不可能を可能にする大谷翔平の次なる挑戦は三刀流解禁か?

史上初のDHでMVP受賞なるか?

ぶっちゃけ、大谷翔平選手を取り上げる記事を書くことは大変です。

というのも、成し遂げることがあまりにもすごいので、思うがままに書いた文章を読み返すと「大谷選手に媚び過ぎていないか?」と思ってしまうことがしばしばあります。

実際、今年の1月に大谷選手の今季成績予想を綴らせていただきましたが、「55ホームランを放つでしょう」と大胆な予想をしてみたところ、コメントでは「さすがにやり過ぎ」とのご意見もいただきました。

そんな大胆予想が、まさかの(ほぼ)的中されたどころか、「史上初の50-50達成」という期待・予想のさらに上を行った大谷選手(そして55-55もホームラン1本でニアミス……)。予想を書いている本人が若干懐疑的であったことをお詫び申し上げます。

そもそも、NPBでの二刀流始動から始まり、世界最高峰のリーグ・MLBにおいてもハイレベルで実現。さらには投手と打撃を同試合でおこなう「リアル二刀流」解禁、投手および打者としてのダブル規定到達、そのなかで2度のMVP受賞、常に世間を驚かせ続けてきました。

今年は投手としては全休が確定しており、打者に専念をする年として「打者一本でどこまで行けるか」と注目をされていましたが、ある種、天井に設定されていたのは「史上初のDH MVP」。

これに最も近かったのは2005年のデビッド・オルティス選手(レッドソックス)。159試合で打率.300、47ホームラン、148打点、OPS 1.001という飛び抜けた成績を残したものの、MLB投票では2位に終わってしまいました。

しかし、その年にMVPを受賞したアレックス・ロドリゲス選手(ヤンキース)は、それをも上回る成績を残しており、162試合フル出場で打率.321、48ホームラン、130打点、OPS 1.031という打撃に加え、ゴールドグラブ級のサード守備を魅せました。

選手の総合貢献を表す指標Wins Above Replacement(WAR)では、オルティス選手が5.2 rWAR / 5.3 fWARを計上するも、ロドリゲス選手は9.4 rWAR / 9.1 fWARと大差をつけております(※rWAR: Baseball Reference社計測WAR、fWAR: Fangraphs社計測WAR)。

DHは守備貢献がないので、バリューを出すためにそれだけ高い打撃成績が求められる、という難しさがよくわかる事例ではないでしょうか。

そんな大谷選手の2024年シーズンWARは、9.2 rWAR/ 9.1 fWAR。ナ・リーグの2位と 1.5 ~2WARをつけてリーグ首位の数値を記録しています。

そして打撃成績のみならず、MLB史上初の50-50達成、イチロー選手の日本人盗塁記録56を上回る59と、走塁面でも圧倒的な記録を残してしまいました。「さすがに難しいでしょう」をまたもや超えてしました。本当にとんでもない。

打者・投手・一塁手と三刀流の可能性も?

では、この先には何があるでしょうか。来シーズンより二刀流復帰が見込まれる大谷選手ですが、今季の成績は打者に専念できたから出せたものか。当然ながら投手のリハビリをやりつつシーズンを過ごしているので、逆に肘が完治した状態で迎える来季は、打撃成績がさらに上に行く可能性もあるのか。

今季の打撃成績に、投手としてピークだった2022年相当の成績を加えて、現代MLB史上最高シーズンとされる、ベーブ・ルース選手の1923年(fWAR 14.7/ rWAR 14.1)を超えられるか。単純な足し算では超えられることになります。

どのみち予想を越えられるのであれば、さらに大胆な可能性を提示させてください。それはズバリ、打者、投手、そして「一塁手」の三刀流始動。

近年のMLBでは、指名打者は一人の選手で固定するのではなく、主力選手の「半休養」として、守備に就かせず試合に出すための「枠」として駆使されることが主流となっています。

大谷選手をチームに迎え入れる欠点があるとしたら、この「半休養」を使えなくなってしまうことが挙げられます(実際、エンゼルス退団時には、不幸中の幸いがあるとすれば、満身創痍のスーパースターであるマイク・トラウト選手の負担を軽減できる、との考えが多かった印象です)。

そして、今季のドジャースは怪我人にかなり苦しみました。投手はシーズン前の想定ローテーション投手がほとんど離脱。野手でもムーキー・ベッツ選手、マックス・マンシー選手、ミゲル・ロハス選手が一時期離脱したことは記憶に新しいでしょう。

明確な怪我離脱はなくとも、フレディー・フリーマン選手も(疲労があってか)後半戦は若干失速したり、と怪我防止が最大の課題といっても過言ではないでしょう。少なくとも野手側は、この「半休養」があれば多少なりの抑制につながると考えます。

そのなかで、究極のチームプレイヤーでもある大谷選手が、チームメイトへの「半休養」解禁のために、守備にも就き始める日が近いのでは、と予想します。

実際にシーズン前、ドジャースのロバーツ監督が、大谷選手の外野手起用の可能性を匂わせたこともあり、あくまでも今季は打者専念をしているからという大前提ではあるものの、多少なりと検討の俎上に上がっている話ではあるでしょう。

ではなぜ、ロバーツ監督が示唆し、かつNPBでもプレー経験のある外野ではなく、ファーストでの起用を予想するか。それは送球機会が多い外野より送球機会が稀なファーストのほうが、投手・大谷選手を守ることになるため。

前例として、もともと外野手であったブライス・ハーパー選手も、2022年オフに肘の手術(トミー・ジョン手術)を受けたあと、肘の保全およびリハビリ期間の短縮のため、2023年にはファーストへコンバートをされており、今もファースト専の野手として出場しています。

ファーストは投手・大谷選手にとって最も負担が軽い、理想の守備位置ではないでしょうか。そしてドジャースの編成上、ファーストのフリーマン選手も来年36歳であり、稼働の管理が必要となるキャリア晩年に差し掛かっています。フリーマン選手に「半休養」DH出場を与えた日には、大谷選手がファーストを守れば采配がカチッとハマります。

もちろん、指名打者と投手をバランスするだけでも人間離れの技であり、とんでもない負担である点を踏まえると、そこに守備を加えることはとてつもないことでしょう。

仮にファーストを守り始めたとしても、数試合に一度程度が限界ではないでしょうか。それでも、これまで「不可能を可能にする」を繰り返してきた大谷選手であれば、むしろ現実味がある次ステップかもしれません。期待が膨らみ続けてしまいますね。

どんな形にせよ、今後も歴史を塗り替え続けていくであろう大谷選手。まずはMLBキャリア初のプレーオフで、どれだけチームを引っ張っていけるかに注目していきましょう。

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