世界最高の舞台で痴態を晒したヤンキース。勝敗に響いた主砲の不振と守備のミス

ドジャースがワールドチャンピオン!

2024年10月30日(現地時間)、ロサンゼルス・ドジャースがニューヨーク・ヤンキースを制しワールドシリーズ優勝を決めました。

ワールドシリーズMVPに輝いたフレディ・フリーマン選手(ホームラン4本12打点)を筆頭に、最後はクローザー起用で試合を締めた先発投手のウォーカー・ビューラー選手、2戦目に圧倒的な投球を見せた山本由伸投手。好守備で貢献をしたムーキー・ベッツ選手、打撃で発奮したトミー・エドマン選手とテオスカー・ヘルナンデス選手……チームの総合力で勝ち取った世界一と言えるでしょう。

大谷翔平選手は、第2戦で盗塁を試みた際の事故で肩を負傷してしまった影響もあり、シリーズを通じて2安打に終わってしまいました。しかし、怪我をおしての出場は世界を震わせ、脅威となる存在として、ヤンキースにプレッシャーを与え続けたことは間違いないでしょう。

改めて、ロサンゼルス・ドジャースの皆様、そしてファンの皆様おめでとうございました!

さて、ドジャースの活躍を取り上げた記事などは数多く出ているので、今回はあえて反対側の視点からみていきたいと思います。

守備のミスで崩れたヤンキース

最終戦で歴史的な自滅をして、屈辱的な完敗を喫したヤンキース。最終的には、ヤンキース選手のパフォーマンスがドジャース選手より劣ったに尽きますが、その中でも、筆者が挙げる3つの敗因について解説をしていきます。

1.基礎に欠ける守備

真っ先に言われるのはこれでしょう。第5戦、魔の5回表、5-0でリードをしている場面でヤンキースが犯したミスの一覧は下記の通り。

1. ノーアウト1塁から中堅手アーロン・ジャッジ選手がセンターフライを落球。アウトを取れずノーアウト1、2塁。

2. ノーアウト1、2塁から遊撃手アンソニー・ボルピ選手がショートゴロを(ダブルプレーや1塁アウトが狙えた中)3塁へ送球し、三塁手ジャズ・チザムJr選手が落球。最大2アウト取れる場面で一つも取れず、ノーアウト満塁(後続のギャビン・ラックス選手、大谷選手より三振を奪い、2アウト満塁)。

3. 2アウト満塁から一塁手アンソニー・リゾ選手がファーストゴロを捕球したものの、1塁は間に合わず。ゲリット・コール投手もカバーに入らず、アウトも取れないまま、1点献上。

その後、後続のフリーマン選手とT.ヘルナンデス選手に打たれ、5-5の同点に持ってかれてしまい、最終的に負けてしまいました。3~4アウトを取りこぼしてしまった以上、ある種、当然の話でしょう。これを5点リードという余裕がある状況の中で犯してしまうところがなおさら残念であり、ヤンキースの精彩のなさを露呈した象徴的な回だったでしょう。

そして今や忘れ去られてしまっているのが、第1戦でも犯したミス。ヤンキースが2-1でリードをしている8回裏、外野に飛んだ大谷選手の二塁打の返球を受けたグレイバー・トーレス選手が球を弾いてしまい、3塁への進塁を許してしまいます。

その後、大谷選手が生還し同点。10回裏にフリーマン選手の劇的なサヨナラ満塁HRにて試合を落としてしまう結果に。

第1戦、第5戦、ともにヤンキースがリードしていただけに、致命的なミスとなりました。残念ながら、これはここ数年のヤンキースにとっては日常茶飯事となってしまっています。

今季もトーレス選手が二塁手最多の18エラー、チーム全体ではリーグ7位の93エラー(プレーオフ進出チームではメッツが最多エラー数でしたが、その差もたった1エラー)。

一方、Fangraphs社の計測する守備指標Fielding Run Valueでは、チーム全体でリーグ2位、MLB StatcastのOuts Above Averageでは、チーム10位とデータ上は好守備を表しており、首脳陣としては、エラーがあれど課題と感じていなかったのでは。

この敗北はデータばかりに執着し、目の前の明白な欠点を軽視してしまった(=基礎徹底を怠たった)のが、裏目に出てしまった可能性を示しています。

主砲の不振が勝敗に直結した

2.主砲ジャッジの大不振

大谷選手と並び、打者として一番注目されていたのが、ヤンキースの主砲でありキャプテンでもあるジャッジ選手。

ワールドシリーズ前のプレーオフ9試合で打率.161。優勝決定シリーズではホームラン2本を放ったものの、シーズン58本塁打った強打者の基準では、非常に物足りない結果と言えるでしょう。

そしてワールドシリーズ中はさらに冷え込み、1~4戦目は打率.133、18打席で7三振と大ブレーキ。

特に第1戦、同点の9回2塁から前打者のフアン・ソト選手が敬遠され、一打勝ち越しの場面で、ショートフライに終わってしまった場面は特に痛かった。第5戦に本塁打と二塁打が出たものの、時すでに遅し。

前述のエラーを含め、本人とっては相当悔しいシリーズとなり、試合後のインタビューでは「この悔しさは死ぬまで忘れないだろう」と言ったのは、ジャッジ選手史上、最も悲壮感ただよう発言ではないでしょうか。

疑問の残る選手選考

3.左翼手選考の優柔不断さ

比較的地味な話かもしれませんが、プレーオフを通して、レフトを守ったのは軽打好守のアレックス・バードゥーゴ選手でしたが、実は直前まで正左翼手が決まっていなかったことをご存知でしょうか。

ギリギリまで争っていたのは、ヤンキースの超有望株ジェイソン・ドミンゲス選手。MLB公式のものを含めた、有望株ランキングでは常に球団1位、リーグ全体でも最高20位以内を飾ってきた「5ツールプレイヤー」として、とても期待が大きい逸材。

打撃面では確実にバードゥーゴ選手より上ではあったものの、レギュラーシーズン中にあまりにもレフトでの守備難を見せてしまった為(本職はセンターであり、ヤンキース・スタジアムのレフトは非常に広く難しいとされている影響もあり)、最終的には、より堅実な守備を出来るバードゥーゴ選手が抜擢された、という経緯。この判断は妥当な判断だったでしょう。

しかし、ここで不可解なのが、プレーオフで一度もドミンゲス選手が打席に立たなかったこと。接戦が多かった為、出すタイミングが難しかった点は承知の上ではあるものの、打撃で期待をあまりできないバードゥーゴ選手(シーズン打率.233、OPS .647はリーグ平均を17%下回った)や、その他選手の代打として一度も送り出されなかったのは何故でしょうか。

代打実績がなく不安、という話であれば、何故プレーオフを通して、代打の経験を積ませなかったのか。もっと言うならレギュラーシーズン中にもっと代打起用をしなかったのか。当初、昇格が見込まれていた8月(それまでは怪我でマイナー調整をしていた)から、9月中旬まで昇格がズレてしまったのか。

皮肉にもワールドシリーズの最終打席に立ったのは、プレーオフ中の打率.208、OPS .622とシーズン中を下回る成績を残したバードゥーゴ選手。三振に終わりましたが、あそこでドミンゲス選手が立っていればどうなっていたか……。

その他の大事な場面でも、不調な選手ではなく、ドミンゲス選手を代打に送っていればどうなっていたか。今となっては妄想するしかありません。

筆者はヤンキースファンですが、個人的には、せっかくの名門チーム対決、かつ大谷vsジャッジという、スーパースター対決に心躍らせていました。しかし、ヤンキース側があまりにもあっさり負けてしまったが故に、もっともっと盛り上がる余地は残されたまま終わった……と感じています。

来年には、この反省を活かし洗練されたヤンキースが、二刀流復帰を果たした大谷翔平選手率いる王者・ドジャースにリベンジをする劇的第二章が実現することを大いに期待したいです。

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