「継ぐ人がいないお墓、どうすれば?」「夫婦両家の墓を一緒にできる?」専門家に聞くトラブルなく〈しまう〉方法

(イラスト:霧生さなえ)
墓じまいは、家族や親戚の理解に加え、お寺や霊園との話し合い、費用の問題などがあり、手間がかかるのも事実です。お墓に関する専門家の2人が、皆さんの素朴な疑問に答えつつスムーズに行うための方法や手順をお伝えします(構成=島田ゆかり イラスト=霧生さなえ)

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遺骨の「改葬先」は…

2よりつづく

Q. 自分亡き後、継ぐ人がいない。墓をどうすればいい?

日本は少子高齢化が加速しており、墓の承継者が減少する一方。実際、放置される墓も増えていて、社会問題になっています。

放置されたお墓の場合、管理者は縁故者をたどり、見つからなければ官報に掲出するなどして墓の使用者を特定しますが、無縁状態が確定すると「無縁墓」として墓じまいされ、遺骨は合葬されることに。

無縁墓になると管理者の手間がかかり、特に公営墓地だとこれらの費用は税金で賄われることになるので、墓を放置することはおすすめできません。

墓の承継者が自分で最後になる場合は、やはり墓じまいをして、先祖の遺骨は永代供養墓や合葬墓に納めるのがよいでしょう。あるいは今ある墓を「有期限」にしてもらい、管理料を前払いする方法もあります。現在、使用している墓にそのようなシステムがあるか、管理者に確認してみてください。

墓には「祭祀主宰者」といって、お墓や仏壇、位牌などの「祭祀財産」を承継する人を指し、お墓を管理する全権を持っています。それならば「墓をどうしようが独断してよいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、弔いはデリケートなもの。前の記事でお伝えしたとおり、自分の理屈だけでなく、親族の気持ちにも寄り添う丁寧な墓じまいを心がけたいものです。

もし、遠縁の方で「お墓を守ります」という方がいれば、墓地管理者の承諾が必要ですが、祭祀主宰者として遺言で指定しておくこともできます。

ただし、血縁のない他人に譲渡はできません。やむをえず生前に祭祀主宰者を変更したい場合は、必ず墓の管理者に連絡し、許可を得てください。

自身亡き後、葬儀や納骨を頼める親類縁者がいない場合は、弁護士などと死後事務委任契約を事前に結んでおくのがよいでしょう。

死亡直後の対応から葬儀、火葬、納骨、散骨、住居の整理、遺言執行などを行ってくれます(契約内容による)。その際、納骨先は決めて、支払いも済ませておくと安心です。
(吉川さん)


老後の「おひとりさま」は増加の一途をたどっています。人生の最期をどうするか悩む人も多く、最近は自治体でも「終活支援サービス」を行うところが増えてきました。

安否確認や葬儀、埋葬の履行確認など、自治体により内容は異なりますが、対応してくれるので一度確認してみるとよいでしょう。

しかし私は、「人に迷惑をかけない」ことにこだわらなくてもよいと考えています。墓も無理に整理しなくとも、流れに任せるという選択肢があってもいいのではないでしょうか。(小西さん)

Q. 夫婦ともに墓守り。両家の墓を一緒にできる?

夫婦それぞれの実家の墓が遠方にあり、管理やお墓参りが困難というケースは増えてきています。その場合、それぞれを改葬して、ひとつの墓石に「A家」「B家」など並列して名前を刻む「両家墓」を建てることが可能。

ただし、別の親族が一緒の墓に入るのですから、一般の墓じまい以上に親族の承認が重要になります。

また、両家の信仰が異なる場合は特に気を配る必要が。寺院墓地の場合でも、宗派が異なるというだけで納骨を拒まれることはありませんが、教義への理解や、場合によっては改派を求められることはあります。

両家墓にする場合は、宗派不問の民間霊園、公営墓地のほうが使い勝手がいいようです。

「自宅の庭に墓を建てられますか?」と聞かれることがありますが、それはできません。遺骨は墓以外の場所に埋蔵してはならないと法律で決められているからです。

ただし、遺骨を自宅に置いて手元供養をするのはOK。とはいえ、置いておけなくなった場合に遺骨の納め先が必要になります。自分たちの没後のことも想定しておくようにしましょう。(吉川さん)

Q. 子どもに迷惑をかけたくない。親がしておくことは?

永代供養墓や合葬墓を選ぶのが一般的ですが、最近は散骨を希望する人も増えています。遺骨をパウダー状にして、海などの自然に還すというものです。

厚生労働省は「散骨に関するガイドライン(散骨業者向け)」を策定しており、独自の条例をつくっている自治体もあります。ルールやマナーを守りながら散骨が行われているのです。

海洋散骨は会葬者が同乗しない合葬タイプ(代行型)のものから、クルーザーを貸し切りセレモニーを行うものまで、内容も値段もさまざま。陸地に散骨する場合、他人の私有地以外となるため、場所が限られています。希望する場合は専門業者に相談しましょう。

いずれにしても、生前に自身の希望を、子どもたちに伝えておくことが何より大切です。

とはいえ、祭祀主宰者となる子どもにも選択の自由があることを覚えておきましょう。両親の遺骨を散骨するのか、墓に納骨するのかは遺された者の自由。

「絶対にこうしてほしい」ではなく、死後のことは子どもに任せる柔軟さも必要です。(小西さん)

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