《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
ロッテ・佐々木朗希(23)のメジャー挑戦が電撃的に動き出した。もともと米国志向が強かったとされるが、日本球界で抜群の実績を残したとは言えず、所属するロッテが移籍によって得られるものもあまりに小さい。本当に、これでいいのか。
【写真】ロッテ・佐々木朗希のメジャー挑戦についてコメントした前田幸長氏、広岡達朗氏
日本人最速タイの165キロをマークし、日本プロ野球史上最年少で完全試合を達成した“令和の怪物”のポスティングによるメジャー行きをロッテが容認した。今回の佐々木の挑戦には多くの疑問の声があがっている。何よりもまず、チームへの貢献が十分だったのか、という点だ。
ドジャースの大谷翔平(30)は日本ハムでも二刀流として圧倒的な存在感を見せ、2016年にはチームを日本一に導いてリーグMVPを獲得した。今は大谷のチームメイトである山本由伸(26)も史上初となる3年連続投手4冠でオリックスのリーグ3連覇に大きく貢献。
一方の佐々木は、入団1年目の20年シーズンは育成重視で一軍出場選手登録はなし。その後も戦線離脱が多くてプロ5年間で一度も規定投球回数に到達しておらず、NPB通算29勝にとどまる。元ロッテ投手でメジャーに挑戦した経験を持つ前田幸長氏が語る。
「本人の夢なので応援はしたいが、モヤモヤが残ります。山本は“日本でやりきった感”があってみんなが応援したけど、佐々木は1年間フル稼働したことがない。日本一にならずとも、沢村賞か最多勝を獲得してからメジャーに挑戦すべきで、大切に育てようとしたロッテを応援するファンは“頑張ってこい”とは言えないでしょう」
移籍先は大谷、山本と同じドジャースとも噂されるが、日本で成績を残して海を渡った先輩2人のようにはいかないだろう。ロッテのGMも務めた広岡達朗氏は手厳しい。
「論外です。あれではどこへ行ってもダメ。日本人のいいところは、育ててくれた球団やファンに恩返しをするために一生懸命やるところ。アメリカに行くためにチームに貢献する。そうすればみんな喜んで送り出してくれます。こんなことをやっていたら、日本球界がメジャーの3A扱いに成り下がりますよ。
佐々木は高校時代に(県大会決勝の登板回避で)甲子園に行けなかった時点で、問題があるんだなと思っていた。ロッテで頑張るかなと思ったが、5年目の選手が1シーズンを投げ抜くことないままメジャーに行きたいと駄々をこねる。もはやいないほうがチームにプラスなんじゃないか」
悪しき前例にならないか
球団経営の観点からも問題が指摘されている。東京大学からロッテ入りし、ソフトバンク球団取締役も務めた小林至・桜美林大学教授が語る。
「メジャーでは25歳未満の海外選手を獲得する際、契約金や年俸が制限されてマイナー契約となる労使協定があり、佐々木のポスティングでロッテに入る譲渡金は最大でも約3億円。オリックスに72億円をもたらした山本との差はあまりに大きい。2年待って25歳になればメジャー契約で多額の譲渡金が発生するはず」
ロッテの“逸失利益”は莫大なのだ。メジャー移籍を志向するヤクルトの村上宗隆(24)も「25歳ルール」が壁になり今オフの移籍を断念したとされる。そうしたなか、なぜロッテは佐々木のメジャー行きを許したのか。
「昨年のWBCで憧れの大谷や山本らと共に戦ったことでメジャーへの思いが強くなったことは間違いない。とはいえ、ロッテの交渉はあまりに弱腰に見えた。ポスティング容認の会見では“入団時にメジャー移籍を容認する約束があったのか”という密約説を疑う質問が飛び、球団本部長が否定する一幕まであった」(スポーツ紙記者)
前出・小林氏はこう懸念を表明する。
「入団時に佐々木とロッテが米国移籍をめぐる“サイドレター(覚書)”を交わした可能性まで指摘されている。それを外部がチェックできない仕組みにも問題があります。選手はグラウンドでベストを尽くすのが仕事だが、球団は何年もマークした選手を獲得して最高のチームを作る責務がある。ロッテはその責務を放棄したように見える。事情があるのかもしれないが、ファンは納得しません」
球界のご意見番である野球評論家の江本孟紀氏は「ルールの見直し」を提言する。
「佐々木は腰かけの見本のようなものでしょ。大した成績を残してなくて譲渡金も少ないのにポスティングを認めたら、球界の悪しき前例になってしまう。巨人やソフトバンクなら絶対に認めず、トレードに出すでしょうね。肩に負担をかけたくなくて手を抜いているというか、全力を出し切っていない姿勢が透けて見えます。今後は日本で一定の成績を残さないとポスティングを認めないなどルールを改めないと、佐々木のような事例が次々と出ますよ」
移籍が叶えばマイナー契約からのスタートとなる佐々木。メジャー挑戦表明後、《這い上がって世界一の選手になれるよう頑張ります》とのコメントを出したが、その道のりは険しいかもしれない。
※週刊ポスト2024年11月29日号
11/21 07:15
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