NBAデビュー迫る河村勇輝 福岡第一高の恩師が語る、現在地と課題

ダラス・マーベリックスとのオープン戦でコートに立つ、メンフィス・グリズリーズの河村勇輝=USAトゥデー・ロイター

■前編)福岡第一高・井手口孝監督インタビュー

 バスケットボール日本代表・河村勇輝(23)の米プロNBAデビューが、現実味を帯びてきた。下部GリーグのチームでプレーしながらNBAに最大50試合出場可能となる「ツーウェー契約」をメンフィス・グリズリーズと締結。日本人では4人目となるNBA選手誕生が迫る。170センチ以下だった小さな中学生の才能を見いだし、バスケット選手としての土台を作り上げた福岡第一高の井手口孝監督へのインタビュー前編では、河村の現在地や克服すべき課題について語ってもらった。

         ◇

 ――この秋に始まったばかりのNBA挑戦で、早くもツーウェー契約を勝ち取りました。

 「驚きました。今年は無理だろうな、下部リーグのGリーグだろうなと思っていたので。(オープン戦では)意外にやれてはいましたが、チームとして彼を受け入れていくかはまた違う問題です。

 特に初戦あたりは、河村がボールを長く持ちすぎて、周りがストレスを感じていると見ていた。それが影響してか、河村にボールを渡さないような時間帯もあった。そこから、ある程度はボールを預けてもらえる時間が増え、ゲームメイキングできる時間も増えてきた。そういう面では、少し認めてくれているのかなと思います」

 「それでも半信半疑でした。グリズリーズの先発ポイントガード(PG)、ジャ・モラント選手と比べるとレベルが違いすぎる。得点を量産するモラント選手と、河村ではプレーのタイプが違います。攻撃の組み立て役として、コーチが今後、河村を使ってくれることを祈りたいです」

 ――契約にこぎつけた河村選手本人は、どのような反応でしたか。

 「(日本時間20日午前)3時ごろにLINEが来ていて、『直接話したいことがあります』と。朝方に電話して、契約の報告をしてくれました。ツーウェー契約ですから、NBAに絶対出られるというわけでもないし、Gリーグだけの出場かもしれない。決して浮かれた様子はなく、非常に謙虚に、という感じでした。NBAのつらさとか、厳しさは十分わかっていると思う。『練習でボコボコにやられています』というLINEが届いたこともありました。全てが勉強になる。『修行に行く』と言って米国に渡りましたし、修行僧みたいなところがありますからね、彼は」

 ――ここまでは順調にNBAに溶け込んでいるように見えますが、心配事はありますか。

 「心配ですよ。Bリーグでやっている時は安心して見ていましたけど、よく考えたらNBAでやっているんですよね。3試合目、4試合目と見ていくと、Bリーグでやっていると錯覚を起こしますが、周りは全て外国人で、日本人は河村だけ。全員がNBA選手のなかでプレーしていると思うと恐ろしくなる。小さい体でプレーする彼のスタイルが気に入られなくなったら、ポイッと(解雇)されちゃうんじゃないかとかね。そういう老婆心ですね。ミスするなよ、ミスするなよ、と。悪い方で目立つなよ、という感じで、ハラハラドキドキしながら見守っています」

 ――リングへ向かうシュート機会は日本にいたころに比べて減っている気がします。

 「練習では結構ブロックされているんじゃないかな。オリンピックやワールドカップで戦った相手に比べて、またワンランク上というか、バスケットの質がもっと激しいような気もします。怖さなのか、攻めきるかどうかの加減がまだつかめていないのか。3点シュートだけではいけないし、パスをさばくだけでもダメ。時々はリングに向かうシュートも打たなければいけません」

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