「眠れない。目を閉じても歓声が聞こえる」巨人・阿部監督、現役時代と重ね合わせ「しびれる試合が最後までできるって幸せ」

激しい優勝争いを制し、4年ぶりのリーグ制覇を目指す阿部監督

 首位を走る巨人の阿部慎之助監督(45)が17日、スポーツ報知のインタビューに応じ、残り12試合への決意と現在の胸中を語った。激しい優勝争いを「しびれる試合が最後の最後までできるって幸せだよ」と受け止め、現役時代の主将1年目に大混戦を制してリーグ優勝した07年を回想。19歳の浅野には配球を学ぶ大切さも説き、4番の岡本和には豪快なフルスイングを期待した。引き分け以上ならマジックが点灯する18日のDeNA戦(東京D)から、広島、阪神と、勝負の6連戦に挑む。(取材・構成=片岡 優帆)

 首位・巨人は10日からの広島3連戦(マツダ)で3連勝。敵地で勢いに乗り16日までの7連戦を5勝2敗で乗り切った。2位・阪神と2差。近年まれに見るセ・リーグの大混戦も、いよいよ最終章に突入する。

 「しびれる試合が最後の最後までできるって幸せだよ。去年のこの時期は優勝争いすらできなくてCSに出られるか出られないかみたいな状態だったから。あの悔しさは忘れないね」

 9月中旬で上位4球団に優勝の可能性がある。巨人がこれほど終盤までもつれる接戦で優勝したのは07、08年の例がある。07年は28歳の阿部慎之助捕手の主将1年目。当時は連日のしびれる戦いに「夜、眠れない。ベッドに入って目を閉じても歓声が聞こえてくる」と話していた。時が流れ、監督として大混戦に臨む中で当時を回想した。

 「寝てても夢の中で試合をしてて、パコーンって打たれて起きたりしていた。最後、ヤクルト戦で俺がヘッドスライディングでホームインして優勝が決まったんだ。(当時監督の)原さんがよく言っていた。『一番苦しんだチームが最後に勝つ、強いんだ』って。それは分かる気がする」

 想像を絶する重圧をはねのけて頂点に立った経験は何にも代えがたい財産になる。それを若手に経験して糧にしてほしい。その思いで浅野を25試合連続でスタメン起用している。今は39歳の長野、35歳の坂本、丸、28歳の岡本和ら先輩の背中を追い、近未来に巨人の主軸になる期待を込める。

 「何年か先、将来のジャイアンツを考えた時、どうするのって話だよね。だから次世代の人を使いながら勝ちにいく。若手はもう無我夢中で自分のことだけ考えてとにかく頑張ってほしい。周りを見る余裕なんかないだろうし。困った時のベテランがいるから」

 必死さの中に、少しでも考えながらプレーすることができれば、若手の成長速度はさらに速くなる。

 「自分がどう攻められているのか相手の配球を勉強することも大事だと思う。自分が打ってるところ、打てないところ、空振りしてるところはどこなのか。同じ対右打者でも相手バッテリーの攻めは打者によって全然違う。俺が現役の時で言ったら、俺と松本哲也は違うよねって。そこを学習できたら打席での待ち方も変わってくると思うよ」

 打線は岡本和が現在2試合連続決勝本塁打。思うような結果が出ない時期も試行錯誤してもがき、苦しみながら4番として打線を引っ張る主将にラストスパートの旗手として期待する。

 「チャンスで初球からフルスイングするつもりでいってほしい。そこで“バーン”って空振りしても(自軍)ベンチは“ヨシッ”ってなる。いつも言ってるように4番が打てば勝つのが野球。そこで凡退したら思いっきり悔しがればいいと思うよ」

 引き分け以上で優勝マジック8か9が点灯する18日から、東京DでDeNAと2連戦、20日からマツダで広島と2連戦、22日から甲子園で阪神と2連戦の変則6連戦。4年ぶり悲願のリーグ優勝へ上位球団との直接対決で加速する。

 ▼07年 首位の巨人は2位・中日と1差、3位・阪神と3.5差で9月を迎えた。19日から8連敗を喫した阪神が脱落。24日の2位・中日との3連戦初戦で敗れ、中日に優勝マジック7が点灯したが、残り2戦に連勝。28日には優勝マジック2が初点灯した。本拠でマジック1で迎えた10月2日のヤクルト戦では、3―4の9回2死満塁、清水の遊撃内野安打を宮本が一塁へ悪送球。その間に二塁走者だった阿部も生還してサヨナラ勝ち。リーグ優勝を決めた。阿部は9月は打率1割6分9厘と苦しんだが、天王山の中日戦で2本塁打を放ち、勝負強さを発揮した。

 ▼08年 阪神が球宴直前の7月22日に優勝マジック46を点灯させるなど首位を快走。巨人は6差の2位で9月を迎えた。9月を17勝6敗1分けと猛追すると、10月8日の阪神との直接対決で勝利し、優勝マジック2が初点灯。10日のヤクルト戦に勝利し、連覇を達成。最大13ゲーム差からの逆転優勝は「メークレジェンド」と呼ばれた。阿部は9月に8本塁打を放つなど、攻守でチームをけん引した。

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