テオにベッツ、フリーマン 大谷が最高の同僚とWSを制す!――亀和田武「テレビ健康診断」

 大谷翔平とドジャースがヤンキースとの第五戦を制し、ワールドシリーズ(WS)優勝を達成したのは十月三十一日(日本時間)だ。

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 この日は、前半で五点差つけられた試合を大逆転した劇的な勝利だった。

 この一年の大谷とチームが重なるような展開だなあと中継を観ながら思う。開幕直後には通訳・水原一平の違法賭博事件が発覚した。大谷もキツかったろう。

 そんな彼がやっと本塁打を打ち始めたとき、同じく新規加入のテオスカー・ヘルナンデスが、アーチを放って還る大谷にヒマワリの種を大量に投げつけ祝福した。いい光景だったな。

©文藝春秋

 テオの“ヒマワリの種”作戦が功を奏したか、大谷と同僚が談笑するシーンがよく映るようになった。

 現地の番記者によると、昨年までは大谷と取材陣、さらにチームメイトの間には、一種の“壁”があったという。通訳がメディアや同僚との間に割って入り、直接のコンタクトが取りづらかったようだ。自分の存在を保持するためだったかも。彼が解雇されて、大谷は自ら記者や同僚と意思疎通を図るようになったという。あ、そうなのか。災い転じて福となすだ。

 ドジャースエンゼルスと違い選手層が厚い。とりわけベッツとフリーマンという二人のMVP選手は、スーパースターだ。メジャーを代表する二人だが、メディアやファンの注目は大谷に集まり、二人は脇役の立場になった。

 複雑なモヤモヤが生まれないのか? 失礼な質問がベッツに向けられる。しかしベッツは「ショーヘイは特別な奴だよ」と意に介さない。ベッツとフリーマンは大人だし、懐が深い。大谷の実力も性格も認めて、彼の好きにさせる。

 打順は一番ベッツ、二番大谷の順だったが、ベッツが死球で欠場中に大谷が一番に。ベッツは復帰後は二番となった。大谷は安打か四球で一塁に出ると、必ず盗塁を試みる。そんなときベッツはスイング出来ない。ストレス溜まらないかな。気の小さな私はいつもハラハラしてしまう。

 しかしベッツもフリーマンも飛びっきりのスター選手だから、勝負強い。ベッツはここぞというところで一発決める。この日の試合でも、彼の放った八回の犠飛がV打となった。

 そしてフリーマン。まるで黄金時代の西部劇に出てくる寡黙でフェア、意志の強い保安官のような顔をした男がWS第一戦、延長十回で一点先行された裏、逆転サヨナラ満塁本塁打を放った。WS史上初だ。

 夏にフリーマンの三男はギラン・バレー症候群を発症して生死をさ迷った。さらに本人も試合中に右足首を捻挫した。片足を少し引きずりながら、第四試合まで連続本塁打。大谷は最高の同僚たちと一緒に、波乱万丈、劇的なWSを制した。

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『MLB2024 ワールドシリーズ』
NHK BS 放送終了
https://www3.nhk.or.jp/sports/program/mlb/

(亀和田 武/週刊文春 2024年11月21日号)

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