【Jリーグレンタル通信簿】期限付き移籍から復帰した注目の10人。武者修行でパワーアップ、2024年の活躍に注目の新戦力

【写真:Getty Images】

 明治安田生命Jリーグの2024シーズン開幕まで1か月以上あるが、すでに開幕に向けて始動しているクラブも多い。期限付き移籍から復帰した選手にとって、今季は勝負のシーズンとなるだろう。期限付き移籍から復帰した選手をピックアップして移籍先での成長を5段階(A~E)で評価する。

-----------------------------------------------------------------
MF:武田英寿(たけだ・ひでとし)
2024所属クラブ:浦和レッズ
2023期限付き移籍先:水戸ホーリーホック
2023リーグ戦成績:38試合2ゴール9アシスト
移籍先での成長:A

 青森山田では2年次に全国高校サッカー選手権大会を制覇し、翌年6月には浦和レッズへの加入内定が発表されている。背番号10をつけた3年次も青森山田を決勝に導いたが、浦和では十分な出場機会を得られたとは言い難い。リーグ戦8試合に出場した2年目の7月にFC琉球へ育成型期限付き移籍し、翌シーズンは大宮アルディージャへ籍を移している。

 浦和復帰のチャンスがつかめないまま迎えたプロ5年目の昨季、水戸ホーリーホックへの育成型期限付き移籍がキャリアの転機となる。開幕から右サイドで起用されていた武田英寿はポテンシャルを発揮できたとは言い難いパフォーマンスで、4月下旬あたりからは先発を外れる機会も増えたが、ボランチへポジションを変えたことでその評価が一変する。武田の左足から放たれる精度の高いキックが次々とチャンスを生み出し、リーグ3位の9アシストを記録している。

 ボランチ転向をきっかけに、武田は攻撃面だけでなく、強度の高い守備も含めた攻守でゲームを支配するパフォーマンスを見せた。ペア・マティアス・ヘグモ新監督の下で再出発する浦和で、成長した姿を見せることはできるだろうか。

<a href="https://www.footballchannel.jp/2024/01/11/post526812/" target="_blank" rel="noopener">【レンタル組通信簿】期限付き移籍から復帰した注目の10人 全選手紹介</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/2024/01/11/post526812/2/" target="_blank" rel="noopener">【レンタル組通信簿】期限付き移籍から復帰した注目の10人(2)</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/2024/01/11/post526812/3/" target="_blank" rel="noopener">【レンタル組通信簿】期限付き移籍から復帰した注目の10人(3)</a>

FW:宮城天(みやぎ・てん)
生年月日:2001年6月2日
2024所属クラブ:川崎フロンターレ
2023期限付き移籍先:V・ファーレン長崎→モンテディオ山形
2023リーグ戦成績:20試合6ゴール3アシスト
移籍先での成長:B

 三好康児、三笘薫、田中碧らそうそうたるメンバーが背負った川崎フロンターレU-18の背番号10を受け継いだ宮城天は、トップチームに昇格した2020シーズンにカターレ富山に期限付き移籍し、リーグ戦20試合3得点という数字を残した。翌年は川崎に復帰し、2シーズンでリーグ戦34試合に出場した。

 プロ4年目の昨季は再び他クラブへ活躍の場を求めた。V・ファーレン長崎では主に左サイドで起用され、リーグ戦13試合で3得点2アシストを記録。7月には長崎との期限付き移籍契約を解除してモンテディオ山形に期限付き移籍し、7試合で3得点と結果を残している。

 1対1での仕掛けを得意とするアタッカーで、左サイドからのクロスやカットインからのシュートでチャンスを生み出すことができる。高校2年次に左膝後十字靭帯を断裂し、昨年12月には左内側半月板損傷による手術を受けた。川崎に復帰する2024シーズンはリハビリからのスタートになるが、持ち前の切れ味鋭いプレーを等々力陸上競技場で披露することはできるのだろうか。

DF:イヨハ理ヘンリー(いよは・おさむ・へんりー)
生年月日:1998年6月23日
2024所属クラブ:サンフレッチェ広島
2023期限付き移籍先:京都サンガF.C.
2023リーグ戦成績:18試合0ゴール0アシスト
移籍先での成長:C

 サンフレッチェ広島ユース出身のイヨハ理ヘンリーはトップチームで活躍するチャンスを掴んだ。2017シーズンにトップチームに昇格するも、ルーキーイヤーに出場したのは天皇杯の1試合のみ。翌年始まった期限付き移籍という武者修行は、異例ともいえる6シーズンに及んだ。

 FC岐阜、鹿児島ユナイテッド、ロアッソ熊本、京都サンガと4つのクラブを渡り歩き、20、21シーズンはJ3でのプレーを経験した。中でも、熊本でプレーした22シーズンが転機に。リーグ戦38試合に出場してチームの昇格プレーオフ決定戦進出の立役者となり、翌年は熊本の昇格を阻んだ京都に籍を移した。

 イヨハは期限付き移籍していた6シーズンでJ1・18試合、J2・55試合、J3・36試合に出場し、Jリーグ通算100試合出場を達成した。イヨハが本職とする左センターバックには6季連続でリーグ戦30試合以上に出場する佐々木翔という重鎮が君臨するが、成長した姿をエディオンピースウイング広島で見せ、出場機会を掴むことはできるのだろうか。

DF:遠藤凌(えんどう・りょう)
生年月日:1998年7月6日
2024所属クラブ:アルビレックス新潟
2023期限付き移籍先:いわきFC
2023リーグ戦成績:36試合3ゴール1アシスト
移籍先での成長:B

 浦和レッズユースで伊藤敦樹と同期だった遠藤凌は、桐蔭横浜大学を経てアルビレックス新潟に加入した。しかし、1年目は公式戦2試合、2年目の2022シーズンはリーグ戦での出場機会がなく、同年6月に育成型期限付き移籍で当時J3のいわきFCへ加入した。

 遠藤は加入後まもなくセンターバックに据えられ、リーグ戦20試合に出場していわきのJ2昇格に貢献した。期間を延長していわきに残留した昨季も、J2で36試合に出場。1年半の武者修行でJ3、J2とカテゴリーを上げ、J1に残留した新潟復帰の切符を勝ち取った。

 渡邊泰基が横浜F・マリノスに完全移籍したことにより、新潟のセンターバックに遠藤の入り込む余地は十分にあるだろう。精度の高いフィードを武器とするセンターバックは、いわきFCで1対1に磨きをかけ、セットプレー時の得点源としての可能性も広げた。果たして、1年半の成長を新潟での飛躍につなげることはできるだろうか。

MF:鵜木郁哉(うのき・ふみや)
生年月日:2001年7月4日
2024所属クラブ:柏レイソル
2023期限付き移籍先:水戸ホーリーホック
2023リーグ戦成績:27試合5ゴール3アシスト
移籍先での成長:B

 小学5年生のときに柏レイソルU-12に加入し、2020シーズンにトップチーム昇格を果たした鵜木郁哉だったが、2年半でリーグ戦に出場したのは10試合。3年目の2022シーズンは出場機会を求める形で、シーズン途中に水戸ホーリーホックへ期限付き移籍していた。

 期間を延長する形で水戸に残留した昨季は、リーグ戦27試合に出場している。3月26日のヴァンフォーレ甲府戦ではウォーミングアップ中の負傷により先発を外れるというアクシデントもあったが、キャリアハイの成績を残した1年となった。特に後半戦はファイナルサードでの活躍が目立った。特に印象的だったのは9月9日のレノファ山口戦で、左サイドからのクロスを正確なトラップで収めてゴールネットを揺らし、鋭い切り返しから左足を振り抜いて再びゴールを奪った。

 山田康太と椎橋慧也が移籍したことにより、柏の中盤は昨季と顔ぶれや配置が変わるだろう。右サイドでのプレーを得意とする鵜木は、ポジション争いに割って入ることができるか。プロ5年目の今季は柏でのキャリアを左右する重要なシーズンになるかもしれない。

FW:根本凌(ねもと・りょう)
生年月日:2000年2月3日
2024所属クラブ:湘南ベルマーレ
2023期限付き移籍先:栃木SC
2023リーグ戦成績:31試合6ゴール2アシスト
移籍先での成長:B

 神奈川県茅ケ崎市出身の根本凌は、全国高校サッカー選手権大会で上田西高校をベスト4に導いた経歴を持つ。鹿屋体育大学に進み、地元でもある湘南ベルマーレに加入。正式に加入したのは2022シーズンだが、20シーズンから特別指定選手として湘南に在籍し、22年6月に栃木SCに期限付き移籍していた。

 シーズン途中での加入ながら22シーズンはJ2で5得点を挙げた。昨季は31試合に出場して6得点をマーク。夏場には3試合連続でゴールネットを揺らしたが、3戦連発となった8月26日の水戸ホーリーホックで右ひざを負傷。前十字靭帯断裂と診断されて手術を受け、保有元である湘南でリハビリを行っていた。

 フィジカルの強さを活かしたプレーが持ち味で、攻撃の起点になれるFWだ。裏への抜け出しやミドルレンジからの強烈なシュートも魅力で、多彩なフィニッシュパターンを持つ。2024シーズンは怪我からの復帰を目指すことになるが、サッカー日本代表としてFIFAワールドカップカタール2022にも出場した町野修斗、昨季13得点をマークした大橋祐紀を輩出した湘南で、根本はどのような活躍を見せるのだろうか。

GK:一森純(いちもり・じゅん)
生年月日:1991年7月2日
2024所属クラブ:ガンバ大阪
2023期限付き移籍先:横浜F・マリノス
2023リーグ戦成績:27試合31失点
移籍先での成長:A

 一森純の2023シーズンは、第3GKという立場から始まった。2022シーズンはリーグ戦9試合に出場したが、期限付き移籍から復帰した谷晃生に押し出される形で、今季の開幕節はベンチ外に。しかし、同日に横浜F・マリノスの正GKだった高丘陽平の完全移籍が発表されたことで、GKの補強が急務になったマリノスへの期限付き移籍がその3日後に発表された。

 ケヴィン・マスカット監督は一森を第3節で早速起用した。加入当初は味方との呼吸が合わずにピンチを招く場面もあったが、カバーリング力とキックの精度の高さはマリノスのスタイルに合致した。セーブ率はリーグトップの74.2%(出場11試合以上を対象)で、幾度となくマリノスのピンチを救っている。最終ラインに負傷者が続出する中で、最後まで優勝争いに留まり続けられたのは、一森の貢献が大きいだろう。

 大学卒業後にレノファ山口に加入した一森は、JFLからJ1の正GKに上り詰めた。32歳でキャリアハイのシーズンを過ごした一森は、36歳にしてガンバの正GKに君臨し続ける東口順昭の牙城を崩しにかかる。

MF:松井蓮之(まつい・れんじ)
生年月日:2000年2月27日
2024所属クラブ:川崎フロンターレ
2023期限付き移籍先:FC町田ゼルビア
2023リーグ戦成績:17試合1得点1アシスト
移籍先での成長:B

 矢板中央高校で全国高校サッカー選手権ベスト4に輝いた松井蓮之は、法政大学を経由して2022シーズンに川崎フロンターレに加入した。しかし、脇坂泰斗、橘田健人ら実力者が揃う中盤に割って入るのは容易ではない。昨年5月に育成型期限付き移籍でFC町田ゼルビアに加入するまでの1年強で、松井がプレーしたのは天皇杯の2試合だけだった。

 ボールを保持して主導権を握るチームから、強度の高い守備を求められるチームへ変わったことで、松井は輝く場所を手に入れた。豊富な運動量とボール奪取能力の高さが町田にマッチし、7月1日の大宮アルディージャ戦以降はコンスタントに先発に名を連ねている。

 大卒の松井にとって、プロ3年目の2024シーズンは勝負の年になるだろう。右サイドバックの山根視来、中盤のジョアン・シミッチが移籍したこともあり、松井にとっては居場所を確立する千載一遇のチャンスでもある。

MF:小原基樹(おはら・もとき)
生年月日:2000年3月9日
2024所属クラブ:サンフレッチェ広島
2023期限付き移籍先:水戸ホーリーホック
2023リーグ戦成績:40試合6ゴール4アシスト
移籍先での成長:B

 2021シーズンに東海大学在学中に特別指定選手として愛媛FCでJ2リーグ7試合に出場した小原基樹は、正式に加入した翌シーズンはJ3で30試合4得点6アシストという成績を残した。

 1年目のオフにはサンフレッチェ広島に完全移籍したが、広島でプレーすることなくそのままJ2の水戸ホーリーホックへ期限付き移籍。水戸では40試合に出場して6得点4アシストという数字を残し、24シーズンは広島に復帰することとなった。

 ドリブラーを多く輩出してきた聖和学園出身でもある小原の武器は、切れ味鋭いドリブル。フェイントを駆使して決めたホーム・栃木SC戦のゴールは小原の特徴が表れたシーンと言っていいだろう。左サイドでボールを持つと、マッチアップした相手の重心の逆を取る巧みなフェイントをかけて抜き去ってしまう。初挑戦となるJ1でその武器がどれだけ通用するか楽しみである。

GK:波多野豪(はたの・ごう)
生年月日:1998年5月25日
2024所属クラブ:FC東京
2023期限付き移籍先:V・ファーレン長崎
2023リーグ戦成績:42試合56失点
移籍先での成長:A

 波多野豪はFC東京のアカデミー出身で、年代別代表でもプレーしてきた。2016シーズンにFC東京U-23でJ3リーグデビューを果たし、翌シーズンにはトップチームに昇格する。その後はJ3を中心に出場を重ね、プロ4年目の2020シーズンにJ1でもデビューしている。

 21シーズンはリーグ戦31試合に出場するも、22シーズンはヤクブ・スウォビィクに正GKの座を奪われてしまう。昨季はV・ファーレン長崎への期限付き席でFC東京を離れるという決断を下す。波多野はJ2全42試合に出場し、リーグ3位の117セーブを記録。チームは惜しくも昇格プレーオフ進出を逃したが、昇格を争うライバルだったジェフユナイテッド千葉との最終節では波多野のパントキックがアシストとなり、勝利を手繰り寄せる3点目につながった。

 スウォビィクは23シーズン限りでFC東京を退団したが、シーズン終盤に正GKの座を掴んだ野澤大志ブランドンが波多野の競争相手になる。シーズンを通してゴールマウスを守り抜いたという経験を自信に、FC東京の正GK再奪取を目指す。

<a href="https://www.footballchannel.jp/2023/10/24/post518242/" target="_blank" rel="noopener">J1要チェック! J2で輝く若き逸材10人。Jリーグ“個人昇格”の候補者たちは…</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/jleague-transfer-2024/" target="_blank" rel="noopener">【一覧】Jリーグ移籍情報2024 新加入・昇格・退団・期限付き移籍・現役引退</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/2023/12/12/post523739/" target="_blank" rel="noopener">Jリーグ“最強”クラブは? パワーランキング。人気や育成、成績など各指標からJ1~J3全60クラブを順位化</a>

ジャンルで探す