「カセットブックで聴くのが正しい方法」サエキけんぞうが選ぶ細野晴臣の幻の未CD化作品は「音質やノイズもぴったり」【わが青春のカセットテープ】
レディー・ガガ、テイラー・スウィフト、山下達郎、奥田民生、スピッツなど、国内外の名だたるアーティストたちが、新作をカセットテープでリリースしている。
昭和世代には懐かしく、Z世代には新しい音楽ソフトとして、再評価されているのだ。本誌が取材した著名人も、カセットへの思いがあふれていた――。
ミュージシャンのサエキけんぞうが取り出したのは、書籍とカセットテープがセットになった「カセットブック」。書籍扱いになるため、レコードショップではなく書店で販売されていた。
「僕もそんなに数は持ってないけど、イギリスや香港に行ったときなど、カセットブックを買っていました。選ぶ理由は、“カセットでしか聴けない音楽”だからです」
今回、コレクションから随一として選んでくれたのが細野晴臣の『花に水』(冬樹社、1984年9月10日発売)。「カセットの特性を生かした音楽」だという。
冊子には、鍼灸治療師の久保山昌彦氏と細野晴臣の対談や、宗教学者の中沢新一氏のコラムなどが掲載されている。
「『ミニマル・ミュージック』という、いわゆる循環する環境音楽で、音質がカセットにぴったり合っています。カセット特有のノイズもうまく溶け込んでいます。これは、カセットブックで聴くのがいちばん正しい聴き方なんじゃないかなと思いますね。冊子は音楽のイメージを膨らませる役割があります」
『花と水』はCD化されておらず、現在は、配信でのみ聴くことができる。
「独特の圧縮された音というか、輪郭が緩むような、入眠する感じがあって、秀逸だと思いますね。とても丁寧に作られています」
いまでもカセットを聴く機会があるそうだ。
「保存性が高い優秀なメディアだと思います。カセットだから残っている音源があるはずなんですね。アウトテイクだったり、未発表曲だったり……。そんな音源を聴いてみたいですね」
写真・木村哲夫
さえきけんぞう
1958年生まれ 千葉県出身 1980年、ニュー・ウェイヴバンド「ハルメンズ」でデビュー。1983年、ロックユニット「パール兄弟」結成。作詞家として沢田研二、小泉今日子ほか多数のアーティストに提供
09/28 21:00
Smart FLASH