「ショウヘイは盗塁の価値を理解している」大谷翔平の歴史的「43-43」達成の裏にある盗塁数の増加理由をロバーツ監督が分析

 ドジャースの大谷翔平投手(30)が30日(日本時間31日)、敵地でのダイヤモンドバックス戦に「1番・DH」で先発出場し、死球で出塁した2回に43個目の盗塁を決めると、8回の第5打席で2試合ぶりの43号ソロを逆方向のレフトスタンドに叩き込みメジャー史上初の「43ー43」を達成した。残り27試合。「50―50」の可能性も見えてきた。なおゲームは10―9でドジャースが競り勝った。

 盗塁数が過去最多26個から43個に増加

 記念すべき「43―43」達成へ先に盗塁で王手をかけた。2回にリハビリ中の右肘に死球を受けて出塁すると、苦痛に顔をしかめながらも、一死一、三塁から盗塁に成功した。変化球のカウントでスタートを切ったため、捕手が投球を弾き、スローイングできなかった。
 そしてメジャー史に残る偉大なる記録を達成したのは8回だった。二死走者なしで打席に入った大谷は、4番手の右腕ポール・シーウォルドに、ポンポンとストレートでカウント0―2と追い込まれたが、93マイル(約149キロ)のシュート回転で甘く入ってきた3球目のストレートを見逃さなかった。しっかりと引きつけ、逆方向に32度の角度で舞い上げた打球は、レフト最前列に着弾した。データが示した飛距離は380フィート(約115.8メートル)。大谷は右手を突き出してダイヤモンドを一周。ベンチ前でひまわりの種のシャワーで祝福を受けた。
「40-40」は、ホセ・カンセコバリー・ボンズら過去5人が達成しているが、1998年にマリナーズ時代のアレックス・ロドリゲスが記録した「42本塁打&46盗塁」が最多記録だった。結局、9回に4点を返されたため大谷の43号が勝利につなげる貴重な一発になった。
 MLB公式サイトによると、デーブ・ロバーツ監督は、「彼は信じられないほど素晴らしい。他に何と言えるか分からない。もうこれ以上、ショウヘイへの賛辞の言葉はない。彼はとてつもなく素晴らしい」と賛辞の言葉を並べたという。
 米スポーツサイト「ジ・アスレチック」は、「大谷が43-43でMLBの歴史を作る。大谷にとって本塁打はいつもの出来事だが、ダイヤモンドバックスに勝利した金曜日の一発はドジャースのスター選手にとって特に重要な事だった。それはMLB初の43本塁打、43盗塁を同じシーズンに達成した初の選手となったからだ」と賞賛した記事の中で、盗塁について焦点を当てた。
「この二刀流スターは今シーズンは投球はなしだが、クレイトン・マックローフ一塁ベースコーチと緊密に練習を重ね、走塁の微妙な違いを学んでいる」と紹介。 
 ロバーツ監督は、2021年に記録した26個が、過去のシーズン最多盗塁だった大谷が今季飛躍的に盗塁の数字を伸ばしていることをこう分析しているという。
「彼は盗塁の価値を理解し、90フィートル(約27.4メートル)先の塁を取ろうとしている。ペナントレースの戦いの中でそれは歓迎すべきことだと思う。メジャーでのキャリアで彼がペナントレースを争う戦いをしたことがあるとは思わない。(ポストシーズン進出争いの中で)彼が集中力をを高めている。それは驚きではない」

 

 

 今季は投手登板がなく打者に専念できていることに加え、エンゼルス時代にポストシーズン進出経験が一度もなかった大谷が、西地区トップを独走する戦いの中でよりチーム貢献のために集中力を高めていることが盗塁増の理由だと見ているのだ。ベースが若干大きくなり、投手のプレートを外す回数も制限されて牽制球が減るなどより盗塁を成功させる環境が整ったことも少なからず影響しているだろう。
「43ー43」は盗塁数が増加しなければ実現しなかったのだ。
 米メディアの関心は、残り27試合で「50‐50」の大台に乗せることができるかどうかに移っている。
 前出の「ジ・アスレチック」は「大谷はさらに上の記録を狙うところにいる。金曜日の勝利を通じて彼はメジャーリーグ史上初の50-50を達成するペースにある」との期待を記した。MLB公式サイトも「大谷は本塁打数で初めてア・リーグのMVPを獲得した2021年に残したキャリア最多の46本塁打まであと3本としている。まだ27試合を残している。50-50を目にすることができるだろうか?」とした。
「ジ・アスレチック」によると「1本塁打&1盗塁」は今季11試合目で、リッキー・ヘンダーソンが1986年に作った13試合のシーズン最多記録も見えてきたという。
 その中で全米で起きているもうひとつの論争が、現在51本塁打のヤンキースアーロン・ジャッジが、自らの持つア・リーグのシーズン最多本塁打記録の62本を更新することと、大谷の「50‐50」の「どちらが偉大な記録か?」との論争だ。どちらも残り27試合。ジャッジは2022年にロジャー・マリスの記録を抜いて62本のア・リーグのシーズン最多本塁打記録を樹立した際に、当時はア・リーグだった大谷とのMVP争いにも勝利している。、
 この論争について大谷のチームメイトのムーキー・ベッツが米サイト「ブリチャーズレポート」のポッドキャスト番組に出演してこう私見を展開させた。
「ショウヘイが50-50を達成し、ジャッジがア・リーグの最多本塁打記録を更新したら、どちらがより優れたシーズンだったと言えるか?という質問を受けた。理解できるけど、それはフェアな質問ではないと思う。同時に起きる可能性があるし、どちらが優れているかを比較する必要はない。我々は、彼らの偉大さに感謝すべきだ。こうした成績は、二度と、お目にかかれないんだからね」
 まさに正論。大谷の「50‐50」への挑戦の行方に注目が集まる。

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