日本プロ野球界が抱える異常な“投高打低”王貞治氏も指摘、“イチローの師”は「『飛ばないボール』のせいじゃない」!
日本のプロ野球に、不思議な現象が起きている。投打の個人成績だ。
2024年8月27日現在、両リーグの打撃全成績を見ると、セ・リーグで規定打席に達していて3割を超えている打者は.311のサンタナ(ヤクルト)と.302の宮崎敏郎(DeNA)の2人のみ。パ・リーグでは、近藤健介の.311の1人しかいない。
一方で投手成績はというと、夢のような成績の防御率1点台投手が、パ・リーグには1人、セ・リーグに至っては7人もいる状態だ。セ・リーグのトップである髙橋宏斗に至っては、なんと0.98。シーズン序盤ならともかく、全12球団が110試合以上、消化しているなかでのこの記録は、驚異というよりも異常である。まさに究極の”投高打低“状態になっているのだ。
プロ野球ファンの間では「飛ばないボール」「投手のレベルアップ」「広すぎるストライクゾーン」が理由としてあげられているが、プロはどう見ているのか。名球会会員であり、イチローの打撃の師匠でもある新井宏昌氏が解説する。
「じつは、2カ月ほど前にソフトバンクの王貞治会長にごあいさつする機会がありまして、そのあとに、打撃に関してお話をさせていただいたんです。そのとき、王会長は『最近は、力まかせにバットを振ろうとしている選手が多いね』と言われたんですね。私もそのとおりだと思っていました。
これは、高校時代からウエイトなどパワーアップのトレーニングを多くやっているからではないでしょうか。パワー自慢というか、そこが尊重されるような時代になっているように思うんですね。投手の力量が上がっているのに、打者は力まかせに打とうとするので、なかなか接点が合わない。そういうところから高アベレージをあげる打者が少なくなっているんじゃないかな、と思います」
また、選球眼にも問題があると指摘する。
「テレビを見ていても、たしかに投手が速くていい球を投げていることはわかります。でも、けっこう打つべき球を見逃していることが多い。そこで追い込まれて投手有利となって、いい結果が出ない。打者たちがパワーをつけようとすることが多くて、技術を磨くということが少しおろそかになってしまっているのかもしれません。
投手によっては、“打つべき球”と“手を出してはいけない球“がある。その部分を打者が考えているかといえば、そこまで考えている選手は少ない気がします。
たとえば、僕が村田兆治さんと対戦して、追い込まれたり、投手にカウントが有利になったりすると、決め球のフォークボールを投げられて、打者としてはもうお手上げ状態になってしまう。
だから、『まっすぐやスライダーのストライクは、初球から絶対に逃さない』と決めて、打席に入っていました。そうした球をファールにしてしまったのなら、もうこの打席は凡打や三振になっても仕方がない、という気持ちで打席に立っていましたから。そのくらいの気概で打席に入る打者がいるか、ということだと思います」
巷では「ボールが飛ばなくなった」と、よく言われているが……。
「いや、それは感じないですね。大きなホームランも見ますしね。なので、決してボールが飛ばないから数字が上がってこない、ということではありません。しっかり芯に当たれば、ボールは飛びますから。相手投手に対して“打つべき球”に集中するのではなくて『相手投手に力負けしたくない』という気持ちになっているんじゃないかと思います」
手に汗握るスリリングな投手戦もいいが、やはり力強い打球が飛びかう打撃戦も、ファンは期待している。
08/29 07:15
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