英首相が党大会で演説 イスラエルとヒズボラに自制要求 移民対策に「本格取り組み」強調

【リバプール(英中部)=黒瀬悦成】スターマー英首相は24日、中部リバプールで開かれている与党・労働党の年次党大会で演説した。スターマー氏はイスラエル軍とレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが国境地帯で互いに攻撃を強めている問題で、双方に「自制と事態の沈静化」を促し、事態を全面紛争の瀬戸際から引き戻すよう求めた。

ガザ情勢を巡っては、イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織ハマスに「即時戦闘停止」を求めるとともに、ハマスに対して拘束中の人質の解放を要求した。その上で、パレスチナ独立国家を樹立してイスラエルと平和的に共存する「2国家共存」への取り組みに立ち返るよう要請した。

ロシアに侵略されたウクライナを強固に支援していく方針も改めて示した。

スターマー氏が7月に首相に就任後、党大会で演説するのは初めて。

移民問題については、全体的な移民の受け入れ数と国内労働人口の移民への依存をともに減らしていく方針を打ち出し、不法移民対策にも正面から取り組んでいくと表明した。

一方で、8月に起きた極右勢力による暴動を踏まえ、人種・宗教差別に根差した移民排斥の暴力行為を決して容認しないと強調。「人種差別は低俗で品位を欠く」と非難し、聴衆から万雷の拍手を浴びた。

また、財政再建の一環として打ち出した、年金生活者への冬場の暖房費補助の削減などの財政緊縮策が不評を買っていることを踏まえ「政権が進める幾つかの政策は不人気なのは承知しているが、負担が公平になるよう努める」と述べて理解を求めた。

その上で、経済の安定化のためには、保守党のスナク前政権下で生じた220億ポンド(約4兆2000億円)規模の財政赤字という「ブラックホール」を埋めることが必須だと指摘し、「短期的に痛みを伴ったとしても、いずれはトンネルの奥に見える光に到達する」と訴えるなど、楽観的な見通しを強調した。

党大会は25日、向こう1年間の政策方針などを確認して終了する。

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