「今のところその選択肢(大谷翔平のプレーオフ登板)はない」ドジャースのフリードマン編成本部長が物議を醸しているリリーフで“二刀流復活”のウルトラCプランを完全否定

 ドジャースの大谷翔平(30)のプレーオフでのリリーフ登板が取り沙汰されている中で、球団トップのアンドリュー・フリードマン編成本部長(47)が「今のところその選択肢は考えていない」と否定した。地元紙の「オレンジカウンティレジスター」が報じたもの。フロントは近日中の大谷を交えて投手としての復帰問題について協議の場を持つが、それはプレーオフの登板の是非を決めるものではなく、リハビリの次のステップについての話し合いだという。

 ライブBP開始は10月か11月か

 歴史的偉業を御土産に本拠地に凱旋したヒーローが1回に打席に立つとドジャースのファンたちはスタンディングオベーションで出迎え祝福した。大谷は19日に敵地マイアミでのマーリンズ戦で、50、51盗塁、49、50、51号本塁打を1日でマークして、前人未到の「50―50」どころか「51―51」を達成した。そして続けて地元ファンの前でのロッキーズ戦で「52―52」をやってのけた。1点を追う5回二死二塁でフルカウントから見送ればボールの内角高めのストレートをバックスクリーンへ放り込んで52号。そして7回には全力疾走の内野安打で出塁すると52個目となる二盗を成功させたのである。

 
 歴史を更新し続けている大谷には、もうひとつのドリームプランが持ち上がっていた。12年連続の進出が決まったプレーオフでのリリーフ登板プランだ。
 大谷は昨年9月に右肘を手術。当初、今シーズンの投手としての復活は見送られる方針だったが、ブルペンでのリハビリで150キロを叩きだすほど回復が順調で、しかも、デイブ・ロバーツ監督が「どんな可能性に対してもドアを閉めない。もし状況が整い、必要性が生じ、試合展開や大谷の身体の状態などのすべての条件が揃ったらそれは素晴らしいこと」と発言したことからプレーオフでの登板の可能性が広く報じられた。
 大谷が昨年春のWBC決勝の米国戦で9回にリリーフ登板。当時のエンゼルスの同僚で4番のマイク・トラウトを三振に打ち取ったシーンにリーグチャンピオンシップ、あるいはワールドシリーズの重要な局面でのリリーフ登板が重ねられた。
 ファンの期待が高まる一方で怪我のリスクを懸念した「1年に及ぶリハビリを無駄にするのか」「そんな決断をする人間は解雇せよ」などの反対意見が一部メディアから出るなど物議を醸していた。大谷もプレーオフ登板の可能性を「わからない」と答えた。その中で重要な決定権を持つ球団トップのフリードマン編成部長が、地元紙「オレンジカウンティレジスター」紙の取材に答え「今のところその選択肢は考えていない」とプレーオフ登板プランを全面否定した。
「繰り返しになるが、これは彼にとって(通常の年の)1月のようなものです。彼はトミー・ジョン手術から1年も経っていない」
 リハビリが順調に進んだとしても実戦登板が可能になるのは来年1月だという。
 近日中に球団は、大谷と投手の復帰プランについて協議の場を設けるが、それはプレーオフ登板の是非を決めるものではなく、リハビリの次の段階となる打者に投げるライブBPを10月下旬に行うか、プレーオフ期間は打者に集中するために避けて11月にずらすかを決める話し合いで数か月前から予定されていたものだという。

「(大谷と球団の)会議は、彼が2025年に最高の状態でマウンドに立つためのリハビリをどのように進めるか。そして2024年に彼に最小限の負担をどうかけるかについてのものだ。なぜなら彼は10月に(打者として)重要な仕事をしているからだ。プレーオフの間は(ライブBPの予定を)中断して11月にずらしても十分な時間があるのか。それとも少し遅れて(来シーズンの初めに)取り組むのがいいのか。それが私たちが考えねばならない問題だ」
 フリードマン編成本部長は、そう断言した。
 オフの情報に詳しい専門サイト「トレード・ルーマーズ」によると、通常、トミー・ジョン手術後のリハビリには、14か月以上が必要なケースが多く、約12か月で実戦登板が可能になっている大谷のリハビリのペースは早いという。 
 また大谷は2018年10月に1度目のトミー・ジョン手術を行い、2019年は登板せず、短縮された2020年シーズンに2試合短い登板をしただけだった。今回は2度目の手術で「一般的に1回目よりも復帰は難しいため大谷とドジャースは慎重に行動するための特別なインセンティブを得るはずだ」と、この判断を支持した。
 球団は昨年オフに大谷と10年7億ドル(現レートで1007億円)の歴史的な大型契約を結んだ。それは2025年以降に二刀流として復帰することを見越してのもの。ここまで大谷は、6度のブルペン投球を行い、順調にリハビリを進めているが、たとえ1イニングであろうとも無理をして怪我をすれば元も子もない。ファンにとっては残念な結論かもしれないが、大谷の将来を考えれば懸命な判断だろう。

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