「佐々木朗希のメジャー挑戦は我儘ではない。問題は球団だ」ロッテ大物OB里崎智也氏が賛否飛び交う“令和の怪物”のポスティング問題について密約説を否定し“正論”ぶつける
千葉ロッテが佐々木朗希(23)のポスティングによるメジャー挑戦を容認したことに対してファンや関係者の間からは賛否の声が飛び交っている。「夢を応援したい」という意見と共に「ゴリ押し」「恩知らず」などの批判の声もある。球団の大物OBで“モノ言う”評論家として人気のある里崎智也氏(48)に意見を聞いた。
想定される球団への譲渡金も3億円未満
“令和の怪物”のメジャー挑戦決定に全米は争奪戦に参加するチームはもちろんメディアやファンもヒートアップしているが、対照的に送り出す側となった日本では、ネガティブな声が飛び交う事態に発展している。プロ5年でのポスティング容認は、日ハムからエンゼルスに移籍したドジャースの大谷翔平と同じだが、日ハムファン総出で、送り出された当時の状況とは、かなり違う。
佐々木は、今季入団以来初めて2桁勝利をマークしたが、4度も登録抹消を繰り返して、肝心な時期にローテーから外れた。過去5年で一度も規定投球回数をクリアしたことがなく、通算勝利は29勝に留まり、その間チームは一度もリーグ優勝もポストシーズンを勝ち抜くこともできなかった。ファンを納得するチーム貢献ができていないにもかからず、メジャー移籍を球団に訴え、昨年オフの契約更改では越年するなどそれが表面化した。
加えて「25歳ルール」の対象選手のため、年俸は最大でも755万5500ドル(約11億5400万円)に留まり、チームへのポスティングの譲渡金も契約金の25%、つまり最大でも2億8000万円程度となることから「ゴリ押し」「恩知らず」「なぜあと2年待てないのか?」などの批判の声がSNSや関係者の中から噴出した。
あと2年待てば「25歳ルール」が解除され、球団への譲渡金が10倍以上に膨れあがるのは確実だった。オリックスからドジャースに移籍した山本由伸は、総額3億2500万ドル(入団当時のレートで約465億円)で契約して、チームへの譲渡金は5062万5000ドル(同約72億円)だった。
その中で客観的な正論をぶつけるのが球団OBの里崎氏だ。
「一部のファンや世論が間違っているのは、佐々木は我儘でもないし、何も悪くないということ。メジャーに移籍したいという希望を伝えるのは選手の自由。FAはルールで定められている権利だが、ポスティングというルールがある以上、契約更改などの場でまだFA資格のない選手がその希望を口にすることに何の問題もない。問題は、ポスティングを認めたロッテ側にある。譲渡金のアップを狙うなら、“あと2年我慢してくれ”とポスティングを認めなれば済む話。そのあたりが誤解してファンに伝わっているように感じる」
ロッテの松本尚樹球団本部長は、球団を通じてポスティングを認めた理由として「入団した当初より本人からアメリカでプレーをしたいという夢を聞いておりました。今年までの5年間の総合的な判断として彼の想いを尊重することにしました」と説明していた。
その上で里崎氏は、球団の方針にこう疑問を投げかける。
「球団の目標は日本一になることだ。だから、私は『佐々木のメジャー移籍を認めたということは、佐々木がいなくても日本一になれるということなんですね?』という問いを投げかけたい。もしそうでなければロッテは選手を育ててメジャーへ送り込むメジャーのマイナー組織と一緒ですよ。客観的に見て、まだ佐々木が抜けた穴を埋める戦力補強は見えていない。でもその答えは来シーズンが終わるまで待つしかない。もし日本一になることができなければファンは黙っていないでしょう。極論を言えば責任を負いフロントは総辞職をしなければならない」
OBゆえの厳しい意見だ。
また球団は完全否定しているが、入団時にポスティングによるメジャー移籍を認めるという“密約”が結ばれていたのでは?との噂も絶えない。
だが、里崎氏はその密約説には否定的だ。
「もしそうであれば昨年オフの段階でポスティングを認めているでしょう。そういった裏契約はなかったと思う」
過去には主力がポスティングでメジャーに移籍した翌年にリーグ優勝した例はある。日ハムでは、2011年に18勝6敗、防御率1.44で奪三振タイトルも獲得したダルビッシュ有がそのオフにポスティングでレンジャーズに移籍したが、翌2012年に3年ぶりのリーグ優勝。
広島では2015年に15勝8敗、防御率2.09riの成績を残して沢村賞を獲得した前田健太のポスティングをそのオフに認めてドジャースに移籍したが、翌2016年には25年ぶりのリーグ優勝を果たした。またオリックスでも2022年オブに主軸を打っていた吉田正尚のポステイングを認めてレッドソックスに移籍したが、チームは2023年にリーグ3連覇している。ただし3球団共に日本シリーズでは敗退して日本一にはなっていない。
里崎氏は、「広島には、当時“タナキクマル”(田中、菊池、丸)がいて、前年には黒田博樹さんが凱旋するなど、チームには戦力があり中心となる選手もいた。日ハムも斎藤佑樹が開幕投手を務め、ちょうど優勝したオフのドラフトで大谷が入ってきている。佐々木は、5年間でフル稼働したシーズンはなかったが、じゃあ今のロッテに佐々木に代わる選手は誰がいますか?」との見解を口にした。
里崎氏の言葉通り、佐々木の希望に沿い、ポスティングを容認したロッテの判断の成否が明らかになるのは、来季のシーズン後。佐々木もロッテも「ウインウイン」の結果が出れば、ハッピーエンドなのだが…。
(文責・RONSPO編集部)
11/13 07:57
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