶詰、乾物など、普段から食べている、賞味期限が長い食材と調味料を1つ余分に買っておくと安心です。冷蔵庫が空になったら買い物に行くという習慣は、防災の観点からはおすすめできません。
被災時は、まず冷蔵庫にあるものを使い、次に冷凍食品を使い切ってから日持ちのするものを消費していきます。野菜不足にならないよう、野菜ジュースや切り干し大根、乾燥ひじき、乾燥わかめなどの乾物を活用しましょう。
次に、電気やガスが使えない時に命綱となるのが、カセットコンロとガスボンベです。ガスボンベは1本で60分ほどしかもたないため、最低でも7本は必要。ガスを節約するために、早茹でタイプのパスタなど、手早く調理できる食材を選ぶことも大切です。
耐熱性が高いキッチン用ポリ袋(高密度ポリエチレン)は、食材を入れて茹でることができるため調理道具のひとつとして大活躍します。
その他
□ ガムテープ
□ 軍手
□ 現金
□ 常備薬
□ お薬手帳のコピー
非常時はかかりつけ医に診てもらえない可能性が高いため、ほかの医療機関や薬局で対応してもらうためにお薬手帳のコピーは必須。
このほか、ペットの餌、入れ歯洗浄液、老眼鏡、コンタクトレンズ、紙おむつ、灯油など、各家庭に必要なものがあるはずです。紙に書き出すなどして確認し、揃えておきましょう。
最後に、万全の備蓄をしていてもいざという時に必要なものが見つからなかったら意味がありません。家族全員で、置き場所を把握しておくことが大事です。また、3ヵ月に1回、避難を想定して生活してみましょう。
たとえば、電気、ガス、水道を使わず、カセットコンロと備蓄品だけを使って1食作る経験をしておくと、いざという時の心構えが違ってくるはず。日頃の備えと意識が、《その日》のために役立つのです。
08/22 12:30
婦人公論.jp