英労働党大会で財務相が演説 不人気の財政緊縮策を正当化 首相の支持率低下鮮明に

【リバプール(英中部)=黒瀬悦成】7月の英総選挙で14年ぶりに政権の座に返り咲いた労働党の年次党大会が22日、中部リバプールで4日間の日程で始まり、リーブス財務相が23日に基調演説を行った。リーブス氏は有権者から反発を浴びている政権の財政緊縮策について「正しい決断をした」と強調。スターマー首相は緊縮財政に加え、支援者からの多額の利益供与で人気が下落しており、党大会を求心力回復の機会としたい考えだ。

リーブス氏は演説で、保守党のスナク前政権が組んだ予算に220億ポンド(約4兆1千億円)の財源不足が見つかったと指摘し、事態打開に向け今後の財政政策で「厳しい決断を下す必要がある」と警告した。

リーブス氏は7月29日、年金生活者への冬場の暖房費補助の削減や、保守党政権下で決定された病院や道路、鉄道の建設計画の見直しといった事実上の財政緊縮策を打ち出した。

このうち暖房費に関しては約1千万人が補助の対象外になるとみられ、世論は強く反発。党を支える複数の有力労組も今月22日、補助削減の方針を撤回するよう政権に要求した。

リーブス氏は演説で、一連の政策は緊縮財政ではないと反論し、新たな産業政策などを通じた雇用の創出で経済を成長軌道に乗せていくと強調した。

政権が10月30日に公表する予算案では「労働者への増税はしない」と明言した。ただ、専門家の予想では投資収益への課税増や将来的な企業増税、歳出削減が見込まれている。

一方、スターマー首相をめぐっては妻のビクトリアさんが労働党上院議員の富豪から高級な衣服を贈られていたことが党の内外で問題視されている。

英メディアは富豪からスターマー氏らへの利益供与に関する報道を展開。過去5年間の贈答品は、米歌手テイラー・スウィフトさんのコンサートのチケットなどを含め計10万ポンド以上相当に上るとされている。

こうした寄付や贈与は申告すれば違法でないが、清廉潔白を売り物にしてきたスターマー氏のイメージを傷つけたのは明白だ。中道路線を掲げるスターマー氏に不満を抱く党の左派勢力が一連の問題で対決姿勢を強める事態も予想される。

英調査会社オピニウムが今月20日に発表した世論調査ではスターマー氏の支持率は24%で、不支持50%を大きく下回った。7月の政権発足直後の調査では支持38%、不支持は20%で、有権者のスターマー氏離れが鮮明になっている。

ジャンルで探す