佐々木朗希のメジャー挑戦「3つの懸念」を米誌が指摘…「速球の球速が低下した」…“令和の怪物”は2025年にどれだけ活躍できるのか?
千葉ロッテが佐々木朗希(23)のメジャー挑戦を認めたことでメジャーのフリーエージェント市場がヒートアップしている。すでにドジャースを最有力に様々な移籍先候補チームの名前があがっているが、懸念材料も少なくない。ロッテでの5年間に規定投球回数に届いたことが一度もなく、今季はストレートの平均球速が低下。米スポーツイラストレイテッド誌は「3つの懸念」を指摘した。佐々木は本当に2025年からメジャーで活躍できるのか。
中5日のメジャー風潮の追い風も
佐々木のメジャー挑戦を受けて全米では“ROKI狂騒曲”が起きている。ワールドシリーズでドジャースに完敗したものの来季の続投が決定したヤンキースのアーロン・ブーン監督は、11日(日本時間12日)の記者会見で「ユニークで特別な才能があり、ローテーションのトップとなる選手。彼の100マイル(約161キロ)の速球やフォークボールについてわかっている。ここ(メジャー)にやってきて圧倒的なエースとなることを思い描ける」と絶賛。
千葉ロッテで今季途中からプレーしたサイヤング賞投手の通算103勝左腕ダラス・カイケルも、ニューヨークポスト紙の電話取材に答えて、「彼はメジャーで活躍できる。できないことは何もない」と太鼓判を押した。
「60-80」の点数をつけて独自のスカウティングレポートを作成。投球術「70」、ストレート「70」以上、 変化球のベストはスプリッターで「65」から「70」、スライダーは「70」とし、それを今季ノーヒットノーランを達成したパドレスのディラン・シーズに重ねた。
佐々木は、2022年4月10日のオリックス戦で史上最年少の完全試合を達成し、この試合で13者連続奪三振の世界記録、1試合19奪三振の日本最多タイ記録を更新して、日米を巻き込んでセンセーショナルを起こしている。
だが、一方でロッテの5年間で規定投球回数に到達したことが一度もなかった。今季も10勝5敗、防御率2.35の数字は残したが、4度も登録を抹消され、「右上肢のコンディション不良」で6月13日から8月1日の西武戦で復帰するまで約1か月半にわたり戦列を離れ、18試合登板に留まった。不安を露呈している佐々木が、中4日、中5日の厳しいローテーを守ることを要求されるメジャーでどれだけの結果が残せるのかという疑念もある。
米スポーツイラストレイテッド誌は、佐々木の分析記事の中で「3つの懸念材料」を指摘した。
①過去 2 年間でストレートの速度が低下
②確立された耐久性がない
③速球の質のプロファイルは、NPBとMLBのボールの違いによって下向きに修正される場合がある。
⓵については速球の平均球速は2023年98.9 マイル(約159.2キロ)から2024年に96.9 マイル(約156キロ)に低下したことを示した。
シカゴのスポーツ専門局『Marquee Sports Network』のアナリストであるランス・ブロズドウスキー氏も、平均球速が2023年の99マイル(約159.3キロ)から97.1マイル(約156.3キロ)に下がったとレポートしている。ただ縦のボールの伸び幅は、17インチ(約43センチ)、横の動きも12インチ(約30.5センチ)もある。縦の伸び幅が17インチあり、平均96マイル(約154.5キロ)以上を今季マークしたのは、ナショナルズのマッケンジー・ゴア、パドレスのシーズら6人しかおらず、横の動きが12インチあったのはフィリーズのクロ―ザーのジェフ・ホフマン一人だけだった。
②については、前述したようにフル回転したシーズンが一度もないことだ。過去最多イニングは、2022年の129イニング1/3で、昨年は脇腹を痛め、15試合、91イニングに留まっている。
③についてはドジャースの山本由伸を例にあげた。山本はオリックス時代の昨年164イニングを投げて許した本塁打はわずか2本だったが、ドジャースに入団した今季は90イニングで7本塁打を許し、そのうち3本は、95.5マイル(153.7キロ)のフォーシームで、その被打率(.262)も平均以下だったという。
佐々木の懸念を指摘しているのはスポイラだけではない。
レッドソックスの専門メディア「オーバーザモンスター」も「怪我やストレートの速度低下が懸念される」と報じた。
「大きな怪我はしていないが1シーズンで130イニング以上を投げたことがない。2023年は、内腹斜筋の怪我と戦い91イニングに留まり、今季は111イニングを投げたが、チームが漠然と悪く“右腕の怪我”と呼んだもので欠場した」
では、佐々木はメジャーで2025年から活躍ができるのか。
前出のスポイラは「ローテーションのエースとして起用されるのか」の問いに「まだだ」とし「来季は150イニング以上は投げないはずだ」とした。
さらに想定される起用法についても突っ込んで分析。
「彼は中5日、あるいは中6日で登板するつもりだ。ドジャースに入団するとしても、すでに大谷、山本、タイラー・グラスノーの3人がローテーに控えている。(ドジャースだけでなく)多くのチームが6人ローテーを採用し、オフの日を使い5人ローテーを維持している。いわゆる『エキストラレスト(中5日)』は、すでに10年以上前からメジャー球界の標準となっていて、新型コロナが蔓延した2020年以降は急増している、中4日登板はもはや過去のものだ」
中5日登板が主流となっている球界トレンドからすれば、佐々木に過度な負担がかかる危惧はないという。
そして「彼が地球上で最高の投手の一人であるならば200イニングを投げるべきではないか」という問いについても「ノーだ。もはや野球界は先発投手に200イニングを投げることを求めていない」と断言した。
それには3つの理由があり、⓵怪我の危険因子である球速アップ②トレーニングと技術の進歩によるパワーリリーバーの供給増加③レギュラーシーズンの重要性が低下し、球団がポストシーズンを優先するようになっている傾向――と説明した。
ドジャースでは2018年まで規定投球回数を一人もクリアしていなかったことは、1シーズンしかなかったが、2023年、2024年と続けて162イニングを投げた投手は1人もいなかった。またメジャー全体を見ても2011年から2023年にかけて162イニングを投げた先発投手は半分以下に減少しているという。この球界トレンドは肉体に不安がある佐々木にとっては追い風だろう。
米スポーツサイト「ジ・アスレチック」も佐々木の2025年をこう予測している。
「4月の最初からエースのような投球をすることに疑いのない妥当性があるが、彼はMLBのルーキーとして扱われ、投球制限や長い間隔を取りながら、その負担も制限される可能性が高い。もし佐々木が健康状態を保てば、150イニングが2025年で妥当な見積もりとなるだろう」
メジャーは契約を締結する前にメディカルチェックを実施するのでそこで引っかかる可能性も危惧される。だが、「25歳ルール」の対象選手で、契約金は最大でも755万5500ドル(約11億6800万円)に抑えられるため、それらの懸念要素をすべてひっくるめても、将来的や潜在能力を考えれば、安い掘り出しモノだ。ポスティング申請の締め切りは12月15日。メジャー各球団に通知されてから45日間が交渉期間となっている。
11/13 06:37
RONSPO