「最高のチャンスを与えないのは球団の職務怠慢だ」地元紙が大谷翔平のポストシーズンでのリリーフ起用“ウルトラC”を過激に提案…球団と監督は真っ向否定

 ドジャースの大谷翔平(30)が11日(日本時間12日)のカブス戦で「47本塁打&48盗塁」を達成し、チームの地区優勝マジックも「11」となったが、地元のロサンゼルスタイムズ紙が「ポストシーズンで大谷がリリーフ登板できないか?」との注目記事を掲載した。昨年9月に右肘を手術した大谷の今季登板がないことを球団は明かしているが、リハビリが順調に進んでいるため、迫るポストシーズンで「1イニングだけなら投げることができないか?」との提案だ。大谷のリリーフ登板と言えば昨年のWBC決勝での姿が印象的だが、球団、デーブ・ロバーツ監督(52)はウルトラCの実現の可能性に否定的だという。

 WBC決勝の米国戦でのトラウト斬りをイメージ

 まるで大谷を不可能などないスーパーマンとでも思っているのだろうか。地元メディアの関心は、大谷の「50‐50」達成と共にポストシーズンへの戦いへと移っている中で、まだリハビリ中の大谷のリリーフ起用プランというとんでもない提案が出てきた。ロサンゼルスタイムズ紙のコラムニスト、ビルプラシュケ氏が「大谷のプレーオフリリーフ登板はなぜダメなのか?」との見出しを取った記事を掲載したもの。
 同記事は、ドジャースが世界一となった2020年のレイズとのワールドシリーズを持ち出して「最も珍しいシナリオがチームを救った」と書き出した。
 レギュラーシーズンでは、リリーフ起用が一度もなかったフリオ・ウルアスが3勝2敗で迎えた第6戦に、8回途中からリリーフ起用されて「7つのアウトを取って」優勝に貢献したことを持ち出し「今年も同じようなシチュエーションになれば同じような行動をとる勇気を持つべきだ」と大谷のリリーフ登板を提言したのだ。
「それは起こり得る、いや起こるはずだ。ハリウッド映画で大谷であればどんなにカッコいいんだろう」
 同メディアは夢のシナリオを展開。
 ポストシーズンでのナ・リーグチャンピオンシップの相手はフィリーズと予想した上で、「第7戦の9回に彼らはフィリーズカイル・シュワーバー、トレア・ターナー、ブライス・ハーパーをなぎ倒すために誰かを必要としている.。なぜ大谷ではないのか?」と呼びかけ、ワールドシリーズの相手はヤンキースと予想。
「第7戦の9回に彼らはヤンキースのフアン・ソトとアーロン・ジャッジを見つめる誰かを必要としている。なぜ大谷ではないのか?」と空想を交えて、大谷のリリーフ起用を推した
 同記事はあらゆる方面からその可能性を探っている。
「ポストシーズンが始まる頃には、大谷は競争力のあるピッチングをする準備ができているはずだ。彼はすでにマウンドで投球を行っており、シーズンの最終週のどこかでドジャースの打者と対戦する予定だ」
 この記事は、前のめりに書いているが、実際は、大谷が初めて捕手を座らせて投球練習をしたのが8月31日(日本時間1日)でわずか10球。続いて9月4日(5日)にもブルペン入りして15球を投げ、最速は92マイル(約148キロ)をマークしてツーシームも投げたが、武器であるスイーパーはまだ投げておらず、とても実戦に投げれることのできる状態まで回復していない。
 それでも同記事は「先発として調整するには機会は十分ではないが、大きな問題がない限り肉体的には3つのアウトを記録できる状況で10月を迎えるべきだ」と主張した。大谷が、昨年3月のWBC決勝の米国戦でリリーフ登板し、最後にマイク・トラウトを三振に斬って優勝を決めたことを紹介。勝手に大谷の心情を「チャンピオンシップを勝ち取りたいと考えている彼は、それをするつもりだ」と想像しつつ「なぜ球団はそれを実行しないのか。最高の瞬間を最高のピッチャーの手に委ねたいと思わないか」と問いかけた。

 

 

「世界一になるチャンスがあるのに7億ドル(現レートで約994億円)を投資した選手をベンチに置いておくと本気で思うのか。チームとファン、そしてこの街にタイトルを獲得する最高のチャンスを与えないのは職務怠慢だ。大谷がいざというときに彼が投げる意思がある場合にそれを認めないのは単純に間違っている」と今季の投手復帰に否定的な球団の姿勢を批判までした。
 実際、11日(日本時間12日)にロバーツ監督はそのプランの実現の可能性が薄いことを明かしたという。
「まさかとは言わないが…100%ドア(可能性)を閉めるつもりはない。もし私が映画の脚本を書いたり、本を書いたりしていたら彼がリハビリを終えて最後の1球を投げるのは当然のことだろう。それはクール(カッコいい)だが難しいことだ。問題は、彼が1年以上実戦を行っていないこと。もし彼が(リリーフで)出てきて、うまくいかなかったとしても、怪我をするリスクに見合うものではない。あの1イニングのストレスを再現することはできない。その価値はないと思う」
 ロバーツ監督の発言は正論だった。
 また同紙は、アンドリュー・フリードマン社長にも取材していて「このテーマは、私たちにとって頭の片隅にはほど遠いものです。彼はまだリハビリの進行過程にあります」とコメントしたという。
 その上で同紙はこう説明を加えた。
「打撃と投球の両方の能力に基づいて価値の決まるレコード契約があと9年残っており、ドジャースは3つのアウトのために彼の投手キャリアを終わらせる可能性のある怪我のリスクに躊躇している。大谷が昨年9月に2度目の肘の手術を受けたとき、2025年まで登板できないと発表され、ドジャースはそのスケジュールを突然変更することに警戒心を抱いている。特に大谷の高圧的な代理人であるネズ・バレロを悩ませることになるからだ」
 7億ドルも投資したドジャースが大谷の怪我の再発に細心の注意を払うのは経営上当然のこと。それでも同紙はその姿勢に批判的だ。
「ウォーミングアップに必要なのは1イニングだけで、マウンドに立つのは、3アウトだけであるにもかかわらず、ドジャースはルーティンの突然の変更が、彼のMVPレベルの打撃に影響を与えることを懸念している」
 同紙は「大谷翔平は何もできる」との結論で提言を結んでいる。「大谷が何でもできる」ことは否定しないが、今季はDHとしてMVPの最有力候補となる活躍を見せているのだから、それ以上を求める必要はないだろう。大谷のリリーフ起用のドリームは来年のワールドシリーズで実現すればいい。

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