『虎に翼』<東京で私はただの女にすぎなかった>自ら命を絶ったらしき美佐江の言葉に愕然とする寅子。視聴者「秀才の地方出身者が受ける挫折」「若い女性ゆえの力が」「優未を守る寅子をみて出産を…」
9月20日の『虎に翼』
現在放送中の伊藤沙莉さん主演・連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか)。第25週「女の知恵は後へまわる?」の125回が9月20日に放送され、話題になっています。
*以下、9月20日放送内容のネタバレを含みます。
桂場(松山ケンイチさん)に真っ向から意見した航一(岡田将生さん)だが、心ならずも寅子にまで心配をかける事態を引き起こしてしまう。
航一と寅子が帰宅すると、星家には子供たちが集まっていた。
審判のあと、訪ねてきた佐江子(辻沢杏子さん)は、寅子に対して驚がくの事実を突きつけて――といった話が描かれました。
あらためてあらすじ
ドラマ後半、家裁の寅子のもとへ美雪(片岡凜さん)の祖母・並木佐江子(辻沢杏子さん)がやってきます。
開口一番「わたし、森口美佐江の母です」と話す佐江子に対して、言葉を失う寅子。
それから佐江子は、寅子が懸命に美佐江を助けようとしていたことを知っていて、それから寅子にずっと謝りたいと思っていた、と話します。
寅子がその後の美佐江の動向をたずねると、佐江子は「美佐江は、死にました。美雪が3歳になってすぐ車にひかれて」と答えます。
そして、美佐江が残した最期の言葉が書かれていると伝えると、美雪が「大切なもの」として持っていた手帳を寅子に手渡します。
辛うじて残る『特別な私』が消えぬうちに
寅子がその手帳を開くと「美雪 愛してあげられなくてごめんね」との言葉が。
さらにページをめくると、20年近く前、新潟にいたころの美佐江が<特別な相手>に渡していた手首に巻く赤い飾り(ミサンガ)が挟まれていました。
そして、そのページには
「私はたしかに特別だった。私が望めば全てが手に入った。全てが思い通りになった。盗みも、体を売らせることもできた。けどこの東京で、私はただの女にすぎず、掌で転がすはずが知らぬ間に転がされていた。次々に沸く予期せぬことに翻弄された。身籠れば、特別な何かになれるかと期待したが無駄だった。私の中に辛うじて残る『特別な私』が消えぬうちに消えるしかない」
などと、新潟で当時頻発していた犯罪の裏に美佐江がいたが、東京では特別な存在ではいられなかった、という告白が記されていました。
私のせいで
さらに次のページをめくる寅子。
そこには「あの人を拒まなければ何か変わったの?あの人は私を特別にしてくれたのだろうか?」という、寅子のことを想起させる言葉が…。
その言葉を目に留めた寅子の脳裏には、美佐江への対応を失敗した、あの日の景色がよみがえってきます。
それから「あの日、あと一歩だったのだ。それなのに。それなのに私は…。私のせいで」というナレーションが流れるとともに、寅子のもとを去る美佐江の映像が流れ、今回のドラマは幕を閉じるのでした。
視聴者間にも大きな衝撃が
あの美佐江がすでにこの世を去っていて、しかも手帳に記された内容から、自ら命を絶ったと推測されたことに、大きな衝撃を受けた視聴者は多かったようです。
ネットでは「地方では特別でいられた自分が、進学した東京ではありふれた普通の存在に。秀才の地方出身者が受ける挫折への解像度が高い」「若い女性ゆえの相手を手玉に取る力が、歳を重ね、そして都会の中で限界を迎えたのだろうか」「誰かと比較することで解消されない苦悩。昨日よねが美位子に伝えていた『他人の不幸と比べるな』という言葉があらためて響く」「優未を『特別』な存在として必死に守った寅子の姿を見て、美佐江も自分も出産すれば、また特別な存在が手に入ると思ったのかな…」といった声があがっていました。
朝ドラ通算110作目となる『虎に翼』は、日本初の女性弁護士で後に裁判官となった三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんがモデル。昭和の法曹界を舞台に、激動の時代を描いたリーガル・エンターテインメントです。
仲野太賀さんや石田ゆり子さん、松山ケンイチさんらが出演し、尾野真千子さんが語りを担当。脚本は吉田恵里香さんが、主題歌『さよーならまたいつか!』は米津玄師さんが手掛けています。
09/20 13:22
婦人公論.jp