「彼を語るまでもない。ド軍には正しく我々には間違った打者」大谷翔平に「40-40」を決める歴史的なサヨナラ満塁弾を浴びたレイズの左腕は何を語ったか

 ドジャースの大谷翔平(30)が23日(日本時間24日)、ドジャースタジアムで行われたレイズ戦で3-3で迎えた9回二死に劇的なサヨナラ満塁本塁打を放ち「40本塁打―40盗塁」を達成した。大谷は4回に40盗塁目を決めて記録にリーチをかけると、9回にキャリア初となるサヨナラ満塁弾で、2023年のロナルド・アクーニャJr.以来となるメジャー史上6人目となる偉業を達成した。残り33試合。次の目標は前人未踏の「50-50」だ。

 「ドジャースに来てから今のところ一番の思い出になった」

 すでに4万5000人の観客は立ち上がっていた。
 3-3で迎えた9回二死満塁。絶好のサヨナラの場面で「1番・DH」の大谷に打撃が回ってきた。レイズの左腕コリン・ポシェが投じた初球の84.3マイル(約135.7キロ)のスライダー。大谷は臆せずスイングを仕掛けた。舞い上がった打球は、右中間のギリギリ最前列へ。レイズのセンターのホセ・シリは、ジャンプしてその場でひっくり返った。
 まるで映画のワンシーンのような劇的なサヨナラ満塁弾。しかもメジャー史上6人目となる「40-40」を決めるメモリアル弾である。
 だが、大谷は「打席では本当に何も考えずに勝ちたいな、一本打ちたいなとと。ホームに来てから(記録に)気づいた」という。
 大谷は右手の人差し指を突きだして、ゆっくりと一塁ベースを回り、三塁ベースを回った時にヘルメットを放り投げた。全員の祝福を受けてホーム付近で輪を作ってピョンピョン飛び跳ねた。
 すぐさまフィールド上で、地元放送局「スポーツネットLA」の有名な美人リポーター、キアステン・ワトソンさんのインタビューを受けたが、なんと後ろからテオスカー・ヘルナンデスが大きなバケツごとウォーターシャワーを大谷、ワトソンさん、通訳のアイアトンの3人に浴びせかけたのだ。巻きぞいを食い、びしょ濡れとなったワトソンさんは、それでもプロ魂を発揮。すぐインタビューを敢行した。
「うれしい。何よりも勝てた、最後に打てたのがドジャースに来てから今のところ一番の思い出になった」
 大谷の興奮のコメントを引き出し、「40-40」についても質問し、大谷は「それ自体が目的になるということよりか、勝つための手段として、一つそういう記録が作れたのは大きなことかなと思う」と答えた。
 4回に先頭打者として、ショートへの内野安打で出塁した大谷は一死からフレディ・フリーマンの初球に日本人選手としてイチロー以来となる40個目の盗塁に成功。「40-40」に王手をかけていた。
 過去に1988年のホセ・カンセコ、1996年のバリー・ボンズ、1998年のアレックス・ロドリゲス、2006年のアルフォンゾ・ソリアーノ、2023年のロナルド・アクーニャJr.の5人が成し遂げているが、出場126試合目にしての達成は、ソリアーノの147試合目を抜き、史上最速記録となった。
 カンセコは自らのXにサヨナラ満塁ホームランの動画映像と共に「40/40クラブに加わるショウヘイ・オオタニへ。おめでとう」という祝福コメントを寄せた。
 米メディアも大谷一色。USAトゥデイ紙は、「大谷が壮大な満塁サヨナラ弾で特別な40-40の仲間入り」との見出しを取り「ドラマを作る才能を常に持ってきた大谷が、金曜の夜にドジャースの歴史に永遠に刻まれる、まるでハリウッドの台本のようなものを作り上げた」1つへと作り上げた」と称えた。
 同紙によると、デーブ・ロバーツ監督は「40-40をサヨナラ満塁本塁打で達成した。試合の台本を書くことはできないと、常に言ってきたが、もし台本があるのだとすれば、これ以上のものを書くことはできなかったかもしれない。ショウヘイは驚嘆させることを決して止めようとしない」と賞賛した。

 

 そして劇的な形での記録達成をお膳立てしまった今季16ホールド2セーブのポシェは、もう悔しさを通り越していた。MLB公式サイトによると、試合後、こうコメントを残している。
「満塁の場面で巡ってくる打者として(大谷は)ドジャースにとっては正しく、我々にとっては間違っていた選手だった。彼がどのようなタイプの選手かを語るまでもない。彼は決定的瞬間を勝ち取ったんだ」
 逃げられない場面で大谷に回ってきたことが不幸だったのだ。
 なぜ大谷は「40-40」を達成できたのか。
 ロバーツ監督は「きっと40-40は春季キャンプから彼のレーダー(目標)にあったものだと思う。彼は、常に野球のプレーにおいて最高の選手になりたいと考えていて、このようなことを成し遂げていくことが、確かなその主張になってくる」とモチベーションを理由にあげた。
 ロサンゼルスタイムズ紙は、昨年9月の右肘手術により、打者に専念できていることを理由のひとつに挙げた。
「エンゼルスでの2021年と2023年にMVPを獲得した大谷は40本塁打以上を放っているが、一方で投球のために体を守る上でエネルギー消費を抑えようと走塁にある程度の制限を設けていた。今季まで彼は26盗塁以上をしたことがなかった。しかし2025年まではマウンドに戻らないと見込まれる中で(走塁制限は解除され)40-40へ向けた動きが今年の焦点となっていた」
 ファンの注目は過去に誰一人達成したことのない「50-50」への挑戦だ。残り33試合。過去に「40-40」を達成した5人の打者で最多本塁打はソリアーノの46本塁打だったという。ロバーツ監督は、その可能性に触れ、こう語っている。
「彼が勝利のためにプレーを続け、いい打席を持ち、相手が彼に与えるなら四球を得られるように願っている。しかし、もし相手が彼にストライクを投げるのであれば、ショウヘイにとって何でも可能となる」
 勝負さえしてくれれば可能だとの予測だ。
 ロサンゼルスタイムズ紙は、「大谷はMVPの圧倒的な有力候補としてシーズン終盤に入り、さらに前例のない歴史を作ろうとしている。彼は、MLB史上初めての45-45を達成しそうだ。もし最後の1か月で調子を上げれば、50-50も問題にならないかもしれない」と予想している。
 だが、大谷自身の目標はそこにはない。
「ポストシーズンに進出して、ワールドシリーズに勝つことが一番の目標。自分の数字は後からついてくればいい」
 それが野球人大谷の理想形。両方の偉業をやり遂げてしまいそうだ。

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