英労働党大会でスターマー氏に逆風 有力労組、緊縮財政策を拒絶 利益供与に批判も

【リバプール(英中部)=黒瀬悦成】今年7月の英総選挙で14年ぶりに政権の座に返り咲いた労働党の年次党大会が22日、中部リバプールで4日間の日程で始まった。同党のスターマー首相は政権の財政緊縮策や支援者からの多額の利益供与が有権者の反発を浴びるなどして人気が下落しており、選挙の大勝と政権奪還を祝うはずの党大会で逆に苦境が目立っている。

同党副党首のレイナー副首相は22日に演説し、総選挙の勝利で「私たちは歴史を作った」と強調した。

だが、調査会社ユーガブが3日に発表したスターマー氏の支持率は35%で、総選挙直後の44%から9ポイント下落した。他の世論調査でも有権者のスターマー氏離れが顕著になっている。

支持率の低下は、リーブス財務相が7月29日、保守党のスナク前政権が組んだ予算に220億ポンド(約4兆1千億円)の財源不足が見つかったと発表したのが引き金だ。リーブス氏は事態の打開に向け、年金生活者への冬場の暖房費補助の削減や、保守党政権下で決定された病院や道路の建設計画の見直しといった財政緊縮策を打ち出した。

ただ、暖房費に関しては約1千万人が補助の対象外になるとみられることから世論は強く反発。労働党を支える複数の有力労組も党大会の開催当日、暖房費補助の削減方針を撤回するよう政権に要求した。

スターマー氏は24日に登壇し、「事態は悪化を経てから好転する」(労働党幹部)と説明して改革路線の推進を訴える見通しだが、有権者の理解をどこまで得られるかは定かでない。

一方、同氏をめぐっては妻のビクトリアさんが労働党上院議員の富豪から高級な衣服を贈られていたことが英紙タイムズの報道で今月15日に表面化した。

各紙も続いて富豪からスターマー氏らへの利益供与に関する報道を展開。同氏は20日、自身も1万6千ポンド(約306万円)相当の衣服を受け取ったことを認めたが、報道によれば過去5年間の贈答品は、米歌手テイラー・スウィフトさんのコンサートのチケットなどを含め計10万ポンド以上相当に上るとされている。

こうした寄付や贈与は申告すれば違法でないが、清廉潔白を売り物にしてきたスターマー氏のイメージを傷つけたのは明白だ。中道路線を掲げるスターマー氏に不満を抱く党の左派勢力が一連の問題で同氏を追及する事態も予想される。

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