「老練な岡田と1年目の阿部。最後は監督力の違いが出る」巨人超大物OBがセのV争い“ GTデッドヒート”の行方を占う

 大混戦のセ・リーグは首位の巨人と2ゲーム差で追う阪神のデッドヒートの模様になってきた。巨人の大物OBでヤクルト、西武で日本一監督となった広岡達朗氏にとって阿部慎之助監督(45)が率いる巨人は最も気になる古巣で、阪神の岡田彰布監督(66)は早大の後輩。「最後は老練な岡田と、1年目の阿部の監督力の違いが出る」と優勝の行方を占った。両チームは22、23日に甲子園で直接対決する。

 岡田監督は、選手を叱り、なだめ…したたかに打線を整備した

 

 大混戦のセ・リーグは広島が6連敗するなど失速して自力Vの可能性が消え、首位の巨人と2ゲーム差で追う阪神の一騎打ちで決着がつきそうな流れになってきた。巨人が残り12試合で阪神が10試合。
 もちろん広島にも、残り試合を16試合も残していて打線に破壊力がある横浜DeNAにも大逆転の可能性は残っているが、巨人OBで球界大御所の広岡氏は「心配していたように広島は息切れした。そもそも戦力不足。横浜DeNAはオースティンが好調で打線は一番破壊力があるが、どうみても先発の駒が足りない。優勝争いは巨人と阪神の2チームに絞られただろう」と見ている。
 9月1日の段階で巨人と阪神には5ゲーム差があった。巨人はマジック点灯のカウントダウンに入っていたしかし、勝負の9月の戦いで阪神が、ここまで10勝3敗と怒涛の追い上げを見せて、8勝5敗の巨人の背中を射程圏内にとらえた。
「普通は5ゲーム差もあれば、そのまま上のチームの巨人が優勝まで突っ走るものだ。だが、阪神が追い上げてきた。私は反対だったが、岡田は打線の調子が上がらずに苦戦していた頃に佐藤、大山、森下を2軍に落とすなどして、怒ったり、なだめたりしながら、この大事な9月にしっかりと課題だった打線を整備してきた。選手も岡田についてきた。6番打者以外は、ほぼ固定。昨年優勝したチームと同じ状態に戻した。中野がまだ信用おけないが、近本、中野の1、2番が機能して、森下、大山、佐藤とクリーンナップにもつなぎが出てきた。投手も疲弊する時期だが、先発は頭数が揃っているので余裕があり、中継ぎもうまく回している。勢いは阪神にある。巨人を潰して優勝するんだという気概を感じる」
 広岡氏は9月の阪神の戦いを高く評価した。
 9月のチーム打率は.297でリーグトップ。9月に入って3番の森下が打率.360、4本塁打、11打点、4番の大山が打率.353、7打点、5番の佐藤が打率.271、3本塁打、11打点と絶好調で、8月に月間39安打で月間MVPを獲得した近本も好調をキープしている。
 また投手陣も9月のチーム防御率はリーグトップの1.74だ。10勝のうち9勝は先発に勝ち星がつき、エースの才木を軸に、高橋(2勝)、ビーズリー(2勝)、大竹(2勝)、村上、西勇、青柳と7人も駒が揃い、中継ぎを見れば、石井、桐敷、岩崎の3人が防御率0.00である。

 

 一方の首位の巨人はどうか。
 広岡氏は、就任1年目の阿部監督の手腕を評価している。
「キャッチャー出身の監督は理想だ。阿部はよく勉強している。ドタバタしたところも見られず、我慢の采配ができている。菅野とコミュニケーションを密にとり、彼を復活させ投手リーダーに据えたのも阿部の功績だと思う。だが、私が気に入らないのは守備位置や打順を固定しないことだ。大城に一塁を守らせてミスばかりで菅野の足を引っ張った。坂本にしても6億円も年俸をもらっている選手を休ませる必要などどこにあるか。ヘルナンデスが怪我で欠いたことも痛い。おかげで浅野は出てきたが。また投手陣も、先発にメンデスなんかを使い、戸郷、菅野を中4日で回さねばならないことが余裕の無さの象徴。中継ぎでもバルドナードなんていうのは信用がおけない」
 広岡氏が指摘したのは15日の中日戦だ。体調不良の坂本をベンチ外にしたため、岡本を三塁、大城を一塁で起用したが、守備でミスを連発して、中4日でマウンドに上がっていた菅野をいらだたせた。ゲームには勝ったが、隙を見せたゲームだった。
 また先発の3本柱の1人である山崎伊が13日のヤクルト戦で3回持たずにKO。翌日に登録抹消されたのも優勝へラストスパートをかける点でもマイナス材料だろう。中継ぎではケラー、高梨、平内が9月の防御率が0.00で、大勢へつなぐセットアッパーを整備しているが、阪神のような鉄壁の勝利方程式とは言えない状況だ。
 広岡氏の結論は「最後の直接対決ですべてが決まるだろうが、このままのゲーム差で阪神が巨人戦を迎えることができれば逆転優勝の可能性が高い」というものだった。
「こういう戦いになると監督力の差が大きく影響する。したたかで老練な岡田、1年目で監督としての経験に欠く阿部との差が出るだろう。本来は、こういうペナントレースの展開になったときの巨人は負けなかった。それが伝統の力で、勝つ味を知っているチームの強さなのだが、巨人は2020年を最後にリーグ優勝から遠ざかっていて勝つ味を忘れている。一方の阪神には昨年優勝を経験したという成功体験がある。巨人OBとしては巨人に優勝してもらいたいのが本音だが、今年のペナントレースは、その差が出る」
 それがヤクルト、西武で計3度日本一を手にしている名将の答え。巨人は今日18日から6連戦。東京ドームで横浜DeNAと2連戦、マツダで広島と2連戦、そして22日から甲子園で阪神と頂上決戦を戦う。一方の阪神は、日程が飛び飛びで、今日18日はバンテリンドームで中日と、20、21日に横浜スタジアムで横浜DeNAと戦い、移動日なしで22、23日の巨人戦を迎える。今日の中日の先発は防御率1.14、12勝3敗の高橋宏。一方の阪神は昨季のMVP男の村上を立てるが、巨人戦を前に試練の一番となる。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)

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