70代女性が経験した、たくさんの卒業。子ども3人のお弁当作り、義理の姉、認知症の姑…そして訪れた<夫からの卒業>
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子育てを終えた後
私の人生は、たくさんの「卒業」の上に成り立っている。
長かった子供3人のお弁当作りを卒業した。
最初は張り切っていたが、流石に3人目ともなると毎日嫌々作っていた。いずれも関東の大学に進学したので、子育ても同時に卒業出来た。
間もなくして義理の姉が死んだ。
小姑鬼千匹とはよく言ったものだ。随分と虐められたが、親戚づきあいから卒業してホッとした。
翌年、舅が他界した。
舅の仕事を手伝っていたので、多忙な仕事から卒業した。だから、給料とボーナスからも卒業した事になる。小さな会社を畳んだら、財産が少し残った。
やがて姑の言動がおかしくなった。
「盗まれた」とよく口走った。デイサービスに行き始めたが、1年後には施設に入った。私はついに、口喧しい姑の世話から卒業した。多分人生で一番嬉しかった卒業だと思う。
たくさんの卒業
広い家には夫と私が残った。
その頃定年退職をしていた夫は、毎日車で何処かへ出掛けていた。仕事を卒業した夫は特にする事も無く、ただただ車で徘徊し、ガソリン代と年金が同額だったりした。
しばらくして施設にいた姑が老衰で死んだ。
これで姑から正真正銘の卒業となった。40年もかかった。開放感いっぱいで、涙なんか出なかった。
と同時に、これで終わりでは無いと気づいた。
「この先もまだ私はずっと夫の世話をして行くのか」と絶望した。いったい私は、いつ自由になれるのか。もう夫からも卒業したかった。
三度の飯が黙って出て来ると疑わない夫。聴く耳を持たない夫。
しかし悪い事はできないものだ。結婚して46年目の夏に、夫の浮気が分かった。これを機会に、夫から卒業出来るかもしれない。
離婚を即決した。
夫は余りの展開の速さに驚いた様子だったが、周囲の噂話を恐れて町を出て行った。夫を恨む気持ちはサラサラ無い。私を自由にしてくれたのだから。
私は、住む場所も観る景色も違った人生を手に入れた。
多くの物から卒業して、念願だった初めての一人暮らしを謳歌している。
現在72歳になったが、楽しい日々を送っている。
そうそう、「墓じまい」をして墓からも卒業したのを追加しておく。
08/11 09:00
婦人公論.jp