深圳の男児刺殺、中国在住の欧米人や韓国人にも不安広がる…「外国人が被害に遭う事件が相次いでいる」

 【上海=田村美穂、大連=出水翔太朗】中国広東省 深圳しんせん で深圳日本人学校の男子児童(10)が登校中に中国人の男(44)に刺されて死亡した事件は、25日で1週間となる。中国では最近、背景が不明な外国人襲撃事件が相次いでおり、中国在住の欧米や韓国の人々にも不安が広がっている。

日本人学校の男児が刺される事件が起こった18日、現場近くを走るインターナショナルスクールのバス(中国・深圳で)=大原一郎撮影

 「これまで中国で生活して不安を感じたことはなかったが、深圳の事件にショックを受けた。恐ろしい」

 上海に駐在して約1年のドイツ人男性(43)は心境を明かした。中国国内では今年6月、江蘇省蘇州で日本人母子が襲撃されたほか、東北部の吉林省吉林の公園で米国人の大学教員4人が地元の中国人の男に刃物で刺される事件があった。男性は「欧米人も被害に遭う。理由もわからないままだ」と不安を漏らした。

 中国在住の欧米人が主要な情報源とする英語メディアは、深圳の事件を繰り返し報じた。米CNNは事件について「中国当局が動機を説明していない。反日感情が官製メディアの影響で高まっている」と伝えたほか、米紙ニューヨーク・タイムズは「当局が扇動した外国人嫌悪と愛国主義が暴力につながった」と分析した。

 韓国メディアも深圳の事件を広く報じ、中国在住の韓国人の関心は高い。中国南部に駐在する30歳代の韓国人男性は小学生の長女が現地のインターナショナルスクールに通っており、送り迎えの際は周囲に以前よりも注意を払っているという。「外国人が狙われる事件では、韓国人も例外ではない」と語った。

 一方、日本政府は中国の地方政府に対し、在留日本人の安全確保の徹底を求めている。金杉憲治・駐中国大使は24日、遼寧省の大連を訪問し、市トップの 熊茂平ションマオピン ・市共産党委員会書記と会談した。

 金杉氏は「日本企業にとって対中ビジネスは大きな岐路にある。状況は極めて深刻と言わざるを得ない」と懸念を表明した。熊氏は事件後に大連にある日本人学校の警備を強化したと明らかにし、「日本人の懸念は十分留意する」と応じたという。大連には約3000人の日本人がおり、約1700の日系企業が進出している。

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