『笑うマトリョーシカ』櫻井翔が絶妙な不気味さ好演して “掴み” バッチリ…あえての棒読みなのか本気の演技なのか

 

 これは嵐・櫻井翔の当たり役かもしれない。そう感じさせる初回だった。

 

 6月28日(金)にスタートした水川あさみ主演ドラマ『笑うマトリョーシカ』(TBS系)。未来の総理候補として高い人気を誇る若き国会議員と、その有能な秘書の得体の知れない謎の関係性に、主人公の新聞記者が迫っていくというヒューマン政治サスペンスだ。

 

 新聞記者・道上香苗を水川、有能秘書・鈴木俊哉を玉山鉄二、そして物語の核を担う国会議員・清家一郎を櫻井が演じている。

 

 

 物語はかつて敏腕記者だった道上の父が、不慮の交通事故によって凄惨な死を遂げるところから始まる。

 

 事故原因を不審に感じた道上が調べていくと、鈴木が父の死に絡んでいる疑惑が浮上。真相を突き止めようと探っていくうち、鈴木の過去が明らかになり、さらに清家が操り人形のように鈴木からコントロールされているのでは、と疑念を抱いて……という展開。

 

■絶妙な不気味さが醸し出されている

 

 櫻井が演じる清家は、43歳という若さで初入閣を果たし、現在は厚生労働大臣に任命されている人気政治家。さわやかな笑顔とリベラルな言動でクリーンなイメージがあり、国民からの人気は高いものの、道上からは確固たる信念や主義主張のない、中身の薄い人間のように見えている。

 

 そういった事情があり、清家は裏で鈴木に操られているのでは、と疑念を抱くのだが、そんな道上に清家は意味深に「これからも、僕を見ていてくださいね」とつぶやくのだ。

 

 道上はその言葉の意味を「もしかしてSOSってこと?」と解釈し、清家が鈴木から解放してほしいと助けを求めているのではないかと推察する。

 

 ――第1話はこのようなストーリーのため、清家は笑顔が貼りついた表情のように見えたり、セリフを喋らされている雰囲気が出ていたりしたのだが、櫻井の演技によって絶妙な不気味さが醸し出されていた。

 

■「大根」の烙印が押される可能性も

 

 これまで数々の連ドラに主演してきた櫻井だが、忌憚なく言わせていただくと、役者として実力を高く評価されてきたわけではない。

 

 演技力に疑問符がつくこともたびたびあり、たとえば直近の主演作である『占拠』シリーズ(2023年『大病院占拠』、2024年『新空港占拠』/日本テレビ系)では、大味な演技が視聴者から酷評されることもあった。

 

 しかし、『笑うマトリョーシカ』第1話では、“がんばって演技してます感” が出ており、清家というキャラクターの闇深さを見事に体現できていたように思う。

 

 大根ぽい演技がたまたま清家の薄ら怖さにマッチしたのか、それとも本当はもっと上手に演じられるがあえて棒読みのように喋ったのかわからないが、そこも含めてハマり役だと感じたのだ。

 

 ただ、いずれにしても清家がただの善人なわけはなく、中盤や終盤で裏の顔も出てくるだろうから、そのときに役者・櫻井翔の真価が問われるのではないか。

 

 裏の顔パートを迫真の演技で魅せられれば役者評も爆上がりしそうだが、逆に今回の第1話との演じ分けが全然できていなければ、「大根」の烙印を押されてしまう可能性もある。

 

■キーパーソンは「謎の女」高岡早紀?

 

『笑うマトリョーシカ』第1話、不穏な黒い気配をじんわり感じられ、重厚なサスペンスが開幕したのだと視聴者に知らしめる “掴み” としてはバッチリだった。

 

 2022年に長澤まさみ主演で放送された『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ系)は、主人公の女子アナが冤罪事件の真相究明に奔走する骨太な社会派ドラマだったが、個人的に『エルピス』第1話を観たときに似た高揚感を覚えた。

 

 筆者は『笑うマトリョーシカ』の原作小説未読のため、このドラマがどういう展開・結末になるのか想像がつかないが、公式サイトの人物相関図に気になる女優の姿があった。相関図の清家(櫻井)の写真のすぐ隣に高岡早紀が「謎の女」として配置されているため、物語の核心に迫る重要なキーパーソンになってきそうである。

 

『笑うマトリョーシカ』という意味深長なタイトルから考察すると、各キャラクターの印象が二転三転し、何度もどんでん返しが起こるのかもしれない。今夜放送の第2話にも期待したい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

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