「横浜DeNA“下剋上”真の立役者は阪神フロントだ」球界大御所が巨人と横浜DeNAのCSファイナルを大胆に振り返る

 第6戦までもつれこんだセ・リーグのクライマックスシリーズファイナルステージは横浜DeNAが巨人に3-2で逆転勝利を収めて2017年以来7年ぶり4度目の日本シリーズ進出を決めた。巨人OBで西武、ヤクルトで日本一監督にもなった広岡達朗氏(92)は「横浜DeNAの勢いの勝利」と評価したが「勢いをつけさせたのは岡田を辞めさせた阪神のフロントだ」と“球界大御所”ならでは忖度なしの分析をした。また横浜DeNAは22日、三浦大輔監督(50)の5年目の続投を発表した。

 エース東を欠いてのCS突破は異例

 悲願の日本シリーズ進出を決めた三浦監督の目には涙が浮かんでいた。
「いやもう選手たちは、体もいっぱいいっぱいのところをね。気力を振り絞って本当に一生懸命戦ってくれました」
 21日の東京ドームでの優勝インタビュー。
 3連勝したが2連敗で逆王手をかけられた。勝った方が日本シリーズ進出を決める勝負の第6戦も、初回に森のタイムリーエラー、4回に戸郷のスリーバントセーフティースクイズを決められるなど2点を先行される苦しい展開からの逆転勝利だった。
「ずっと厳しい戦いが続いている中できょうも最後の最後までチーム一体となって戦えたと思います。リーグ優勝したジャイアンツですから。そう簡単に勝たせてもらうことはできなかった。最後は気持ち一つのところで勝つことができた。もう一度ギアをあげてクライマックスを戦いながら選手は大きく成長したと思います」
 そして最後は、レフトスタンドのベイファンへこう絶叫した。
「これでもう一度、横浜スタジアムで試合ができますので、また熱いご声援よろしくお願いします」
 それは3日の阪神との本拠地最終戦でファンに誓った公約だった。
  “球界大御所”の広岡氏は横浜DeNAのCS突破を「勢いの勝利」と分析した。
「東というエースを怪我で欠いたチームが勝ち抜くのは異例と言っていいだろう。巨人には、ここで打ってくれと期待のできるような選手がいなかったが、横浜DeNAには、牧、佐野、オースティン、宮崎とそういう選手が4人も揃っていた。ファーストステージで阪神を破った勢いのまま巨人を飲み込んで3連勝した。2連敗をしたときは、またイージーミスやベンチの何を考えているかわからないようなチグハグな采配で巨人に8ゲーム差をつけられたレギュラーシーズンのベイスターズに戻ったと見ていた。第6戦も、森のミスから始まって、もう巨人のペースだと思っていたが、土壇場で集中力を見せた。このクライマックスシリーズの8試合の中でチームとして成長したのかもしれない」
 第6戦では、初回にタイムリーエラーをした森が、5回にそのミスを帳消しにするタイムリー三塁打、さらに代打フォードのタイムリーで同点に追いついた。延長12回で引き分けなら巨人が日本シリーズ進出を果たすところだったが、土壇場の9回に横浜DeNAがドラマを起こす。巨人の阿部監督が中3日でスペシャル投入した菅野の回跨ぎの2イニング目に先頭の森がライト前ヒットで出塁。バントで二塁へ進んだ後、桑原の三塁ゴロで三塁を奪う好走塁を見せて菅野―小林のバッテリーにプレッシャーをかけた。そして“恐怖の2番打者”で主将の牧がレフト前へ決勝のタイムリーを放った。
 CSファイナルステージは1-4で横浜DeNAが敗れた第4戦を除き、すべてが3点以内で決着するというロースコアのゲームになった。その中でも横浜DeNAは、4番のオースティンが、2本塁打を放ち、MVPに輝いた戸柱が、第4戦の同点本塁打を含む6試合連続ヒットをマークするなど打力で巨人を上回った。
 エースの東が阪神とのCSファーストステージの第1戦で走塁の際に左足を痛めて、ファイナルステージで登板できないという非常事態に陥った。しかし先陣を務めたジャクソン、ケイに加え、大貫、濵口が“年一”ピッチングを見せてカバーした。三浦監督は、4番の岡本を1回からでも申告敬遠するなど、次の5番打者にヒットがなかった巨人打線の弱点を突いた。牧や森が再三にわたってファインプレーで窮地を救うなど堅実な守りも光った。

 

 

 広岡氏は、その“勢い”を横浜DeNAに与えたのは、CSファーストステージで敗れたリーグ2位の阪神だと指摘した。
「横浜DeNAに勢いを与えたのは阪神だ。昨季リーグ優勝、日本一をチームにもたらして、今年も最後まで優勝争いをした、その采配力は12球団でも群を抜く岡田の退任がクライマックスシリーズが始まる前に表面化した。おまけに次の監督の藤川の名前まで出た。岡田が、自分から辞めるのなら、また話は別だが、やれ阪急だ、阪神だ、と球団の政治的な裏事情で退任することになっては、チームはバラバラになるし、岡田の持っている統率力も通じなくなる。甲子園で戦えてもそんなチームが勝てるわけがない。力が抜けているように感じたし、阪神らしい粘りが見られなかった。いったい阪神のフロントは何を考えているんだ」
 広岡氏は、横浜DeNAの“下剋上”の裏の“立役者”は“名将”岡田監督に続投要請をせず、CS前に今季限りの退任が表沙汰になることを防ぐこともできなかった阪神のフロントだと断罪した。
 少し無理のある3段論法ではあるが、横浜DeNAは、牙を抜かれたようになった阪神に、第1戦で10安打を浴びせて3-1で勝利すると、第2戦では、フォード、佐野の1発を含む、15安打の猛攻で10―3のワンサイドゲームで連勝して敵地の甲子園でCSファーストステージ突破を決めた。
 牧が2試合で打率.625、佐野が同.444と絶好調のまま東京ドームに乗り込んで、対照的に、試合間隔が空きゲーム勘が鈍って冷え込む巨人打線を尻目に3連勝。一気に王手をかけて、その後の連敗でヒヤヒヤしたものの7年ぶりの“下剋上”を完成させたのである。
 さて気になるのは26日から始まるソフトバンクとの日本シリーズである。ラミレス監督が率いた7年前も、ソフトバンクとの対戦で3連敗を喫した後に連勝したものの第5戦で力尽き、2勝4敗で日本一を逃した。今回も因縁のソフトバンクが相手。ただ7年前と違うのは本拠地の横浜スタジアムからスタートできる点がある。
 それでも広岡氏の見立ては厳しい。
「ソフトバンクには横浜DeNAでも巨人が出ていても歯が立たんよ。打線、先発、中継ぎ、すべてにおいてソフトバンクは整備されていて選手層も違う。鍛えられ方が違うと言ってもいいだろう」
 横浜DeNAは22日に来季の三浦監督の続投を発表した。
 三浦監督は球団を通じて「今シーズン、リーグ優勝を果たすことができず悔しい思いと同時に申し訳ない気持ちでいっぱいです。それでも続投要請をいただき来年こそはと気が引き締まる思いです。まだ戦いは続くので日本一に向けしっかり準備をしていきたいと思います」とのコメントを伝えている。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)

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