「泥臭く1点」阿部野球の真骨頂ドローで巨人M9点灯…監督が取材対応を行わなかった理由

マジック「9」を点灯させた巨人・阿部慎之助監督(カメラ・堺 恒志)

◆JERA セ・リーグ 巨人2―2DeNA=延長12回=(18日・東京ドーム)

 巨人が執念でDeNAと引き分けに持ち込み、優勝へのマジックナンバー「9」を初点灯させた。8回にバルドナードの押し出し四球で1点を勝ち越されたが、その裏、浅野翔吾外野手(19)の安打やオコエ瑠偉外野手(27)の送りバントで好機を拡大し、内野ゴロの間にしぶとく追いついた。9回以降はリリーフ陣が0封リレー。勝った2位・阪神とのゲーム差は1・5に縮まったが、最短23日の優勝に向けて貴重なドローを、巨人担当・片岡優帆キャップが「見た」。

 総力戦で引き分けに持ち込んだ。午後10時23分、2―2の12回2死三塁からオコエが中川颯の前に空振り三振に倒れ、4時間23分の激闘は幕を閉じた。勝てなかったが、負けなかったことで優勝マジック9が点灯。電光掲示板にも「セ・リーグ優勝までM9」と大きく表示され、場内は大歓声に包まれた。阿部監督はファンに一礼してあいさつすると、引き締まった表情でグラウンドを後にした。

 いつもはその足で報道陣が待つ部屋に向かうが、この日は会見を行わず、ベンチ裏に選手たちを集めてミーティングを実施。「マジックはついたけど、ついてないようなものだから。気にせず一戦一戦、戦っていこう」という言葉をかけたという。今季3度目の取材対応なしは、怒りからではなく「浮かれるのは(最終的にマジックが)1になってから」という思いを、試合後すぐ選手に伝えるためだった。

 勝つか引き分けでマジックが点灯する一戦。阿部監督の我慢強さとメンタルの強さが見える試合だった。1―1の8回、3番手の左腕・バルドナードが2死一、二塁からオースティンに四球を与え満塁。宮崎を迎えても続投を選択し、勝ち越し押し出し四球を出したところで船迫への交代を告げた。変則右腕の船迫をオースティンの打席から投入することも可能だったが、じっと耐えて動かなかったのは、本調子とは言えない助っ人左腕に自信をつけてほしいとの意思を感じた。

 勝ち越された直後の8回は無死一塁から5番・浅野に送りバントのサインを出さず、強攻を選択。19歳が左前安打でつなぐとオコエには送りバントを指示し、完璧に決めて1死二、三塁とした。続く岸田にはベンチでうっすら笑みを浮かべながら“思い切って振ってこい!”とジェスチャーを交えてサインを出した。相手の内野は前進守備だったが二ゴロで三塁走者の岡本和が好スタートし、ヘッドスライディングで生還。就任当初から掲げる「泥臭く1点をどう取りにいくか」の阿部野球の真骨頂だった。

 マジックが点灯した一方、中日に勝利した2位・阪神とのゲーム差は0・5縮まって1・5となった。残り11試合。手に汗握るヒリヒリした試合が続く中、浅野ら若手が貴重な経験を積んでいる。スポーツ報知のインタビューで「しびれる試合が最後の最後までできるって幸せだよ」と話していた指揮官を筆頭に、4年ぶりリーグ優勝へ一致団結する阿部巨人。この引き分けをプラスにとらえて、ラストスパートへ弾みをつける。(片岡 優帆)

◆DeNA自力V消滅

 巨人がDeNA戦に引き分けた結果、DeNAは自力優勝の可能性が消滅。巨人に優勝へのマジックナンバー9が点灯した。対象チームとなる2位の阪神が残り9試合に全勝した場合、79勝58敗6分けの勝率・577。巨人は残り11試合のうち阪神との2試合に敗れても、他4カードの9試合に全勝なら、79勝57敗7分けの・581となり、勝率で上回るため。なお、現時点での最短Vは23日。

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