金杉憲治氏・駐中国大使、中国の地方幹部に邦人の安全確保求める 男児刺殺事件受け

【瀋陽=三塚聖平】金杉憲治・駐中国日本大使は26日、中国遼寧省の省都・瀋陽市で、同市幹部の王永威・同市共産党委員会副書記と会談した。日本大使館によると、金杉氏は中国広東省深圳(しんせん)市で日本人男子児童が刺殺された事件について、「全ての在留邦人に大きな衝撃をもたらした」と強調し、瀋陽にある日本人の児童らが学ぶ補習校の警備強化など在留邦人の安全確保を求めた。

金杉氏は、会談で「在留邦人と日本企業にとって第一の課題は安心と安全だ」と訴えた。また、中国のインターネット上で「日本に対する極端な言論」が存在していると指摘し、中国側に対応を求めた。

王氏からは「日本人や日本企業、その他の外国人も等しく保護する」という反応があったという。王氏は事件について、「個別の案件」だという中国政府の見解を示した。金杉氏に対し、日本企業による瀋陽への投資を呼び掛けた。

金杉氏は24~26日に遼寧省の大連市と瀋陽を訪問した。大連市トップの熊茂平・市共産党委員会書記、遼寧省トップの郝鵬・省共産党委員会書記とも会談した。いずれの会談でも深圳の事件に関する懸念を伝達し、在留邦人の安全確保や日本人学校の警備強化などを求めた。

中国東北部に位置する遼寧省は日本との経済関係が深く、省内には1800社超の日系企業が進出し、3500人超の日本人が在留している。

中国東北部は歴史問題との関わりも深い。満州事変の発端となった柳条湖事件は、昭和6(1931)年9月18日に奉天(現在の瀋陽)近郊で発生した。男児刺殺事件当日が柳条湖事件から93年にあたり、金杉氏も26日の会談で事件が「日中間で敏感」とされる日に起きたと言及した。事件後、瀋陽の日本総領事館は「周囲に注意し、日本語で大声で話をする等は控える」などと在留邦人らに注意を促している。

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